富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-12-05

十二月五日(土)早朝からZ嬢と紅磡。香港コロシアム。スポーツ観戦せぬアタシが訳あつて東アジア競技大会の排球、日本対マカオの試合見物。Z嬢とスポーツ観戦はいつ以来かしら?と辿れば何年も前のバンコクでのムエタイ参観以来。排球をアタシが試合を生で見たのは生まれて初めてだしテレビでもおそらく最初で最後が日本男子が金牌のミュンヘン五輪以来と思へば数へると37年ぶりかしら。それにしても閑古鳥で客の九割は学校優待で子どもらばかり、で香港コロシアムの座席の一割余がせいぜい埋まるくらゐ。日本対マカオの後に中国本国対香港や、もう一試合あるのだらうが帰りがけに再入場券くれたのは急場凌ぎのせめてもの客動員のため。それにしても閑散。日本対マカオは感覚から言へば全日本対相模原市市川市の市民選抜で日本が圧勝して当然のやうだが日

日本足球隊本周三晚對北韓前夕,「屈就」在灣仔一個籃球場內操練。

本もけして一軍でないのかマカオも中国本土から傭兵がゐるのか背景は知らぬがいづれにせよ日本が三セット連取で勝つたがマカオの善戦なか/\。今朝の信報が社説で「請讓運動員當東亞運的主角」と書いてゐるのは尤も。本来、運動する者が運動する「だけ」の運動会がアテネの昔から国家主義に取り入れられ、といふか運動会なんて行事ぢたの開催が政治装置の思惑以外の何ものでもないのは明白だが今回の香港のこの大会とて競技会開催で香港を盛り上げようといふ意図が先行し過ぎでの失錯。関連イベントばかり数々開催することに熱心で蹴球の日本代表チームは対北朝鮮戦の前晩(十二月朔日)なんと湾仔で、修頓蹴球場ならまだしも戦前、葬儀場があつたがゆゑ土地売買嫌はれ政府用地のまゝ繁華街の中にぽつんと在る湾仔の狭いミニ籠球場に押し込まれ練習の態はよーするに運動員など二の次で香港開催での盛況が期待されてゐることの証左。この競技会は今晩が正式な開会式だが、それを前に予選での醜悪な実態ご披露で曾徳成「極左」民政局長ばかりか競技大会の代表たる「香港の堤義明」霍震霆(香港代表する左派資本家•霍英東(1923〜2006)の子)にまで批難が至る。当然。昼前に排球観戦済んだ後、紅磡の下町に出て観音廟に賽す。路線バスで九龍城。某餃子専門店に早めの昼を食す。特筆に値するほどでなく寧ろ「二度と来ない」だらう。蔡瀾さん推薦の看板あり。食べたりず清真餃子店で牛肉餅と餃子。昼に二人で餃子を小ぶりとはいへ四十個。パンなど購ひふら/\して地茂館で緑豆沙。旧啓徳空港横のバス停から路線バスで尖沙咀。車中昼寝。Z嬢が日本書籍のトマトブックスに寄るといふので付き合ひ同じ建物に(移転したのだらう)天地図書あり暫し白先勇の「寂寞的十七歳」立ち読み。Z嬢と別れHeritage1881に往く。今日の蘋果日報によれば数日前、此処で食後に敷地内で紀念写真撮らうとした客に警備員が「呢度係長江買咗,你唔影得相!」(こゝは長江=李嘉誠財閥が買つた(土地な)んだ、写真を撮るな」と指摘。警備員にさう言はれた客が偶然にも政府の古物諮詢委員会の委員(笑)。この敷地、香港水上警察の跡地で警察署の建物含め政府が李嘉誠財閥に営業権のみ譲渡したが警備員はまるで李嘉誠の私有地の如く客をば叱咤とは。かつての樹木生ひ茂る小高い丘の水上警察は李嘉誠によつて無惨にも樹木は九割以上伐採され貧相な観光施設化された結果がこれ。李嘉誠財閥もひどいがそも/\公共財産をば一成金財閥に下賜の香港政府の小役人の判断にこそ誤謬あり。閑話休題。でHeritage1881に来たのは此処のワインバーで理研感光紙株式会社がユーザー對手にGXRカメラのお披露目下午茶会開催でお招きに与つたゆゑ。昨日読んでゐたカメラ雑誌で理研感光紙のパーソナルマルチメディアカンパニープレジデント(横文字は止めませう!)の湯浅氏が喩へてGRデジタルが「切れ味が鋭いナイフ」だとしたらGXシリーズは「いろいろな使ひ方ができるカメラ」と言つてゐるがアタシに言はせればGRが「切れ味が鋭いナイフ」ならGXRは台所用品でいへば「替へ刃型の万能スライサー」だらう。GXRやGRデジタルIIIなどずいぶんと触らせていたゞく。両者とも素晴らしいカメラであることは当然。リコー香港の方にとつては自社製品であるしユーザーでもやはりカルト的な方がゐて話題はカメラとレンズよりストラップやカバー、カメラをいれる小粋なケースなど周辺皮製品で盛り上がる。今晩の東アジア競技大会開会式でそれなりの混雑を尻目に久々にペニンスラホテルのバー。閉まつてゐて何事か、と思へば十二月は“Children's Afternoon Tea”がありバーの営業は午後六時から、と貼紙あり。もしかして神聖なるバーで午後、子ども對手の午後茶のイベント開催か。呆れるばかり。で七、八分待つて口開けでバーの客となる。ドライマティーニをバーテンダーが作らう、としたらミキシンググラスが所在不明……あらら。最初に躓いたがバーテンダーは女性でそれなりにキリリとしたマティーニを供され「女性だから、と偏見はいけないな」と思つたら二杯目は黒服のバーテンダーで「もう一杯、ドライなマティーニはゴードンでよろしいですね」とアタシが一杯目にゴードンを註文したのをチェックしてゐたので「なか/\できるな」と感心したらビフィーターで作らうとするので思はずカウンター越しに「あの、すんまへん、ゴードンですがな!」と声をかける破目に。なぜホテルのバーで飲むことがかうも作法が今ひとつなのかしら。読んでゐたFT紙が先週の、だつたので「今日のFT紙、ありませんか?」と尋ねると黒服はサーモンピンクの新聞紙見てもFTとはなか/\合点もせぬ上に「すみません、新聞はSCMPとヘラトリだけで」と丁寧、だがFTがバーにないのは承知で尋ねてゐるわけで数年前までならバーテンダーはさッと機転を聞かせ内線でどこからに「今日のFT紙を一部、急いで」と指示を出してゐただらう。新聞など一流のホテルなら部屋に届けるのに何部でも余計にあるのだ。もはや香港でホテルのバーに何も期待してはいけないのだらう。かつてサマセット=モームが憩ひしバーも過去のものかしら。帰宅して軽く夕食。無花果を自宅で乾燥させたのを少し熱を通してハムと一緒に。ピーマンの酢漬け。アボガドと蟹肉がはりに鶏肉のクリーム煮をオーブンで焼いて自宅版懐かしのJimmy's Kitchenなのだ。ルクセンブルグのChâteau de Schengenの白葡萄酒は三本いたゞいた最後でPinot Gris 05年。食後、録画しといたNHKのドラマ「坂の上の雲」第一話見る。「明治維新は士族による革命であつた」と。さうかしら……革命なら幕藩政治の打破に天皇は担がないだらう。薩長など外様の田舎侍による政権交替に過ぎぬ。ナレーションで「維新後の新国民の……」なんてフレーズに思はず椅子から転げ落ちる。「明治維新の前に<国民>なんてゐなかつた」ことくらひNHKの制作者は理解すべき、と思ひつゝ原作が妄想系フィクション作家の司馬遼太郎だし。NHKの歴史ドラマでも昭和50年くらゐであつたか「明治の群像」の頃はまだ日本ぢたひ昭和の大国化目指し元気な頃で同時代的だつたが平成の今に松山の貧しくも精神逞しき健全な家庭と立身出世の海軍軍人の姿を見せるNHKの涙ぐましい努力。白洲次郎といひ今回の「坂の上の雲」といひ、安倍晋三や故中川某はNHKをば左傾と罵つたがNHKつてほんと元気な国民の育成にどれだけ尽力してゐるか。
▼一週間遅れのFT紙の週末版読んでゐたら朝日新聞の社長のインタビュー記事あり世界的に新聞販売部数急減のなか朝日=日本の新聞は勿論、新聞離れやネットの影響などあれ「稚内から奄美大島まで」(沖縄は?)二千六百の販売店があり七万人の販売員がゐて「さう簡単には発行部数は減らない」と豪語。お気楽。
▼信報が米国総統小浜馬楽君の弟(異母弟)で広東省深圳在住のマーク君のインタビュー掲載。2001年からだか深圳在住のマーク君の妻は河南省出身。馬楽総統北京訪問の際に北京で僅か五分だか兄弟で対面の由。マーク君曰く「兄の馬楽が大統領に参戦までした魅力には米国人が911のテロの後遺症がが希望への転化し全世界を鼓動したものだらう」と指摘。御意。
▼亜細亜といふ市場を見つけたことではディズニー社ととどつこいどつこいの陳腐な発想であるミシュラン社の「香港•マカオ」版が第二版。食肆の評価は見るに値せぬが上海灘など営む鄧永鏘君が自らがオーナーのIsland Tangに第二版で星が一つついたことは喜ばしい、としつゝ評価されるべき中信大厦の海都海鮮酒家に星がつかぬのはどういふわけか、と揶揄。Island Tangも味覚音痴の鄧永鏘が経営では「中国會」に呆れるアタシはIsland Tangに足も向かぬが海都海鮮酒家の味はまぁそこ/\として一言でいへば慇懃無礼さは星に値しまい。

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