富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-05-31

五月卅一日(月)早晩帰宅してドライマティーニ二杯。煮た手羽先と昨晩の赤葡萄酒。気温は晩も摂氏26度くらゐだが北風が涼し。
▼昨日の香港競馬はCharter Cupは大雨。最後2レースは取り消し。この2400mのG1レースはスタンレー=ホー氏のビバパタカが一番人気。三年前に五歳で勝利、翌年二着で昨年復活勝利で今回三度目の勝ちに挑む。アタシは脳血栓で治療続けたホー氏が(もうお終ひだらう、といふ周囲の予測に反し)競馬場に現れ君臨見せつけビバパタカが応えて勝つのを想像したが大雨の大荒れでホー氏も現れず。結果、Mr Medici(好先生)の勝ちでビバパタカは三着。馬券的にはアタシはChadwick君騎乗のSuper PistachioのP勝負で、QもQPもそれからビバパタカと雨降りなので鄭雨滇騎手のFat Choy Ichiban(五着)に流しSuper Pistachio二着に入りPとQPでどうにか勝ち。それにしても七頭立てってどうかしら。香港がマイル競争盛んで2000m以上は出場馬限られるとはいへ……。
朝日新聞(日曜)の読書欄で筒井康隆の「漂流」なる連載がもう58回は長過ぎ。食傷気味だが昨日の記載に塙嘉彦通ての大江健三郎との交流、大江の示唆で塙が筒井に書かせたのが「虚人たち」で泉鏡花賞、大江の失敗作と評された「同時代ゲーム」を筒井が「失敗作であることさえ度外視すれば傑作」とSF作家クラブの事務局長の立場で第1回目の日本SF大賞に推したが反対あり実現せず翌年は脅迫まがひの言辞を弄し井上ひさし吉里吉里人」を受賞に至らせ、このあと刺戟受けた筒井は「虚構船団」を執筆するに至る……とアタシも同時代で貪るやうにこれらの威信作讀んでゐた若い頃を懐かしむ。その筒井の思ひ出話の中で大江の「同時代」を理解できなかつた小林秀雄の読解力の不足を筒井は「濫觴からいかに凄い話になるかを予測できない能力の不足」と指摘してゐる。それを言つたら筒井本人の「虚構船団」だつて濫觴の「まずコンパスが登場する。彼は気が狂っていた。」から怒ると言葉を失ひココココココココ……と針を吹き出すホチキスやナンバーリングの登場あたりはとんでもなく面白かつたが……。一昨晩に見た映画『なくもんか』も「濫觴」は易しいが「凄い話」に出来なかつた。大江の「万延元年のフットボール」も同じ轍を踏んでゐるが「同時代ゲーム」はさういふ意味で最後までブッとび続けてゐたかしら。濫觴からいかに凄い話になるか、を予感させそれが最後まで脈打つてゐたののが中上健次。映画「2001年宇宙の旅」も、さう。
▼築地のH君から産経の「正論」で井上寿一先生が思ひきつた論を発表と教へられる(こちら)。戦前の政友会に比すべき今の自民党はあらためて「包括政党」をめざすべき。地主と資本家の政党として出発した政友会が党勢拡大のために労働者や農民、女性にまで手を伸ばしたやうに戦後の自民党も社会階層横断的に支持の獲得に努めた。それに対して今の自民党を見て「民主党に対する独自性を強調するあまり自民党保守主義を狭く定義することは避けるべきだ」と。御意。保守主義を狭く定義してゐる産経の社論を真つ向から否定するやうな意見なのに、それををちゃんと載せるあたり産経もさすがに「社会の公器」としてのジャーナリズムの自覚を持つてゐるといふことか(笑)。それにしても自民党が何もしてゐないのに民主党支持率がぐん/\低下。それでも「次期首相にふさわしい人」では谷垣君は2.5%でまだ鳩山君の3.5%がマシとは。

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