富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

Борис Березовскийに圧倒される

fookpaktsuen2010-04-23

四月廿三日(金)晩に尖沙咀。一昨晩の札幌ラーメンが淡味で悲しかつたので久々にDomonラーメン店に寄つたら店の名前が「札幌らーめんみそNo.1」といふ名に変わつてをりDomonはDomonで他にあるから、だうやらこの店の経営が変はつたらしいが店内を覘くと従業員は変つてない。葱らーめん食す。コンサート前は酒も飲めず(寝てしまふのが怖い)Hyatt Regencyに上つたらロビー奥の空間が誰もをらずソファも快適で小一時間新聞読み等。すつかり地下道下した尖沙咀を文化中心。香港フィルの演奏会。Perry So君の指揮。アナトール=リャードフ(Anatol Liadov 1855-1914)の魔湖(作品62)なる曲で幕開け。好演。今晩は「ロシアの巨鯨」ボリス=ベレゾフスキー(Борис Березовский, Boris Berezovsky 1969〜)聘きチャイコフスキーのピア協1番。繊細な野蛮人だとか熱血体育会系とかジョルジ=シラフの再来と異名は数知れず。二階下手のアタシの席からはスタンヱイのピアノがこの人の背に隠れる。「ホルンが音外さないかしら」といふ心配が今夜の香港フィルの「原点王」はクラリネットのS先生で明後日来やがれ、顔洗って出直して来いな演奏、はさて置き、ボリス=ベレゾフスキーは出だしからチャイコフスキーも驚いて生返りさうな独創的演奏。Perry君は愉しさうだがオケは第1楽章はこのピアニストのジャズ演奏と全く噛み合ずぐちゃ/\。何だか水島新司の野球漫画で二流チームに突然、オホーツク海の漁船乗組員だつたデカい選手が来ちまつたやうな感ぢ。それにしても調律師が聴いたら卒倒しさうな、弦が切れネジが飛びハンマーが折れさうな演奏が面白い。五月は日本でショパンづくしの由。どんなショパンになるのかしら。曲の終りではこの津波に襲はれオケもヘト/\で音が出てをらず。がなんとアンコールで第3楽章をもう一度、とボリスさん。どうやら暴れ足りぬ様子。で怒濤の第3楽章をもう一度。曲名知らずの小曲一つ独奏。後半はプロコフィエフの5番。ペリー君はインタビューで好きな曲に挙げてゐたが肝の坐つてをらぬこのオケにとつては苦手かしら。ペリー君になり香港フィルを何度か聴くやうになり思つがパートで良いのはヴィオラ、チェロ、木管のうちオーボエとフルート、打楽器。最悪は金管、そして今晩のクラリネット。そして可も不可もなきヴァイオリンが歌はないから。この曲の情熱も、そして裏返しのどこか諧謔的なところも表しやうがない。帰宅して今ごろまだ『世界』四月号読む。吉田徹(北大)「民主党政権はなぜ脆弱なのか」が秀逸。「政権交代」だけがお題目、事業仕分けに見られる利権の破壊と排除だけが演目では新自由主義の既存利益の転換と何ら変はらず。本来、社会的価値の組み直しが必要であらう、と。御意。だが民主党にそれを期待するのが間違ひ。個々人が自分はそれをせず「小泉さーん!」「石原っ〜!」「鳩山さーん!」「次は舛添」なのが深刻な問題。舛添センセイといへば四半世紀も前に「自民党が野党になる日」なんてカッパブックス書いてゐたがちゃっかり自民党の総裁候補か、と嗤つてゐたが自民から脱党で自民党再生更に難しくした点ではデビュー作「自民党が野党になる日」の初心貫徹かしら。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番といふあまりにポピュラーな曲。ふと思ひ出せばアタシが子どもの頃に自分のお小遣ひで買つた最初のクラシックのLPがこれ鴨。リヒテルのピアノでカラヤン&ベルリンのグラムフォン盤の、あれ。あの帝王対決の完璧が刷り込まれてゐるから。このボリス=ベレゾフスキーのリスト「超技巧」がYouTubeで評判。ここまで汗だらけとは(室内スタジオで、だ)。9番のRicordanzaなんて、なんて繊細なこの演奏。泣ける。

富柏村サイト www.fookpaktsuen.com
富柏村写真画像 www.flickr.com/photos/48431806@N00/
http://twitter.com/fookpaktsuenhkg