富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

江蘇省蘇州崑劇院「玉茗堂四夢」

fookpaktsuen2010-03-07

三月七日(日)三寒四温でまた寒さ少しぶり返す。昼に天后。Z嬢と清風街の順豐排骨麺に食す。外で客が待つほどの繁昌で繁忙時間の出前は止めるべきだらう。中央図書館で開催中の「家家有計」(www.huluhk.org/home/index.php)見る。「摩登家庭」なるアート団体(www.huluhk.org)が主宰で畏友歐陽應霽君らが家の日常生活の中にアート見いだしなか/\ 良い雰囲気。Z嬢と別れ尖沙咀。香港文化中心。昨日に引き続き蘇州崑劇院の公演見る。今日は昼、夜と二部あり。昼は釵釧記の通し。この釵釧記なる芝居、上演が而も通しでは稀なさうな。見て解つたが裕福な家の娘・史碧桃(朱璎媛)に恋する清貧なる書生・皇甫吟(周雪峰)といふ恋愛物……だけ、にあらず皇甫吟を騙す親友・韓時忠(呂福海)と碧桃の女中でありながら物語の主人公に成り代はる芸香(沈國芳)が物語の中心にあり、皇甫吟と碧桃の悲劇、皇甫吟と芸香の喜劇的要素、それに最後は真実を裁く正義、と話が進み、なかなか難しい。この劇団ほど役者揃ひ、しかも音曲も良くないと難しいだらう。音曲は舞台の上手の袖に大きな四角い机を置き奏者がその四面に向かひ合つて坐り演奏する面白い演出(奏者は大変だらうが)。芝居跳ね外に出ると小雨。尖沙咀の地下道工事がもう何年続いてゐたのかしら。それがやうやく完成。尖沙咀の駅から自動車専用道路で隔たつてゐた文化中心や天星埠頭などへ雨に濡れず行けるやうになる。地下鉄を使へばアタシの家まで傘なしでも帰れる。だがもと/\ふつうに路面に横断歩道あれば楽なのに自動車の渋滞緩和と歩行者を地下に追ひやつたのが不愉快。早晩にJimmy's Kitchenでドライマティーニ独酌。ふらりと入つた雲南だか桂林の米線店がスープが化学調味料たつぷり、で独得のあの甘さに閉口。これで夜中まで喉が渇くのだ。また文化中心に戻り蘇州崑劇院の公演の最後は玉茗堂四夢と題して一幕物四つ。「南柯記」から瑤台。続く「牡丹亭」は幽媾で言ふまでもなく沈豐英の杜麗娘と俞玖林の柳夢梅。たしかにこの二人できれいなのだが、もう演じすぎ?で上手く、そつなくまとまりすぎのきらひあり。中入り後は「邯鄲夢」の掃花、三醉で主人公・呂洞賓役の周雪峰なる若手が好演。最後は「待つてました」で「紫釵記」の折柳陽關は霍小玉役が王芳で李益役が大御所・趙文林。この劇団の創設が1956年なら趙文林は1961年にこの劇団に入つて、もう半世紀のヴェテラン。だが二十代の役が似合ふから。声の張りといひさすが名優。これだけの崑劇を二日間たつぷりで大変満足。
朝日新聞書評がRoger Deenの画集『ドラゴンドリームズ』紹介してゐるのだが、この幻想画家は父が英国軍人で香港にも子どもの頃に住んでゐた由。アタシらの世代にはイエスのアルバム。中学生の時に多田君と「ビートルズなんて小学生だよ」とイエスELPなんて聴いてゐた。Roger DeenPink Floydの楽曲を倫敦フィルが演奏した“Us and Them”の秦那趣味も子どもの頃の香港で得たものなのかしら。多田君はMITでMBAまで修了し今は某民間の尖端技術の研究センター長の由。

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