富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月十五日(火)小雨。喉痛甚し。朝かゝりつけのC医師の診療所往くと往診か昼前まで戻らぬと言はれ向ひの診療所へ。けつこう強い薬を処方され晩まで寝たり起きたり朦朧。雑誌「世界」の臨時増刊「大転換」読了。山口二郎による菅、仙谷、北澤ら各氏へのインタビュー、山口教授本人が「十年来民主党政権の樹立を主張してきた私が言ふのだから、贔屓が入つてゐると思はれるかもしれない」と正直に述べているがその通り。まるで民主党の広報誌の如し。予想以上に秀逸は石破茂先生の「リアリズムの追求こそ再生への一歩だ」。大切にすべきものを大切にするのが保守で自民党再生のために国旗とか国歌とか愛国心を全面に押し出し強制するのは保守ではない、大切にすべきはリアリズムの世界、と。続く加藤紘一先生も安倍三世的な「闘ふリアリズム」では自民党は再生できない、靖国思想は反米思想で極東裁判を認めないといふのなら対米戦争も辞さず、でその論理の先にあるのは戦後政治の全ての否定で自民党の本来のあり方(親米保守)とは矛盾する、と指摘。この石破、加藤の二つのインタビューだけが岡本厚(「世界」編輯長)なのも興味深いところ。宮台先生もこの雑誌の鼎談で保守と右翼を「平時の思想」と「非常時の思想=法を破つても共同体を守る」と保守と右翼を区別した上で天皇制がこの保守と右翼をわからなくする、として指摘するのは政治権力は体制が変はつても昔から天皇を立てることで國體不変とするが、それが保守なのか、と。自民党は疑似社民主義で家父長的、土建的な公共事業を使つた再分配主義なのだ。もうそのシステムが出来ないから下野した今こそ「本来の保守」を考へ直すべきだらう、と。それなのに谷口君は雑誌「正論」で「戦ふ自民へ わが決意に一点の曇りなし」なんて発表した、と築地のH君より。天皇在位廿周年では皇居前広場の「国民祭典」では誰もが寒さを忘れて心を一つにした、なんてベタなこと書いてゐるさうで、これこそまさに「皇室の政治的利用」そのもの。靖国参拝も「自然に行ふことが大事」で結局、自民党の原点は綱領にうたつた「独裁を企図する共産主義勢力、階級社会主義勢力と徹底的に戦ふ」ことで社会情勢は変はつてもその使命は残つてゐる、なんてことを主張してゐる由。これこそ石破先生あたりが最も「ダメ」と指摘したところ。野党自民党の総裁として「曖昧な中道右派」路線は受け入れられずネオリベか極右に醇化するしかない、と悟つてしまつたのかしら。中央公論では岡崎久彦先生が自民党若手の落選元職集め坐談会は「結局、真正保守とは安倍政権の路線ですよね」と総轄したといふ。これも上述の石破、宮台の見方とは全く異なる誤解も誤解。早晩に香港で精米所営む俵屋玄兵衛よりあきたこまち届く。紅磡にある精米所で本日精米のあきたこまち届けてくれ2kgでHK$108也。ついでに「ぬか」までいたゞき糠漬けに使へるのがありがたい。湯豆腐を煮て食す。雨が本降りとなる。服薬。早々に臥床。

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