富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-09-03

九月三日(金)朝四時前に気象。朝はJ-WAVEのジョン=カビラ氏のTokyo Unitedに電話介して小話一つ。お題は「食べ放題」。「放題」が漢語っぽいが「〜たい+ほうだい」の接尾語で日本語。「放題」はシノワゼも漢字を見ただけでは意味を解せぬが台湾、香港あたりから「食べ放題」が定着。この「放題」が接尾語であることまでは小さい辞書から出てゐるが広辞苑でも接尾語といふ説明で止まつてしまふ。これだけでは納得できず(ラジオではそれで十分だが)気になつて朝の四時に書棚からヨッコラショと取り出した大言海で調べるとさすが大槻博士、「放題」はどうやら「傍題」が転じたもの、と推測。「傍題」は「題ノ主ヲ傍ラニシテ歌読ムコト」で譬へば「月」といふ題ををいても月より虫語を云ひ主とあるべき月より虫を旨深く詠むやうなこと。文字通り「月」は傍題にされ面白いが月にしてみれば確かに傍らに据へられ勝手に詠まれ放題かしら。台風「獅子山」の影響で終日、雨やまず。早晩に散髪。十合百貨店の旭屋書店でカメラ雑誌定期購読中止してゐるので銅鑼湾に来る用事はこの散髪だけになつてしまつた。晩に藤森輝信「日本の近代建築」上(岩波新書)読み始める。アタシの好みは清水喜助の築地ホテル館と第一国立銀行。小学生の時に子ども向けの歴史読み物の「文明開化」でこの喜助のけしてセンスがいゝとは思へぬ和洋折衷の「近代」建築(錦絵)に遇して「何ぢゃ、これは!」と目がテンに。しかも勧業場か博品館ならまだしも、これが榮一さんの日本の中央銀行だといふ。強烈な印象。この「どこか勘違ひ」が今もつて「日本の悲哀」に引き摺られているやう。
▼マニラのツアーバスジャックでツアー客を懸命に庇ひつゝ銃弾に倒れたツアーガイドの告別式に親族縁者のほか市民、政府高官から行政会議関係者まで一堂に会し千数百人。ツアーガイドが命を捨てゝまでツアー客守らうとしたのは立派だが「英雄」とまで讃へるか、行政長官から政府高官がずらりと鳩るか(民政事務局長くらゐが妥当でないか)……といろ/\思ふが

物言へば唇寒しジャッキーチェン

で黙つてゐる方が無難かしら。

日本の近代建築〈上 幕末・明治篇〉 (岩波新書)

日本の近代建築〈上 幕末・明治篇〉 (岩波新書)

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