三月五日（金）晩に湾仔に下り永華麺家に雲呑麺食しコンビニでサンミゲルの瓶麦酒呷り香港芸術中心。香港芸術節開催（www.hk.artsfestival.org）が先月末より開催され本晩、新加坡のW!ld Riceなる劇団（www.wildrice.com.sg）によるジョージ＝オーヱル作「動物農場」の舞台を診る。筋は当然、原作で知るもの、をどう演出するか、と正直あまり期待もせず、が偶然、とつた切符がかぶりつき正面中央で舞台の迫力に圧倒されつゝ半裸で動物農場の家畜演じる役者の演技力と演出の妙に圧倒されつゝ舞台を拝す。原作は周知の通りだがヒトを排し権力握つた豚＝共産主義者の横暴に加へ廿一世紀的な（加筆と演出な）のは豚の仕切る共和国（農場）が近隣のヒトが経営の農場とサミットの場面。サミット開催地の民族服で首脳らが登場し友好的な場面の演出はASEANなどへの揶揄が巧妙。権力奪回の人民だがAll aminals are equal, but some animals are more equal than other amimalsが中共か李光燿の人民行動党の一党独裁に対する婉曲ながら可成り辛辣な批難と、それ以上に痣け嗤ひなのが心地よい。新加坡をいつも小馬鹿にするアタシだが善し悪しは別として英語であることでかうした劇団が少なくとも「英語を解す」世界では共鳴として舞台を共有できること、の大切さ。さういふ意味でかうした劇団が東から東南アジアでは他に育つてをらぬことは事実で、演出やその演技力はありながら最も損をしてゐるのは（言葉を要らぬ舞蹈は別にして）日本の劇団だらう。「英語」がけして舞台で権力的でないのは、Gene Sha Rudynなる雄鶏をずつと演じたマレー系の役じ手が舞台で、最後、豚役で出てきた際に演出でASEAN首脳がシャンペンで乾盃の場面あり、実際にシャンペングラスに発泡酒が注がれ舞台で供され他の役者が飲み干すなか、この役者だけ飲む真似で、しかもそれをかなり客に見えるやうにしたのは彼が敬虔な伊斯蘭教徒のゆゑ。さうした「差異」を舞台上での敢へて認めたことが、いゝ意味でワールドスタンダードなのだらう。
▼蘋果日報トップに「傳奇港商徐展堂中風垂危」と記事あり。中共系企業「北海集団」の名誉主席で「中共の」と言ふと政治的不正確なのかしら「中国の」（この方がずつと本来の政治的不正確な気もするが）いづれにせよ中国人民政治协商会议（Zhōngguó Rénmín Zhèngzhì Xiéshāng Huìyì）＝全人代が衆議院とすれば参議院か、どうであれ中国の中共による一党独裁が「一党独裁ではないこと」とするための各民主党派、各団体、各界の代表による全国統一戦線組織、の常委の徐展堂氏が政協会議出席のため上京、で中風で危篤。「神秘富豪」と呼ばれるのは、その資金源の不可解さゆゑ、といつても中国と伊蘭の軍事貿易にフィクサー的役割演じて巨額の富を得るなど資金の出自が人民解放軍なのは周知の事実。さういふ意味では日本でいへば大倉喜八郎。1941年に江西省吉安に生まれ原籍は江蘇宜興。1950年に香港に逃れ数年後に父を亡くし13歳で働き始め銀行の郵差、塗装職人、雲呑麺店の徒弟など経て60年代に不動産業始め67年の反英暴動の際に地価暴落で幾つかの不動産物件購ひ、そこからは不動産、塗料、ホテルなど投資事業展開し80年代に何らかの、つて軍関係だが中国資本と提携し北海集団を設立。事業ばかりか骨董蒐集の趣味は凡人の域から遥か世界でも有数の中国美術の蒐集家として名を馳せコレクションは十億元と云はれたが亜細亜通貨危機の後、事業は左前となり事実上の破産。それでも「何らかのツテ」で抹殺されることなく事業の第一線から退き趣味骨董の世界で日々是好日。功罪数々あれ軍関係で得た資金を珠海の淫売だのカラオケクラブでのレミー＝マルタン、マカオの賭場で浪費せず美術品蒐集に投じただけご立派。香港大学の美術博物館は徐展堂の名を遺す。蘋果日報に記事に一つある逸話は事業失敗し破産した或る晩、ヴィクトリアピークの豪邸に親しき財界人と中共在港幹部招いた徐展堂、すでにメイドや料理人など解雇し徐展堂夫人自らが厨房で拵へた料理を供し葡萄酒蔵より好事家なら垂涎の超一流の葡萄酒をば選び開栓、それを惜しげもなく杯に注ぎ何ら不愉快も絶望も見せぬまゝ徐展堂氏は骨董文芸の鼎談款語尽きぬまゝ深更までの宴、と回顧談。この新聞記事を切り取り千葉の隠居Ａ氏に郵送。Ａ氏は現役時代に仕事関係で徐展堂の知己。Ａ氏のその中国古美術への造詣ゆゑ徐展堂に弟のやうに可愛がられ徐展堂にまつはる逸話いくつか拝聴。こゝに綴るに能はず。その大人（Daren）ぶりにアタシのやうな巷民たゞ／＼敬服の至り。だが諄ひが資金源は人民解放軍……だが、まぁこれも戦火のドンパチの火薬や幹部将校の遊興に浪費されなかつたことは徐展堂先生の功績と考へるべきか。
▼それが天皇の孫であらうと学習院であらうと小学校の一児童が何らかの「乱暴」が原因で「登校したくない」とした「たかだかそれだけ」のことで大騒ぎする社会とマスコミのキチガイぶりが怖い。東宮職も迷走続き。昔は子どものころ、これくらゐの障礙は苛められる側も、そして苛める側も乗り越えて大人へと成長しただらう。皇太子殿下が子どもの時とそのお嬢さんの今では明らかに巷民とマスコミの皇室を眺める視線も狂つてゐるから大変。どうであれキチガイな世の中。
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