富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

ヨンキー大哥失勢 寧清盤抽身

fookpaktsuen2010-07-14

七月十四日(水)北角ジャワロード街市の馴染みの根菜売る八百屋にいつも鳴き声が「ニョン」なのでZ嬢が「ニョン」と呼ぶ猫がゐる。あまり器量良くないが人なつこく甘える姿が可愛らしく大蒜や生姜などこの店で購ふのだが、その「ニョン」に子が三匹生まれたとZ嬢から聞き二人で小猫を愛でやうと早晩に北角に寄る。たヾ八百屋の主人が店終ひの片付け始める頃にならぬと猫は起き上がらず店頭に出て来ず、一寸早かつたのでZ嬢とWharf Rdをぶら/\と漫ろ歩いてゐると、やけに客が威勢良く麦酒飲む茶餐庁あり暑いのでアタシらも麦酒がやけに飲みたくなり店に入り冷たい麦酒ぐい/\と呷る。この茶餐庁じつは非合法で喫煙可といふか序連客が掟破りの喫煙。店も見て見ぬふりは夕方の閑散時にかうして麦酒飲みに来てくれる客ほしさか。どうであれ無煙に慣れてしまふと煙草のけむりが鼻につくがタバコ草の香りもだいぶ貧弱になつてゐる所為もあらう。麦酒も茶餐庁だと大瓶一本HK$14なんて値段でZ嬢はホテルのバーなんて馬鹿/\しい、と。確かに。すつかり良い気分で店を出ると和富中心のご自宅から令人と外食に出られる唯靈氏と邂逅。昨日の信報連載で唯靈先生が「酷熱的天氣影響胃口,邇來思飲多於思食」と書かれてゐたが、まさにその雰囲気。根菜の八百屋は丁度良い時間で「ニョン」がをり三匹の小猫も根菜の棚の下でこちらの様子を窺ふのだが慣れぬアタシらに怖がつて出てこない。母猫がまるで小猫のやうにアタシらに甘えて腹を見せてまでして寝転がるのを小猫三匹が驚いたやうな表情で恐々と眺めてゐる。Wharf Rdに戻り最近評判の壹碗麺なる食肆で豚肉合へた粗麺食す。三日月。帰宅してやけに眠いが雑誌『世界』の続き讀む。

甘健成(左)與二弟甘琨禮(右)為上h記合作打江山,惜在父死後五年鬧不和。

▼鏞記記酒家で経営権巡り鏞記の大哥・甘健成氏が経営権掌握を虎視眈々と狙う弟・甘琨禮と不和、共同経営の関係決裂。1941年に甘穗煇が始めた大牌檔(屋台)の焼鵝が評判となり燒鵝輝と呼ばれた初代は翌年には永楽街に店を構へたほど。日本軍の香港占領で永楽街の店舗は炸毀され1944年に石板街に移り経営続け戦後も繁盛続け1964年に現在のヱリントン街に土地を買ひ念願の自店舗を建立。当時、長男の健成が父を輔け毎日、父に従ひ市場で買菜から始めつゝ会計から勉強。1968年にはFortune誌で世界の15大レストランの一つに挙げられヱリントン街の左右両隣りの土地も入手する頃には台湾でエンジニアリング学んだ次男の琨禮が戻り鏞記の事業拡張に加担。1973年に長男の健成が二代目として継ぎ、1978年には現在の鏞記大廈建立、66歳の甘穗助浮ェ「收刀」と宣ひ引退。三男の琨岐も上h記に加はり長男・健成が酒家集団の董事及総経理として料理研鑽と宣伝担当、次男・琨禮が仕入れ担当として兄弟で初代の築き上げた食肆を切り盛り名声は世界的に定着する。2004年に甘穗助武タ世、齢九十六。その三年後に三男の琨岐が若くして病逝。これで三兄弟のバランスが崩れたのかしら、経営母体の持ち株会社Yung Kee Holdings Ltd.は最近まで長男と次男でそれぞれ45%ずつ保有し、残り10%を一人妹(甘美玲)となつてゐたが最近、次男・琨禮が兄の知らぬ間に妹・美玲の10%を買い取り55%の株を所有し息子二人をこの会社の役員にするなど長兄に対して経営権掌握を誇示。実際に上h記の経営を担ふ兄はこの弟の仕業が当然のやうに不満。このたび高裁に訴へ。弟に対して、この持ち株会社Yung Kee Holdings Ltd.の自分(健成)が有する45%の株を全部買い取るか、さもなければこの会社の清算を要求。兄にしてみれば実質の経営は自分が掌握しており母体会社など清算して弟ときれいさつぱり離縁の方が今後のため。弟にしてみれば経営母体から兄を駆逐できれば全面的に経営権掌握となるが兄の突きつけた条件の45%の株買収に必要な資金はなんとHK$10億(120億円)。鏞記ほどの食肆となれば09年4月期の純利がHK$5.1千万でネットの資産HK$1.2億に達し、これに中環の一等地の土地だの何だので資産価値膨大(数十億)、で兄の45%の株買収となるとHK$10億となる。弟にこれほどの現金が用意できず、かりにどこかの企業と組み資金調達出来たにせよ、兄を放逐せば「味と看板守つてきた」兄が鏞記の看板手放しても例えば「甘健記」なり「成記」でも創業すれば馴染みの常連客がかなりそちらに流れるのは必至。アタシだつて兄を贔屓。で「そこまで出来まひ」が兄の腹のうち。老舗の大店にありがちな兄弟、創業者一族と雇はれ番頭、といつた反目。香港の飲食業でも富豪飯堂たる福臨門酒家の五哥と七哥の確執、蓮香樓の経営権など争議少なからず。

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