富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-12-27

十二月廿七日(日)昼前にZ嬢と一旦は沙田、大圍方面に行かうと出かけたが太古城に寄り(因果関係はないが)遠出の意慾失せ、さう/\太古坊で黒澤明生誕百年だかの展覧(こちら)やつてゐたわね、と参観。オフィス街の休日ぢや頗る閑散。黒澤監督の手近の愛用品から台本、コンテの絵筆、映画の衣裳など予想よりかなり充実、なのは黒澤監督の息子が仕切るプロダクションが実質的主催元だから、で世界各地で開催らしいが(こちらこちら)実質的にきちんと開催が決まつてゐるのはこの香港だけ、でアトは今ひとつ絵に描いた餅のやう、なのは想像に易いが蒋介石を経国の孫が商品化する以上に黒澤明を商品管理するプロダクションの強さ、この展覧もかなり強気のオファーでさう易々と受け入れスポンサーも集まるまい。香港は代理店がかなり尽力しSwireも太古坊のこの展覧会場をば供させスポンサーも日系企業を主にかなり集めたことで入場無料で出来たのが幸ひ。特筆すべきは立派な映画(DVD)上映空間もあり無料で黒澤作品が見られること。本来であれば香港なら電影資料館で黒澤明全作品上映でもして展示会場でこの回顧展やれば最善なのだらうが。かつては印刷など工業地帯であつたこの周辺、濱海街もだいぶオシャレな食肆など出来て風景が変はるのを眺める。バス乗り継ぎミッドレベル。昨日に続き今日の昼は堅道の京香餃に餃子を食す。寒雨となる。Z嬢の買ひ物下見に付き合ひ粗呆地区からHollywood Rd漫歩。路線バスで金鐘。ダンヒル商店でズボン仕立て受け取り。太古城の無印で冬用スリッパ購ひ帰宅。有馬記念NHKの録画中継で眺める。雑誌など読み残し整理。チーズとモツ煮、赤ワイン。NHKのドラマ「坂の上の雲」第三〜四話を見る。なんて日本といふ国は決断力が「あつた」大人の国のかしら、と思はせぶり。何よりも幕末から明治廿年くらゐで言葉も通じなかつた列島の諸藩覆ひ「国民国家」が成立した(あるいは「成立した」とする虚構)が司馬遼太郎的に興味深い。結局のところ司馬遼太郎のいふ「国のかたち」(小文字の)constitutionも実際には成立せず(してゐたら昭和の軍部独裁に至らないのだらう)近代市民革命も起きず、戦争に突き進み戦争に負け「終戦」で済ませ戦後の経済成長を経て……の全ての決算が今の脆弱さに収斂されてゐるの鴨。サラリーマンNeoの年末特集見る。野村監督夫妻の「スナック月見草」が面白い。
▼個人的に興味はないがYundi Liが二月に香港で開くリサイタルと香港フィルとの音楽会のチケットがまだ完売されてをらぬのを知る。人気もブーム過ぎた感あり。
亀井静香君が天皇が「権力の象徴であつた江戸城(現皇居)にお住まひになられるのは、お立場上ふさはしくない」と思ふのも発言も勝手だが、それを数日前に宮中昼食会で陛下に申し上げ、而も申し上げたと後日、テレビ番組で公表。異例中の異例。先日の中国の国家副主席来日での天皇会見の強請もさうだし政府•国会議員があまりに<天皇>にお気軽過ぎ。先帝ではとてもかう出来なかつたのだらうが今上天皇があゝいふお人柄なのでつい民草が思ひ上がる。アタシは個人的に京都に再び遷都し天皇家京都御所で泥臭い政治から距離を置きお過ごしになつては……と思つてゐたが今は天皇陛下が日本のconstitutionの体現、日本で最強のリベラル派抑止力となつてゐることを思ふと東都の宮城にいらつしやることが日本のため、と信じるばかり。

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