震災三ヶ月と45年前の映画「怪談」

fookpaktsuen2011-06-11

六月十一日（土）台風一号警報。朝から或る音楽発表会あり九龍塘。中環の梁智鴻医師の診療所で一週間前の前立腺検査の再診。一週間の服薬で前立腺はかなり正常になつた、と触診で梁国手。実際に尿意もはつきり頻尿や残尿感も改まり小用かなり楽。一ヶ月分の薬を処方される。FCCで独りブランチ。新聞読み。東北の震災から三ヶ月で関連記事多し。夏物のシャツなど購ふ。ラフルローレンのボタンダウンのシャツがHK$2,850ってそりゃないだらう。思はずユニクロへ往く。帰宅して午後遅く小一時間のランニング。早晩にＺ嬢と尖沙咀で待ち合せ。Domonでラーメン食べて科学館。映画「怪談」見る。1965年。製作：文芸プロで配給は東宝。小林正樹監督。183分で武満徹の音楽がどの程度だつたか、この映画、見たやうな見てゐないやうな。なんてオールスターキャスト＝多くは当時はまだ演技派の中堅だつた役者だつたのかしら。「黒髪」は三国連太郎、新珠三千代と渡辺美佐子。「雪女」は仲代達矢と岸恵子。脇役が望月優子、菅井きん、千石規子に浜村純は垂涎もの。「耳無芳一」は中村賀津雄が（当時二十代後半が十代の）芳一を見事に演じ共演が（このへんから霊界に入つたのか）丹波哲郎、住職が志村喬はこの役者を現役で知るのはアタシくらゐが最後の世代、で林与一、田中邦衛、北村和夫、中谷一郎、友竹正則、花沢徳衛、夏川静枝……とまぁ充分。最後の「茶碗の中」は「あとがき」的に余裕があるが、これも滝沢修が作者役とナレーションで翫右衛門、春子、鴈治郎と並び中谷昇、宮口精二、佐藤慶、天本英世、奈良岡朋子、田崎潤、神山繁とまさに演技派揃ひ。昭和40年、ほんとうに日本映画がいちばんいヽ時代だからこそ、の作品。
▼震災から三ヶ月。まだ三ヶ月か、もう三ヶ月か。アタシは前者。自分が何もしてゐないので「もう」といふやうな切迫感がなく、それに対して震災後にいろ／＼なことが論議されいろ／＼な言説に接してゐると、その量が尋常でないからもつと月日が経つてゐるかのやうに思へ「まだ」と感じるの加茂。それにしても湾岸戦争の時にも痛感したが改めて日本政治の責任のなさと有事の際の手際悪さに驚くばかり。The Economist誌の“Who needs leaders?”（こちら）は必読。震災に対して機能せぬ政府とリーダー不在、それに対して自治体と市井の人々の強さ。海外で何が日本は賞賛に値するか、とへばやはりこヽに掲げた画像のやうに震災の倒壊した建物を背にしたセブンイレブンであり、瓦礫がきれいに撤去され、まるで何事もなかつたかのように佇む郊外のスーパーなのだ。「なぜ、こヽまで出来るの？」がリーダー不在と政治の低レベルと対照的に映る。本当にリーダー不要の社会なのかも。
▼周恩来先生が生前、フランス革命の意義尋ねられ「まだ、評価は無理」と答へたといふ。中国の、殊に周恩来といふ歴史に稀な名宰相のこの達観、視野と歴史のスパンの大きさが見事に語られる逸話。だが実はこれは誤解で周恩来が尋ねられたのは当時、巴里で盛んな学生蜂起（五月革命）。中国の文革、紅衛兵や学生の造反有理に絡んだ質問に周恩来は慎重に「まだ評価は無理」と答へたのが何がどうしたか、フランス革命の話に転嫁。少しずつ公開される中国の外交文書から、の判明。FT紙の週末版に“Lost in translation - Zhou's famed commnet on the French Revolution”といふ記事。興味深く読む（http://t.co/BH1AQBI）。同じやうな逸話に鄧小平の有名な“To get rich is glorious”もあり、これも鄧小平がかう語つた正式な記録は不在の由。“To get rich is glorious”といへば中国研究の碩学、Orville Shellのこのペーパーバックは当時、ブルータス誌が紹介してゐて渋谷の紀伊国屋で注文して入手したこと、ふと思ひ出す。廿数年前のこと。
▼香港の教育IT化と政務司・唐英年君特首選出馬に絡み話題のIT組織iProAについて蘋果日報に興味深き背景の報道あり。iProAの設立は1999年で当時は来るべきIT時代に向け無色透明の非営利系IT組織。この組織に転機訪れたは2003年。SARS疫禍、治安立法、50万人市民デモで香港政府支持暴落。北京中央は事態の深刻さから積極的な対港政策に乗り出さざるを得ず。来る2008年の立法議会選挙で親中与党の議席確保に世論の影響なき職能団体枠から教育、建設などと並び重点とされたのがIT業界枠。そこで白羽の矢が立つたのがiProAで中聯辮や民建聯が言葉巧みにiProAに近づき幹部を民建聯に誘ひ込み区議会選に推し08年の立法会選挙ではIT枠で民主派候補に破れたがiProAはその後、しつかり政府保守系団体に変貌したといふ。