富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-03-10

三月十日(水)「裸纤」とは何か、といへば裸体纤夫。纤夫とは河川を遡る船を人力で拉纤する過酷な作業の人夫。しかも山岳地方の急流では岩場によぢ登り崖を這ひ船を引く命がけ。この纤夫らが冬場に上着を羽織るのを除き裸で作業するのは荒縄や麻布などで船を引くと粗地の織布の粗末な衣服は水辺では濡れて重くなり岩場では伸縮に乏しく屈伸に耐へず汗でごわ/\と肌に纏はりつけば肌を傷める。纤夫は必然的に赤裸。それが粗野なる風習ながら何ら厭はれずにきたのは人里離れた山間の急流での作業にて集落に赤裸のまゝ出ることも稀ゆゑ。だがそれが突然の「眼差し」を受けたのは開放改革にて湖北省恩施の土家族など暮らす辺疆に都市の文明人や外国人旅行者が長江上流の景観と川上り旅行に訪れるやうになつたため。彼らの眼差しとカメラのファインダーに写つたのは全裸で船を引く精悍な男衆。中国の奇習と話題に。でそれが非文明的と纤夫に無理矢理、ズボン履かせ今日に至る。この作業に無理のない材質の半ズボンなども考案された由。それが今になり突然また話題となつたのは二月末の恩施州の中共と全国政協「両会」で(つて田舎だと一括開催か?)同州の政協副秘書長が「巴东神农溪裸体纤夫是三峡故老拉纤文化的活化石,是我国的重要非物质文化遗产!」と神農溪なるこの「観光地」で裸体纤夫は集客のアトラクションになるので復活を提案。恩施州の旅游局局長も検討は必要だが「建议十分有创意!」と応じた由。ワニ園で参観者に鶏を投げさせ、動物園で馬に興奮剤注射し決闘させるのとまるで同じ発想の拝金主義。それが地元住民の裸にまで商品価値見ひ出すとはさすが資本主義熟知の共産主義者!その発想が政府の小役人と思ふと背筋がぞつとするほど中国の「共産主義」の末路に恐れるばかりなり。

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