富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

坚决拥护党中央的正确决定

fookpaktsuen2012-04-11

農暦三月二十一日。ぞっとする十二時間の忙殺。昼飯の約十分除き茶を啜る暇もなく多忙。帰宅して好物の大根おろしで韮と豚肉の鍋。残りものの赤葡萄酒一杯。
▼今日の香港の新聞は昨日、北京で測量梁が温家寶首相の接見に与り香港特区行政長官に任命!が間違ひなく一面トップになるはずが昨晩深更に新華社が「对薄熙来同志严重违纪问题立案调查」と中央の决定報じて測量梁の任命がニュースとして飛ぶ。

新华社北京4月10日电 鉴于薄熙来同志涉嫌严重违纪,中央决定,依据《中国共产党章程》和《中国共产党纪律检查机关案件检查工作条例》的有关规定,停止其担任的中央政治局委员、中央委员职务,由中共中央纪律检查委员会对其立案调查。

と(人民日報)。更に薄熙来の妻が大連時代の収賄でなく薄夫妻に近かつた重慶在住の英国人変死に薄の妻が関係としてこれも調査。まさか重慶騒動がベタな殺人事件に起因とは。これだけでも興味深いが、この薄熙来失脚と妻の殺人関与の二つの記事の上段に据えられた「坚决拥护党中央的正确决定」が白眉。二つの重大な事件に対して党は毅然とした態度で臨むと宣ひ中国は法治国家であり胡錦濤同志を総書記とする中央は中国の特色ある社会主義の国家建設で鄧小平の「三個代表」といふ重要思想で……と読んでゐて「あーあ」と食傷気味のこのプロパガンダが続くが傑作なのは

努力维护改革发展稳定的良好局面,奋力夺取全面建设小康社会新胜利,加快推进社会主义现代化,以优异成绩迎接党的十八大胜利召开。

と。安定した社会で建設するのは「小康社会」の新しい勝利なのだ、といふ。偉大なる中国の特色ある社会主義で理想に満ちた共産主義は資本主義を打ち負かし……のはずが目指すは「小康社会」とは、まるで古市憲寿の「絶望の国の幸福な若者たち」みたいな安穏なり。で小康社会で社会主義現代化をば加速させ、で結局のところ最後は来る十八大(第十八回全国人民代表大会)をば成功したものにしませう、と「結局そこかよ」な結論。小康社会で中共の指導で全人代社会主義現代化の輝かしい成果が披露できれば、ってあまりに現実的といふか打算的。で話は重慶騒動に戻るが元々は北京中央が「持て余した」薄熙来をば党中央から遠ざけようと実質的左遷で重慶に遣つたことに問題あり。で薄は重慶市党委書記の立場で社会運動をば組織。それはまるで大躍進の失敗で一旦は中央から駆逐された毛澤東が文革に至る道行きのやうであり、経済開放政策に対して保守派が巻き返すなか経済開発進んだ華南を歴訪し南方談話発表し中国の経済開放が継続すべきこと説き巻き返した鄧小平の勇姿も薄の脳裏にはあつたのかも知れぬ。……で温家寶が三月中旬に最後の総理記者会見で暗喩ながら薄の文革的動きを避難したことが薄熙来失脚の具体的な動きの始まりだつたが、さういふ機会を与へたのが党中央だと思ふと、やはり構造的にこの「民主」集中制の革命政党の孕む危険性はソ連でも中国でも何度でも繰り返され社会主義現代化なんて絶対に無理なのだ、と思ふばかり。結局はいつも権力闘争の宮廷劇。
▼で温家寶首相から任命状いたゞいた測量梁は温家寶から「想提醒新特首,要維持香港嘅廉潔」とお言葉賜る。明らかに行政長官・貧官曾、新鴻基兄弟と橋王・許の贈収賄など高官への避難と受け取れるが、この歴代総理が香港の行政長官に下さるお言葉は含蓄あるもの。2002年に二期目に入つた董建華に朱鎔基は董は「いい人」だが国を治めるには「いい人には難しい」と一言。董建華が脚痛理由に任期途中で辞任し棚ぼたで行政長官となつた貧官曾に温家寶は2005年、論語から「士は以て弘毅ならざる可からず。任重くして道遠し」つまり「士たる者は度量が広く意志が強固でなければならない。何故ならその任務は重大で、その道のりは遠い」と本当に貧官には大切な訓示であつた。更に2007年には「香港の繁栄、隠定と和諧には自分の一切をば捧げ、それは生命の最後の一時まで」と貧官に訓示したが結果が、あれ。で今回の「高官は清く簾しく」。中共のトップともなる方はさすが仰ることはご尤も。今回の行政長官選挙で紅酒唐をば推挙の香港マカオ辧前主任で政協副主席の廖暉が昨日のこの任命式に姿見せず(前二回の任命式では上席にあり)、今回の唐支持で失勢か、と噂あり。
大阪市長の橋下もヘンだが和歌山の県知事(仁坂吉伸)もあまり大きなニュースにならなかつたが大阪の教育行政基本条例成立にあたり「大阪で語られている理想は和歌山ではすでに実現しているのではないかと思う」の発言もかなりのもの。県知事が教委に対して言ふべきことはきちんと言ひ教委もよく理解し教育問題は他の行政項目と同じやうに教育長と打ち合わせてやつてゐるもので主張の教育行政関与は「実現している」と自信。維新の会のあうに「ああいう形でもやってもいいし、和歌山のように目立たないようにやってもいいのでは」と宣はれる(以上、最近の時事通信「内外教育」より)。個人的な発想は自由だが条例化しようとした大阪よりこの和歌山県知事のは明らさまに教育に対する政治の介入。「教育への政治権力の介入がいけない」といふと、だいたい十中八九「昔は日教組がどれだけ日本の教育を左傾化して」と反論されるのだが日教組が政治的であつたのは事実だが当時は自民党社会党55年体制といふ安定した美しい時代であつて日教組が政治的なぶん、立派に自民党が右から(それだけなら危険な右傾化だが対日教組で)是正を図つたのでお互いバランスとれ(膠着化かも知れぬが)いずれにせよ中和されて教育は中立が維持されたもの。それが今では日教組は政権与党の支持母体の一つで民主党自民党もダメななか橋下維新や名古屋やヘンな魑魅魍魎が跋扈するだけの時代だから怖い。