富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-03-23

三月廿三日(火)昨日の大気汚染、指数は200超えると「厳重」となるが昨日の指数は殆どの観測地点で500超え観測不能。観測史上初めて香港で黄砂あつた由。未明に先考の兄にあたるM叔父逝去とS従兄より知らせあり。温厚なる方で子どもの頃に皇居北の丸の科学技術館に連れて行つてくれたり、あたしの父母が商売忙しいので夏の東北一周旅行に誘つてくれたりの昔を思ひ出す。祖父のおつとりした文人的な血を引かれたのがこの叔父上。先考とは兄弟でもだいぶ気性が違ふと子どもながらに思つてゐたしお互ひ若い頃はどうつきあつていゝのか迷ふやうなところあつたと見受けられたが中年を過ぎてからは先考も「兄貴、兄貴」と慕ひ、老いてからは二人で神谷バーで飲むなどかなり兄弟仲好し。昨年晩秋には父方の大叔父も亡くなり父方の戦前と戦後がガツリ無くなつた感。明後日までの東京便のフライト全社全便満席、ヱイティングも能はず。知己の方通しかなり無理強ひ請ふがだうなるかしら。午前中Z嬢と海洋公園。新参の若いパンダの一対(つがひ)来港で行かうと言つてゐたのが今日になりぬ。平日で客も多からず何より大陸からの団体客がパンダなど香港でわざ/\ご覧にならぬのがありがたい。愛らしく器用通り越し几帳面なほどきちんと笹を喰らふ態。従前からの一対を愛でたあとOcena Expressなる二つの離れた遊園地結ぶ地底列車に乗る。従前はケーブルカーのみの連絡で強風など運行中止となるとバスでかなり迂廻して二つの園を結び、この地下ケーブルカーで全天候対応の由。海豹など見てロープーウェイで戻り今度は新参のパンダの番ひを愛でる。新しい(暫定的な)パンダ舎は仕切りのガラスもなくかなり開放感あり身近にパンダ。しかも客など数へるほど。昼過ぎにリパルスベイ。The Verandahに昼を食す。Z嬢の買ひ物でスタンレーに往く。夕方、湾仔。エプソン香港でプリンタ修理出来受け取り帰宅。さすがに昼食がけして量は摂つてをらぬが昼飯が午後三時まででさすがに晩に腹も空かず。
▼大嶼山の沖、長洲島の近くに石鼓洲なる小島あり。政府の麻薬解毒センターあり関係者のみ立ち入り可。こゝが政府管轄となる前に1960年代にメソディスト教会系で新西蘭人宣教師により麻薬中毒者の解毒施設があつたことを日曜のSCMP紙別冊で知る。しかも孤島のこの施設に屋外に立派な羅馬風呂あり。どういふ収容施設と風紀だつたのかしら、と興味深いがGoogleの地図で眺めたところ当時の施設の面影は無し。フーコー的かつ乱歩的。
▼谷歌(Google)の中国撤退。表現の自由など政治的要因もあるが何より十数億の巨大市場に挑んだが地場の「百度」の市場寡占。政治的リスクや営業上の制限多く巨大収益期待出来ず。長城に守られた中国でGoogleの他にFacebookTwitterYoutubeも見られず。百度とQQを合はせても利用度はFacebookの四分の一に至るか至らぬか。世界の五分の一の人口がネットで世界から孤立(と昨日の信報)。Google.cn の閉鎖で(海外からの)アクセスは自動的にセンサーのかゝらぬ Google.com.hk に振られる由。香港の絶対の存在理由が中国における唯一の言論自由都市であること。
▼三たび映画「歲月神偷」について。やはり香港的には兄は英国の大学で法学を学び香港に戻り一流の弁護士として活躍。そこで遭遇するのが旧態依然とした老朽ビルの住人立ち退かせ計画。デベロッパー側の弁護士として住人の賠償請求問題の請負ひ。当然、自分が育つた(永利街をモデルにした)あの路地。父はすでに亡く父のその鞜店を継いだ弟は事業を鞜販売から製造に移し東莞で大規模な鞜製造工場をもつほどに。母は二人の成功した息子に養はれ仕合せに暮らすがこの再開発問題で弟は住民側で立ち退き反対の立場で兄と対立……。或ひはその逆で弟がで土地開発で財を成し育つた路地も買収を狙ひ市民派弁護士の兄と対峙。或ひは兄弟して弁護士か兄弟して土地開発デベロッパーで対峙か。やはり財閥に身を売る弁護士の兄と製造業で地道な弟の葛藤、が面白いかしら。

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