富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月廿六日(木)一ヶ月と三日置き、で久々の調髪。中環。マンダリンオリエンタルホテルの何年ぶりか、でチナリーバー。お隣にお坐りになつた日本人の方とちよつとお話したが某オークションに所有の絵画出展、で初の来港の由。ドライマティーニ二杯。けつこうしつかりとした作法。ホテルのロビーで一年ぶりに来港のN氏と再会。N氏今年で御年八十歳。矍鑠としたもので脱帽。でも昭和四年生まれで八十といはれると「昭和が八十のはずがない」と、どうも信じられず。これまた数ヶ月ぶりで鏞記酒家。Z嬢と来てN氏と三人で夕食。皮蛋、海蜇、例湯、蟹肉と豆苗の炒め物、馴染みの給仕が「今日はとくに美味い」といふので鵝肝、楊州炒飯。N氏、頭脳明晰、記憶も慥かで老眼要らず、服装は正統なるダンディズム、自転車でどこへでも出かけ背筋しっかり歩く姿の素敵なこと……惚れ/\。
▼大和屋の牡丹亭。まぁ京劇界で梅蘭芳以降「これぞ名女形」といふ役者が出てをらず、で大和屋が「それぢやアタシが」と出しやばつたのだらう、が而も名作の「牡丹亭」主演しちまふのも凄いし「昆劇を世界に広めた功績」で蘇州市名誉市民なのださうな。劉健威氏が上海までこの大和屋の牡丹亭を見に出かけ、観劇談書かれてゐたが崑劇の演出の大家(名前失念)曰く最初は京劇の動きなどまつたくダメだつたのが数年で完ぺきに習得した、と大和屋を褒めてゐたらしい、が。それでもやはり「鶴鳴」と賞された梅蘭芳までいかずとも息子で梅派率ゐる葆玖の声も聞いてゐる客に大和屋の歌声は如何に。それは日本人の歌ひ手が歌劇で独逸語や伊太利語で歌ふ以上に難しいもの、のはず。ところで健威兄によれば切符は売り切れ満座だつたがダフ屋がかなり出てて開場間際になつたら1,280元のチケットが減価で200元になつた由。何でも地場の実力者や関係機関(消防?)などにさまざまな渠道から無料ご招待でチケットが流れ、タダで貰つて興味なければ誰かに譲りダフ屋に流れ、の結果がこれ。また興味も浅いまゝ招待チケットで入つた若い客が芝居に飽きれば雑談し、も残念と。さもありなむ光景。
▼一昨日、澳門の審計署トップ更迭のこと綴つたが香港では審計署が私隱專員公署(Office of the Privacy Commissioner for Personal Data)の浪費ぶり指摘。わづか55名の所帯でオフィスは1.2千平米は員工一人あたり20平米余。政府基準のオフィス面積に比べ毎月HK$14萬の支出増の由。こんな役所なので専員(コミッショナー)も肩書きだけの天下り者、でその署内の送別会も公費で過去二回、01年と05年にそれぞれ二万数千ドル費やし一人あたり650〜750ドル。コミッショナーが英国へ出張すればケンブリッヂの先方が容易した宿泊施設(無料)利用せず一萬香港ドル近いホテル宿泊費。また二年間で六度、ワインテイスティングに参加も公費。私隱專員公署だからコミッショナーの公費支出も私隠とでも主張するかしら(嗤)。で実際の仕事ぶり、といへば市民からのプライバシーに関すると投訴で180日経つても未処理の案件が今年六月で33件あり一案件の処理に平均426日費やす能率の悪さ。能率が悪い、といへば何をしてゐるのか皆目不明だが高層らの報酬だけ異様に高額で生産力をば促進する部署の生産性が最も低い、と嘲笑の的。

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