富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2011-12-21

農暦十一月廿七日。曇のち晴。未明に何度か目が覚めるのは夢見の悪さかと思つたが起きると胸の閊へもあり無呼吸でも一瞬あつたのかしらと訝しい。朝いつもの道を歩いてゐたら坂道の狭い歩道で強烈な眩暈あり、広東語でいはゆる頭暈/\(たうわん、たうわん)。立つてゐられず歩道の手すりに掴まり少し歩きマンションの壁に凭る。あまりに不自然な姿勢なので携帯で電話してゐるふり。暫くして眩暈も少し治まりゆつくり歩いて官邸へ。横隔膜の痛みのやうで呼吸がしつかり出来てをらず頭に酸素が足りず、で眩暈感。急ぎのご執務済ませ養和病院へ。血圧は高かつたり低かつたり安定せず。気になつた血中酸素濃度は問題なし。とりあへずSalbutamol(気管支拡張剤)を錠剤とネブライザー(吸引器)で処方される。この症状、数年に一度あるが極度の緊張感や不安(笑)で過換気症候群ってやつ加茂。最初にこれになつたのが今では情けない話だが学生のときの一人旅で初めて香港から広州に入り広州の街で歩き疲れ途方に暮れたとき。早晩にさすがにジムのトレッドミルで走れもせず帰宅。読書しつゝ養生。ピーマンの肉詰めと赤葡萄酒。志ん朝師匠の「居残り佐平次」を聴く。左平次に騙された遊郭の主人が「ひとをおこわにかけやがって」と怒り若衆が「旦那の頭がごま塩だから」でオチとなる……が面白い話のなかで一度もこの廓主が登場せず最後だけ現れ、ごま塩頭だといふオチが唐突とアタシは思ふ。睡眠誘発剤飲んで寝るがこんな晩に限つて深夜に陋宅階上のキチガイ親父が(夜中に予定されてゐた上水道の断水を知らずに帰宅したのか)癇癪起こし、いつも冷静な妻も大声で喚き反論で一瞬、目覚める。が天井を棒で突き自制促すととたんに静かに。上は上で階下に癇癪起こすキチガイ親父が住んでゐると思つてゐるの鴨。
▼「週刊金曜日」の続号(11月11日号)読んで怖くなつたのが暴力団排除条例(暴排条例)。ついアタシも直接、自分には関係ない、と思つてゐたが法律でなく条例にして結局、東京都を最後に全国で施行がミソ。極端な話、法律にできない(明らかに憲法違反あり)で条例で誤摩化したもの。結局のところ狙ひは警察の権限と天下り先の拡大。暴力団との関係憂慮する会社が警察OBが経営する危機管理会社や警備会社と契約したり警察OBを総務で雇用。結局はヤクザが「ケツモチ」(トラブル解決)で得てゐた利権を警察が搾取したもの。山口組よ、ぜひこの暴排条例を憲法違反で訴訟してくれ給へ。ヤクザが出来なくなるものは銀行口座、相撲や野球観戦、ゴルフ、ホテルや旅館の宿泊や利用、出前から宅配便利用、弁当すら澤山買えず。弁護士から「笑顔を見せただけでも場合によっては脅迫になります」と言はれヤクザは迂闊に笑ふことも出来ない、と。組織には蕎麦屋が出前も不可、蕎麦屋はどこが暴力団組織か基準がわからぬから出前持ちに警察OBを雇ふか、と。暴対法の前には総会屋対策の商法改正あり、暴対法の前後に風営法あり、その都度、警察の権限強化。商法改正では会社の総務課へ、暴対法ではパチンコのプリペイドカード会社へ警察OBの再就職が安定、風営法改正ではソープやスナックの許認可権が保健所から警察へ、と。「警察は本来、発生した犯罪捜査に注力すべき」なのに特に最近の20年くらいは防犯部門(生活安全部門)を中心に行政官庁的な許認可権を大きく広げ「起きるかもしれない犯罪を防止するという理屈を掲げて権限を拡大させてきた」わけで、それを「「安全・安心」なるものを求める市民社会が後押ししてしまっている構図」(青木理)とまさにさういふ社会が出来てしまつてゐる。

週刊 金曜日 2011年 11/11号 [雑誌]

週刊 金曜日 2011年 11/11号 [雑誌]