富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2011-02-06

二月六日(日)晴。長徳先生も日本の冬は暖かいが室内は寒いと書かれてゐるが香港も外は摂氏廿度で室内も数度低いだけなのに建物が冷へきつて而も陋宅は八日も火の気がなかつたので凍ふほど。昨晩午前二時半に寝たのになんで朝七時前には目ざめてしまふのか。で昼すぎまで陋宅片付け。今回も60kgほどの荷物で内40kgくらゐは買ひ出しで、それが狭い陋宅に入る分、要らぬものは処分の要あり。午後、西湾河の電影資料館。Satyajit Ray(サタジット=レイ)監督の「大河のうた」Aparajito : The Unvanquished(1956年、こちら)を見る。この「大河のうた」とて、物語としてはけして傑出さもないのだが映像の何ともいへぬ表現の豊かさ、それも奇を衒ふでもなく、たヾ淡々とした映像のなかに、ハッと驚くやうな技巧がいくつもあり驚かされる。さしづめ前作の「大地のうた」が井上靖でいへば「しろばんば」なら、この「大河のうた」は「夏草冬濤」だらう……と思つたのは井上靖の二作にせよ、このレイ監督の二作にせよ田舎の町での成長で「鉄道」が自らの生まれ育つた土地と都市をば結ぶ重要なファクターとなつてゐること。鉄道はそれゆゑ原武志の「鉄学」となる。太古城まで散歩してアピタ一ノ蔵(無鑑査)購ふ。帰宅して晩遅く奈良漬、醤油豆、焼き海苔で一ノ蔵を昨日築地で入手の酒たんぽ用ひて電気湯沸しで熱燗で飲む。予想以上に上出来。雑煮を食す。一ノ蔵は学生のころに美味い日本酒を飲みたいと思つたとき当時は理不尽な等級制あり、そのなかで一ノ蔵が無鑑査通したことで二級酒扱ひで本当に有り難かつた。
築地市場雑感。アタシは中学生くらゐには家のお遣ひで「うおがし銘茶」だ、山本海苔店だ、と遣られてゐたので築地は懐かしい場所なのだが、だからこそ場内は働くおぢさんが真剣に生きてゐる場所なのでトーシローがのこ/\這つてはいけない、と信じてゐて場内まで部外者が立ち入ることを失礼と思つてゐて、いつも場外で用を済ませてゐたが都知事石原某による利権絡みの市場移転で築地存亡に際し、もはやTsukijiが桑港のFisherman's Wharfと同様、観光資源となつては場内のおぢさんたちには仕事の邪魔だらうがトーシローでうぢゃ/\する築地も一つの都市の顔か、と思ふ。「だが」なぜ海鮮丼と寿司なのよ? もと/\関係者が売れ残りで仕事終ひの飯にしてゐたわけで築地ならそりゃ魚貝は流通のコストないぶん安いが末端の客が築地で「安い、美味い」と寿司喰われた日にはあちこちの寿司屋はたまつたもんぢゃない。さらに海鮮丼てのがアタシは気にゐらない。何だかあれもこれもの美味しいとこ採りで「今日はこれを」といふ根性が見受けられぬ。あんなものこそ函館とかで魚市場が天然の冷蔵庫で売れ残りを温かいご飯に載せて、の、丼ぶりだらう。それをいけしゃあ/\と売り物のする寿司屋も寿司屋なら一時間だか並んで喰はうとする客も客。食ひ物といふのは「腹が減つた」から喰ひたいときに喰ふもので一時間も並んでたかだか丼飯だ、ラーメンだを喰ふ輩の魂胆がアタシには理解できない。奥麻布のバーHのK氏が「築地は寿司ぢゃないでせう」と言つてゐたのは然り。

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