富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-10-02

十月二日(土)先週も今週も週日のうち一日休みあるとどうも反物のお仕立て仕事もきちんと終はらず今日も夕方まで官邸でご執務。南湾。AVOHKの5kmロードレースシリーズの4回目(最終回)。初回(大潭水塘)こそ出場したが次はマカオトレイル(中止)とぶつかり前回は腰痛で欠場。今日こそは、と南湾まで出向ひたが歩いてゐるぶんには腰痛は平気だが坐つてゐて立とうとすると「いてゝ……」で走るのはやはり無理かしら。レース応援でレース後に記念品のシャツいたヾく。Z嬢とStanely経由で西湾河。かなり久々に二記海鮮の食す。食肆が夕食の客でそこ/\混み始めた頃に酒屋の配達あり。鯔背を気取り上半身裸の若造二人が急がしさうに店の奥に麦酒2ダースとコーラ1ケース置いて行こうとすると食肆のアタシらも馴染みのオヤジが「おいっ、伝票見せろ!」と配達の若造に。若造二人は「しまった……」といふ表情で渋々、伝票見せるとオヤジが「こんなの注文してないだろ」と。で若造は憮然とした表情で麦酒2ダースとコーラ1ケースをまた抱へて退散。出入りの酒屋の注文の間違ひとは思へずZ嬢と「押し売りか?」と疑つたが押し売りの酒屋ってのもアタシも聞いたこともなく、もしかすると地場の黒社会のご商売で、最近では「みかじめ料」なんてのもさう易々と集金出来ないんで店の繁忙に合わせ出入りの酒屋の如く酒や清涼飲料など届け、あとで暴利とはいはぬが酒屋より少し高めで請求するとか……。さういふ気がするのだが、オヤジは「まったく油断も隙もない」とぶつ/\。安藤忠雄「建築を語る」(東大出版会)漸く読了。
▼日本で日増しに高まる反中国世論!ぢゃお馬鹿なNHKのNW9みたいですが東京の某新聞社の知己の話では読者広報室にかかる電話は圧倒的に反中国世論で、驚いたことに大型新人・金正恩君デビュー関係の記事に対して「北朝鮮なんか読者は関心がない。どうでもいゝことを一面トップにするより、なぜ中国をもっと報道しないのか」という声が少なからず。ついこないだまで今にも北朝鮮がミサイルを撃ち込んでくる「北の危機」だつたのに「北朝鮮はどうでもいい」ってアナタ……。「暴君治下の臣民は暴君よりさらに暴である」といふが暴君はゐないのに臣民はます/\粗暴さを増してゐる日本。中国では反日抗議がガス抜きの作用をしてゐるとか「共産党や政府が反日世論を煽つてゝデモも官製」なんて知ったか振りする御仁もゐるが中国では日本の釣魚=尖閣占有や船長拘束の報道はあつても中国国内の日本大使館や街頭での反日抗議活動の報道はほとんどない。中国政府は民衆の抗議がいつ反日から中共に向くかを恐れ慎重にならざるを得ず。街頭でデモや抗議したり日の丸焼いたりの「自発的」な運動を党政府が無視できず困つてゐるとすれば、中国といへども少なからず「世論」が政治に影響力を与へてゐる。更に深読みすると「それを利用して胡錦濤や温家寶を追い落とそうとする対抗派閥の勢力」みたいなネタも出てくるが、どうであれ「世論」が中国政治の一つのファクターであること。日本の内閣与党より、ある面、中国政府の方がずっと世論や市民の動向を気にしてゐるだらう。政治を動かしてゐるのは実は人民で、さう考えると共産主義プロレタリアート独裁。この中国の世論の力をが正しいと「中国は独裁国家」とか批判する人にとつては都合悪からう。
▼だが日本のそのオリコン週報の如き内閣支持率はどうにかならぬか。支持率報道に頼る報道機関も情けない。世論そのものより「世論調査の数字」。産経新聞世論調査では尖閣=釣魚で内閣支持率は64%から一挙に48%まで低下の由。自民党自民党で谷垣君は最初は尖閣問題は静観してゐたはずが途中から政府批判に使ひだす。これつてロンドン軍縮条約の「統帥権干犯問題」で政友会が軍部と通じて民政党内閣批判した構図の繰り返し、と築地のH君。御意。さういふときは世論はたいがい「勇ましい方」に流される。
▼陶傑さんが釣魚=尖閣問題で興味深い指摘(蘋果日報)。例へば「日本福岡右翼青年滋擾中國旅遊巴士」といふ新聞の見出し。日本の「右翼」が中国人旅行者の観光バスや中華学校周恩来の記念碑に嫌がらせするが日本の右翼は保家衞國で日本の「愛國者」。但し華文媒体は日本の愛国の方々は「右翼」と呼ぶが中国の保釣運動家や日本旅行制限を訴へる中国人は「愛国団体」で右翼とは呼ばず。新聞の客観、中立、公正は何処にあるのか、と。「愛国」は民族主義の情緒を出自とし右的な表現。福岡で中国人ツアーに嫌がらせすることも北京で日本人留学生に罵声を浴びせることも同じ。華文のマスコミを見てゐると日本には愛国的な日本人はをらず右翼がゐるばかりで反対に中国は愛国人士ばかりで右翼がをらぬ。また「釣魚台は中国の神聖な領土」といふ方が多いが、鄧小平の「擱置爭議,共同開發,讓下一代解決」こそ神聖で論争も要らず。虔誠なる天主教徒なら神の存在を疑はず無神論社は神の存在を否定し天主教徒と無神論者は争議となるが有神論と無神論は謂はヾ争議が成立する。だがお互いが「神聖な領土」と主張すると争議もにもならず。領土権争ふような領土がどうして神聖であろうか……とこゝで陶傑さんが引用するのが民国時代の子どもに流行つたといふ戯れ歌。荒誕歌。

小偷進了房,小狗叫汪汪。聾子聽見忙起床,唖巴大聲喊出房,瘸子跑得快,瞎子趕來幫,追呀追,追呀追,一把抓住頭髮,看看是個和尚。

譯さうと思つたが、往年の筒井康隆的面白さだが聾唖、身体差異差別となるので控へるが、陶傑さんは神聖領土の領土権争議の棚上げは、まるで「髪を引っ掴んでみたら和尚さん」のごとき荒誕之趣、と。陶傑さん曰く、香港は経済都市だから荒謬なる政治に参糊は不要、福岡で中国人観光客のツアーバスが嫌がらせにあつてもライフル銃もつた愛国鎗手のバスジャックで人質になりはせぬだろうし円高はまだ続くがこの冬も北海道に遊びませう、と。

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富柏村写真画像 www.flickr.com/photos/48431806@N00/