富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月一日(火)晴。八月は香港天文台より「酷熱警報」発令時間が307時間50分で一ヶ月の最長を記録の由。気温は二十日より昨日まで摂氏二十八度を下回ること無し。MacBook Air修理入院中。官邸の執務室にある、使ひたくもないWin機だが仕方なく使ふ。が不図もうずいぶん前から新しいWin機が段ボールに入つたまゝ放置されてゐたこと思ひ出す。アタシのWin機は送付されてきたWin機で作成されたワード文書など、いくらMac機で弄くれるとはいッても文書の体裁など変はつちまふのが面倒なときにだけ文書印刷などに使ふ程度で、もう八年も前の機種でヰンドウズ2000で動いてゐる。かなり動きも鈍いので段ボール箱開けて新しいWin機出してみるとヰンドウズXPで動く機材もサムソンの22吋の横長のモニタも実に看やすく驚くばかり。でもやつぱり性に合はず。アタシのキャノン嫌ひと一緒。早晩に銅鑼湾East Endでエール飲みZ嬢を待ち帰宅ラッシュの路線バスで九龍の紅磡に渡る。紅磡の「磡」といふ字もWin機だと出ず何処からコピーすると映りこそすれ保存できず。湾岸のHarbourfront Horizonに移転の九龍會に「夢上海」といふ食肆あり。「夢上海」だの「夜上海」だの、いかにも上海レトロで売る如何はしさ、味より雰囲気、で敬遠しさうだが、この「夢上海」は北角の雪園飯店の閉業嘆き悲しんだ唯霊先生が最近お気に入り。そこで運輸K氏と晩餐。この食肆にはすでに「唯霊先生推薦セットメニュー」あり唯霊先生もグルメ食評家がもはや「唯霊先生推薦の店」で売れる=食肆の商売繁昌といふ意味でなく「唯霊」といふ名前で商売ができるのは蔡瀾先生と一緒。蔡瀾も映画監製者が余暇で随筆書いてゐた頃、唯霊先生も投資会社の若手ながら食通の奇才であつた頃が面白く、食評で名を馳せ、食評してゐるうちはよろしいが自らの名前が商標となりその売買で商売するやうになるともはや食評など胡散臭きものになる。田中康夫ちやんの矜持はそれが違ふところ。
▼久が原のT君が平凡社コロナプックス『作家の食卓』読んでたら佐伯誠氏の記述で「吉田健一について石川淳が、たつた一つないのはエロスだ、と居合抜きの一閃のやうなことをいつた」とあつたさうで筆者(佐伯氏)はこれに疑義を呈してゐるらしい。がT君は、そしてこの話を聞いたアタシも夷齋先生の卓見に深く感心した次第。健一さんがとにかく酒肴以外何ら興味を示さないのが、いくら左党とはいへ、そりやあんまりなんぢやないか。少しくらい艶つぽい、あるいは野暮な遊び話があつても良ささうだが兎に角、飲み続けるが不自然に思へるのは正直なところ。
▼その久が原のT君が今年白壽の伊太利の大プリマ、マグダ=オリヴェロが、つい最近お得意のザンドナイ作曲“Francesca da Rimini”を歌ふ画像を教へてくれる。九十九歳てのはマリア=カラスより十四歳上。もう、たゞ口をあんぐり、で聴かせていたゞく。大成駒が存命で白壽に八重垣姫のクドキを演じたら……とT君。そのYouTubeの画像見ようとセッティングしたばかりのWin機で試したら初回なので設定が必要です、と。香港なら香港の「国フィルタ」がかゝる由。中国とかにするとかなり制限がある、といふことか。中国と別に香港があるだけでも幸ひかしら。

富柏村サイト www.fookpaktsuen.com
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/

作家の食卓 (コロナ・ブックス)

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