富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-10-05

十月五日(月)湿度が50%台となり、とたんに目がチカ/\として鼻窩が乾き喉が痛む。晝に銅鑼湾に用事あり正午前に「まだ空いてるだらう」と雲呑麺の池記に入れば大陸からの旅行者で満席。雲呑麺が大陸価格より多少高くても香港で美味いと評判のそれを食すのはわかるところだが蠔油芥蘭なんてものまで温野菜にオイスターソースかけただけなのに結構頼む客が多いがこんなものも香港の方が美味しいのかしら……なんて店を出て考へながら歩いてゐたら美心集団の翠園の横の道でドカン!といふ地響きあり何事か、と思へばアタシが歩いてた歩道の丁度、車道との境目、アタシから1.5mの距離に空から看板が降つてきて大破。楼上にあつた診療所の看板を非熟練工どもが窓から身を乗り出し外してゐた由。それが重かつたのか(そりやさうだ、鉄骨使つてゐる)、眼下の歩道歩く歩行者の安全に竹を組むなり安全策など配慮するはずもなき大胆さだけが取り柄の彼ら、で看板が地上に落下。あたしも含め奇蹟的に誰も直撃されず。九死に一生を得る。非熟練工は窓から様子窺ひ、誰も死人も怪我人もないことわかると照れ笑ひ。路上で大破した看板の除去作業。路面の廛補も「ガウチョ〜!」で済んでしまふから凄い。警察が呼ばれることもなく(怪我人もゐないから当然なのだらう)数分後には何事もなかつたか、のやうな煩雑な銅鑼湾の昼に戻る。アタシは意外と、といふかさういふ時はさういふものなのだらうが冷静なのか冷静を無意識に装つてゐるだけなのか、アトで気がつくと事の始終を写真にすら撮らず。ライカのM6まで持つてゐた、といふのに決定的瞬間も押さへられず。慌てゝ道路の反対側から一枚だけ撮影。アトになつて後悔したが、その時は写真を撮らう、といふ気さえ微塵もなく、たゞ人生などといふのはかうした事故が起きない偶然の連続が続いてゐるだけで儚いもの、なんて考へてゐた。晩に繊維I氏の招飲を受け深水湾の香港ゴルフ倶楽部。香港では格式ある倶楽部の一つだが子どもも入れれば客もポロシャツにジーンズがOKで、従業員も「黒服経理の監視監督の不足」で無邪気。もつと慇懃であるべき「だつた」のだらうが客のカジュアルさと相関的かも。プライベートの倶楽部ゆゑ、誰がゐた彼が食してゐた、といふのはルール違反、だが香港を代表するやうな財界人で親族経営で巨額の損失計上し中共系香港会社トップ辞任の某氏など(つて誰だかすぐわかつてしまふが)、アタシなら失意で自殺するか少なくても蟄居してしまひさうだが商界の友人らと団欒の様子伺ひ、さすが大したもの、あのくらゐ商機逸した、だけの一つかしら、と驚き敬服するばかり。アタシにはあんな大胆さと勇気がない。ある面、非熟練工が看板が落下したらどうする、を気にしないのと、数百億の損失出しても昴然とする態は大胆不敵さでは似たところあり鴨。深水湾から銅鑼湾まで送つていたゞきバーSにハイボール一杯だけ独酌。カウンター越しに立待月の、といつても疾うに月は東空高く上がつてはゐるが月を愛で午後十時には帰宅。鳩山四世と恵比寿の「さいき」に食された電通佐藤尚之氏がtwitterに書かれてゐてGustavo Dudamel君が羅府フィルの音楽監督に就任し、その就任紀念のベートーヴェンの第九の演奏が十月三日の晩に聖林ボウルであり(それが何とも……)、その中継をネットでしたさうで、それを見逃したが今晩、米国西海岸時間で午前11時までオンディマンドで見られる、と知り慌てゝ、その演奏を聴く(といふより眺める)。羅府フィルの芸風はアタシは苦手。同じ加州でも桑港がアタシの好み。羅府フィルでドゥダメル君が指揮すれば第九がどうなるか、は想像に易いところで(さういふ意味ではドゥダメル君がN響で第九を指揮するとN響がどんな演奏をするか、とかの方がずつと興味深い)、けして驚きもせず第一楽章を聴き始め、驚いたのはかつてまるで希臘彫刻の青年像のやうだつたドゥダメル君のメタボぶり。楽章の終はつたところでの拍手や感性も陽気さだけが取り柄のカリフォルニアらしく驚きもせずにゐたが、第四楽章も想定内だつたが第二楽章と第三楽章はドゥダメル君らしひ「神が見えた」世界あり。むしろ羅府だからドゥダメル君のさういふ「神々の世界」に順応できるのだらう。(英語の字幕が五月蝿い)第四楽章が終はつてアンコールでの歓喜の歌で聖林ボウルに花火が打ち上がつても、これも驚かない。さういふ風土なのだ。
▼突然思ひ出したが中国の国家規模の映画「建国大業」でさういへば1940年代後半で蒋介石を取材する記者(西洋人)がライカのM型、それも正面に赤いロゴマーク、つてM6か、を持つてたぞ!どうしたつてバルナック型ライカのはずなのに。
▼『1968年』でこゝ数日、団塊の世代が気になり、団塊の世代の人たちも災難で、偶然に親と戦争の影響で終戦後に生まれてきただけなのに「団塊の世代」と一括りにされ勝手なことを言はれる。有名人で団塊の世代のリストを見ると、やはり好きなタイプより沢木耕太郎を筆頭に苦手さんの方が圧倒的に多い。好きな人は圧倒的に少ないが、
田中長徳先生筆頭に加藤和彦平野レミ細野晴臣荒俣宏、(米長邦雄に対する)中原誠根津甚八山上たつひこ鈴木宗男浅野史郎いしだあゆみ泉谷しげる沢田研二前川清井上陽水あがた森魚火野正平崔洋一間寛平松田優作……
といつた方々に対して、いち/\名前は挙げぬが十倍くらゐ苦手な人がゐるのはどうしてなのかしら。
▼九月の平均気温摂氏28.8度で観測史上最も暑い一月だつた由。酷暑の基準になる摂氏33度を越えた日が10日もあり、これも歴代最多。一月の平均最低気温26.9度も昨年の最高。
民主党の立法界議員、甘乃威君が個人事務所の女性職員に求愛し拒まれたら解雇した醜聞。昨日は妻を伴ひ身の潔白主張したが本日、民主党に対して議院辞職を伝へる。民主党では五年前に一人の区議会議員が広東省東莞での買春で公安当局に逮捕され(これは嵌められた、といはれるが)いづれにせよ脇の甘さは明らか。民主党は李銘柱など元老級の引退があり後継者不足(甘のアトも補闕選挙で候補者出すも難儀)、「反対党」といふカラー以外のものを有権者に見せられずジリ貧情態。それこそ1997年以前から党政府中央が狙つた理想的未来だつたのだが民主党以上に親中派御用政党の民建聯が支持を得られず困つたもの。

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