富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月廿八日(金)早晩に西湾河の二記にZ嬢と食す。太古城の映画館で『のだめカンタービレ最終楽章後編』見る。なんだかんだいつてコミックスもテレビドラマもほとんど見てしまつたことに。映画の中でピアノが全てYAMAHAなのはスポンサーで驚きもせぬが映画冒頭のコンサート会場の場面でやたらLang Langのポスターが目立ち「もしや?」と思へばラヴェルのピアノ協奏曲ト長調ショパンソナタ3番、ベートーヴェンソナタ31番も悲壮もショパンのピアノ協奏曲1番もみんなLang Langが弾いているように聴こえ映画の最後のクレジット見たら前述の曲ばかりかモーツァルトの2台のピアノのためのソナタも多重録音で、更に大島ミチル「もじゃもじゃの森」も、のだめが幼稚園生と遊ぶ「アヴィヨンの橋の上」までLang Langらしいサーヴィス旺盛ぶり。さすがに劇中「清良」の演奏するブラームスのヴァイオリン協奏曲だけはLang LangでなくJu-Young Beakであつたが。それにしても東洋人が何を好き好んで巴里を舞台にこんなクラシック音楽絡みの恋愛ドラマを作るのか、撮影に動員されたオケや数百名のエキストラには「よくわからないが西洋音楽がお嫌ひぢゃないやうで微笑ましい」光景だつたかしら。
▼信報の社説「本田風波再顯世界工廠陰暗面」と本田自動車の廣東佛山の部品部門工場での罷工に拠る組立工場の停産。「世界の工場」の印象を汚す、としつゝ指摘するのは政府の農業支援で農民が珠江デルタの工場に出稼ぎに行きたがらず製造業が給与や労働環境の向上が求められること。本田の工場でも従業員採用にあたり「參與集體怠工、停工、集會或無正當理由不服從公司命令的職員離職」と強要したといふ報道もあり、富士康や本田自動車の問題が「世界の工場」の現実なのか、と指摘。また特稿「農工反抗低收入敲警鐘」で指摘する点は、農村での農民の政府に対する集団抗議も職工の罷工も根底にある問題は同一、と。経済発展によるインフレに対して出稼ぎ農民の平均月収は1,417元で前年度比でわずか77元の増加。月収800元以下の農民が7.3%、1,200元以下が31.5%もゐる。深圳の当代社会観察研究所の劉開明といふ研究者の勇気ある発言だが「こうした抗議の原因は急激な経済発展に対して政治改革や社会改革がとても遅く、戸籍制度が足枷になり農民は都市に出稼ぎには行けても居住もできぬ不公平など、こうした農工問題が根本的に解決されない限り経済社会発展にも影響があり政府による改革が求められる」と。確かに。だがその解決がどれだけ難しいことか。

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