富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2011-04-22

四月廿二日(金)耶蘇の受難節で休日。基督人でないから、でもないがアタシは官邸で独りご執務。今年はやつかいな注文多く本当に仕事が終はらぬ。晩に帰宅して今年初物の枝豆とフィリピン産サンミゲル小瓶。キリンビール一番搾りで自家製コロッケ食す。
▼先週からぱら/\捲つてゐた文藝春秋五月号「日本人の再出発」雑感。「わられは何をすべきか」の特集から。佐々淳行が「統一地方選民主党に「天罰」を」と(実際にそうなつたが)仙谷君の自衛隊暴力装置発言が佐々には「侮辱」。あの国家機関=暴力装置観は国家権力に対する最高の勲章なのに。公安危機管理のプロの佐々にはそれが理解できず。児玉清が「まさに日本は完全に幼稚化した人間たちがリーダーシップを握っていることを露呈」と。御意。だがそのリーダーを選ぶなら民衆も幼稚。徳岡孝夫が「地震津波から四日目、「日経」朝刊に素晴らしい記事が出た」と書き、何かと思へば日経倫敦特派員からの報告でインディペンデント紙日曜版の大規模な津波報道「頑張れ、日本」だといふ。倫敦の新聞の支援記事、日本にそれを伝える特派員、日経に載つた記事を「素晴らしい」と感動する自称ジャーナリスト、その感動を伝える文藝春秋……。赤瀬川原平さんまでが「自由というのは、束縛されて切実に感じる。そのためにも、人間には一定の束縛期間というものが必要だと思う。昔は日本の世の中にも、徴兵制という束縛期間があった」と。原平さんまでがまるでジャッキー=チェンのやうに苦言せねばならぬ自由社会。岸田秀先生は相変わらず日本といふ国と民族の精神分裂を説く。もうこの芸風は頑なに三、四十年。立派。吉本隆明は岩波の「世界」では日本の復興で平和主義の大切さ説ゐてゐたが文藝春秋では憲法のことなど触れることなく「精神の傷の治癒」について。オールマイティな思想家(笑)。内田樹センセの日記で引用する場面は小津の「秋刀魚の味」で笠智衆が「戦争に負けてよかったじゃないか」と呟き加東大介が「バカな野郎が威張らなくなっただけでもね」と。これこそ日本。この寛容と安堵の精神こそ非近代そのもの。
▼同じ文藝春秋五月号の福田和也氏の「昭和天皇」の連載は真珠湾の頃に入る。日本の海軍の計画はハワイ攻撃し太平洋艦隊撲滅後に陸軍を連れ加州へ。西海岸の日系人、有色人種集めて義勇軍編成しシアトルのボーイング社占領し戦闘機など奪ひ東海岸空爆で短期間で講話へ、と。米国の日系人や有色人種を味方に、といふだけでも大きな誤算。冷静なはずの海軍ですらこれ、ぢゃ最初から負けてゐる戦争。「彼の人」は宣戦の詔書国際法への言及なきこと憂ひたが東條の説得に負け詔書英米との戦に「不幸」「豈(あに)朕カ志ナラムヤ」と加へるのが精一杯。かうした昭和さんの配慮で戦争責任がない、とされては皇民は困つてしまふ。まさに御上から民草まで無責任の体系。