農暦壬辰(みずのえたつ)年正月初一。朝から雨。浅草。浅草寺参拝。浅草公会堂。母と待ち合せ一月恒例の若手歌舞伎で昼の部は八犬伝と廓文章。八犬伝は若手の顔見世芝居で筋がだうのかうのではなく八犬士勢揃ひが見物だが「だんまり」は余っ程役者の風格がないと「たゞ突っ立ってゐるだけ」。で実際にたゞ立つてゐるだけしか出来ない若手の御曹司もゐるのが困つたもの。庄屋のじゞい役で芸達者なところ見せ客を笑はせ犬山道節との二役で亀治郎が「今年は澤瀉屋」印象づける。廓文章(吉田屋)は愛之助が初役で伊左衛門と壱太郎の夕霧。愛之助は本当に仁左衛門にそつくりでニンがあるし上方のこの芝居は彼以外に継承者なし。壱太郎はこの夕霧も八犬伝での浜路もなか/\可愛らしいが夕霧はまだ/\勉強が必要な難しいお役。それにしても吉田屋の芝居のノーテンキさ、がワーキングプアだの貧困の時代で見てゐると何とも……。芝居跳ね浅草に来てゐたZ嬢と三人で梅園。豆かん。あまり雨ひどく地下鉄で銀座。三人揃つてそれ/\伊東屋に買い物あり。くのや閉店特売。帯留め=ストラップに転用など廉価でいたゞく。らんぶるで珈琲。渋谷へ往くZ嬢と別れ母と二人で雨のなか、このへんで軽く夕食済ませませう、と六丁目の築地すし好。カウンターで大手企業っぽいオトーサンたちがが神武天皇は実在した!と話題沸騰、ひえ〜! 有楽町で母と別れ初めて東京ペニンスラホテルの最上階のピーターなるバー。ドライマティーニ二杯。ジンは「ハッピーアワーのジンでよろしいですか?」と尋ねら尋ね返すとハッピーアワーのジンはビフィーターズの由。それでもいゝけどしつかりと酔ひたいゴードンの気分だつたのでゴードンでお願いする。接待受ける代議士がこの時間に酩酊で迷惑、やつぱり菖蒲園で酒屋の立ち飲みのほうが上品かしら。バーを出ようとすると黒服さんが慇懃に送つてくれたのではつきりと「香港よりこちらのマティーニは段違ひに美味しい」とお伝へ。中央線で新宿。ベルグに麦酒一杯。ぎり/\三丁目のバーQで久が原のT君と待ち合せ。大雨が雪にかはりるのを窓から眺めつゝ閑話。芝居の吉田屋の話になり愛之助といへば先代の仁左衛門の伊左衛門を見てゐる、と何かで答へてゐたさうで、T君いはく、これは昭和61年2月にNHKが舞台中継用にNHKホールで一回だけ、のもので雀右衛門の夕霧相手にそりゃ素晴らしい伊左衛門だつた、と。T君は当然、それを生で見てゐて愛之助君も当時14歳ならこれを見ただらう、と。十三世の伊左衛門はその前は昭和50年代なので、それではないはず。バーQでは越路吹雪が流れ若い客のお一人がiPhoneに吹雪から淡谷先生までずらりと名曲のコレクションあり。それを楽しみながら、の不思議な雰囲気。iPhoneでコーちゃん、いつ聴くの?と尋ねたらジムでワークアウトの時、と。立派。若い人相手に昔々、渋谷のジャンジャンで淡谷先生のコンサートを見ている、なんて話をぢまんで羨ましがられる。雨の悪路に雪で地面はシャーベット状でぐちゃ/\。帰路につけばいゝのにT君と更に梯子酒で二軒。すつかり雪景色の東都。半夜三更前にお別れして麻布鳥居坂旅寓に戻る。
▼久が原のT君とのお勉強。形容詞の語幹止め体言止めの話題となり形容詞の場合、ク活用は体言止め可(痛っ!)だがシク活動は不可(美しい→うつく×)で、前者は「痛っ!」とか「ヤヴァ……」とか直感的に今の自分の状況なのに対して後者は「美しい」「悲しい」とか何らかの形で感想なりを客観的に言ふのだ、と今更ながら理解。
@fookpaktsuenhkg: 東京メトロといふ言い方は好かぬ。東京ばなな、東京ポテト……メトロにするならメトロトキヲにでもすべき。営団……いゝ響き。帝都高速度交通営団