富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

朴星吉君のピアノリサイタル

fookpaktsuen2011-06-02

陰暦五月初一。晴。内閣不信任案、菅丞相災害対策後の辞任表明、否決……と息詰まる(緊張でなく間抜けぶりに呆れて呼吸不全か)政局とは関係ないが晩まで多忙。芸術中心でZ嬢と待ち合わせ「夢にまで待つた」ピアノリサイタルは朴星吉君。18歳の将来有望な、かなり個性豊かなピアニスト。客は芸術中心の地下のホールでわずか二十名ほど。その貴重な一人であれたことが嬉しい。まだ無名に近い彼をアタシらが知つたのは二年ほど前。香港フィルが丼ジョヴァンニだつたか歌劇曲の演奏会あり。その帰りに尖沙咀から湾仔行きのスターフェリーに同乗したのが星吉君。どこの部屋の新弟子ですか?で愛嬌あるその表情、仕草、なにせ新弟子なのにヴィトンの鞄をそれも腕を曲げてオバサン掛け?して強烈。でZ嬢が「きつと同じコンサート帰りで声楽やつてゐるに違ひない」と断定。湾仔でフェリー降りると西に歩いて行つたので「きっと演芸学院で深夜まで練習」と決めつける。でいつか彼の歌唱が聴きたいと切に願つたのだが数ヶ月後に再遇。でこの時はピアノの楽譜持つてゐて「ピアノ科だつた」と判明。といふか演芸学院の生徒といふのは憶測だつたが彼が昨年の夏だつたか何かの賞をとり紐育の卡内基音楽廳で独奏、かなり評判得たと新聞記事を読み本当に香港演芸学院でピアノ専攻の瀋陽出身の青年だと知る。瀋陽で朴といふ名前からし朝鮮族かしら。星吉といふ名が何とも彼の雰囲気にぴったり。演奏を聴いたこともないのにこれほどアタシらを虜にした星吉君。なか/\演奏会に出て来ず(或はアタシらが気づかず)で今日。前置きが長いが期待通り。たヾピアノが上手いだけでなく見た目が何しろこの強烈な印象。会場にすげー派手な全身ピンクでしかもタイツ姿のオバサンがゐて「タニマチか」と思つたら実母(笑)。瀋陽で両親がピアノ教師だと紹介あり。開演前に狭いホールの舞台裏の控え間からゴホ/\と苦しそうな咳の音。みんなやられてゐる。初っ端のベートーヴェンソナタ13番変ホ長調「幻想曲風ソナタ」はさすがに緊張が見られたがシューマン幻想曲ハ長調も実に曲の雰囲気を上手くつかみ後半のラフマニノフコレルリの主題による変奏曲」はこんな難曲を、しかも技巧だけでなく解釈すらロシア革命避け米国に渡米のラフマニノフの最後の独奏曲をまぁ18歳の青年がよくぞここまで……彼は亡命じゃないが瀋陽から北京、深圳と修行続け今は香港にあつて何かしら感慨ありなのかしら、とまで想像。それでもこれだけの曲を弾きこなしてをいて曲が終わると、この新弟子がニコッとペコッとお辞儀する、そのギャップがまた可笑しい。で最後は余裕でアルベニスの「スペインの歌」。これはぜひ彼のオカンの衣装で彼に踊らせたい。アンコールはプロコフィエフ?、題名知らぬが「こんなのアンコールにやるか?」の大曲をば披露。とにかく朴星吉君の18歳の演奏をわずか20数名で堪能できたことの幸せ。唯一の残念はこの会場のピアノ。ヤマハの普通のグランドピアノでこの会場では限界あり。彼にはコンサートグランドで弾いてほしかつた。演奏後ロビーで先生や客と懇談の機会ありZ嬢に「追っかけ」なんだから一緒に写真とれば?と勧めたがZ嬢はさういふのが苦手(元横綱・輪島とは写真撮つたくせに)。
天安門事件から22年。厳家稘氏の論評「六四」敲掉了專制政治的「第二根支柱」を明報で読む。碩学が指摘するに専制政治には三つの柱あり。一つは「最高権力の世襲制」で二つ目がその終身制」なら三つ目が「その不可分性」と。最初の世襲制辛亥革命で崩れ二つ目の「終身制」は毛沢東は実質的にさうだつたが文革総括で1982年に憲法国家主席と総理の任期二回と制限したものの軍委主席がその制限外にあり「もし六四がなかつたら鄧小平が終身で軍を掌握してゐた」のであり独逸で伯林の壁が崩壊したその日に軍委主席をば辞任。江沢民ですら軍委主席は二期だつが来年の十八大で「カダフィですら失脚」の時代に胡錦濤は大胆にも三期に挑むのか、と厳先生。で六四で解釈的にはこの二つ目の「終身制」は限界を見たが問題は最後の「不可分性」と指摘。「権力は絶対に腐敗する」原則のなかで中共がどう権力の分権が出来るのか。法治。中国の隠定は法制にかかつてゐる、と。