富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-08-30

八月三十日(日)連日、今日は降るか、晩には降るか、と近づく雲眺め思ふが下雨なく今朝も雷鳴まで聞こえたが雨は無し。Gastro-enteritisの症状あり近隣のC医師の診療を請ふ。昼に中華蕎麦茹で冷やし中華食す。もう三十年以上前だが筒井康隆だの山下洋輔赤塚不二夫だの全日本冷やし中華連盟だつたか旗揚げした慥かタモリが雑誌『面白半分』で記事書くべきところ執筆間に合はず普通なら頁は何らかの穴埋めされるべきところ白紙の数頁があつたところが『面白半分』誌らしい可笑しさであつたこと、ふと思ひ出す。午後Z嬢と尖沙咀。太空館で映画『トウキョウソナタ』看る。家族崩潰モノはよくよく考へれば歌舞伎などいくらでもあつたのだがテレビドラマの『岸辺のアルバム』がやはり印象深い。普通の平和さうな家族でもいくらでもいとも簡単に家族は崩潰するものなのか、うつろひがあるものなのか、と思つたが『トウキョウソナタ』で象徴的なのはリストラに遭ふ夫、倦怠の妻、アイデンティティの確立を米国の正義と愛国心に委ねる兄……さうした落胆する家族の全ての希望が「偶然に」音楽の才能秀でた次男坊に収斂されること。少子化のなか幼い子も肩の荷は重からう。妻が襲はれる強盗だの夫の交通事故の場面は余計すぎ。次いで旺角のUA朗豪坊映画館で映画『アヒルと鴨のコインロッカー』看る。話のどんでん返しは展開がやゝこしく日本語を解さず字幕追つてゐたら容易でなからう。犯人探しの偶然もちよつと難あり。この映画でボブ=ディランの「風に吹かれて」が象徴的に使はれてゐるが昨晩、偶然に井上陽水の「LIFE」なるNHKの特番でもこのディランの神の声が語られ、偶然にも今朝、iTuneで聴き返してゐたので映画でこれがかゝりちよつと驚く。「自民党の歴史的敗北」をNHKテレビの開票速報で見ながら、と思ひジャスコで鮨の握りテイクアウトで帰宅。午後八時半(日本時間午後九時半)でテレビつけると民主党が二百数十議席獲得で自民党が四十幾つ。中曽根大勲位ナベツネ君の言つてゐた民主と自民の議席差百五十以上は必至。民主党が三百議席確実で下手するとこの議席差は二百近いの鴨。あらら……。公明党の不信。公明党には自民党政権での与党化しなければならなかつた何らかの理由もあるわけだが創価学会信者の中でも(アタシの知るところでも)この自公路線への不信感少なからず。小選挙区単独で立候補強ひられた公明党の幹部らは辛いところ。いづれにせよ公明党の協調なければ(築地のH君の指摘通り)自民党政権森喜朗君くらゐで終はつてゐたわけで、今回、自民党敗北と一緒に連帯責任なのだらう。それにしても公明党の太田代表の権現的な存在感や冬柴前幹事長の人柄とか思ふと「公明党であることで非公明の票を集められない」ことに絶対的限界があからさま。アタシは子どもの頃から非常に保守的な風土の中で反自民、反巨人、反紅白で社共、阪神コント55号の紅白をぶつとばせ!で大人になる中で紅白の威厳も凋落し阪神も優勝を何度かして自民党だけが肥後の若殿のご乱心の一ッ時除き半世紀以上崩れなかつたのが自民党。その歴史的敗北を目の当たりにして、それぢや自民党崩潰が嬉しいか、といふと複雑な気分。戦前の独逸でもワイマール体制の崩潰とか、日本では対米戦争開始での知識人の間での近代の超克観・感であるとか終戦での「新しい日本」の始まりとか、改革へ向けてのなにか祝祭的な開放感に包まれる社会が、実は悲劇的な結末への序章であつたりする(終戦での「新しい日本」は米国庇護の下、奇蹟的なやうにその体制がずつと続いてはゐるが)。残り四十議席くらゐまで開票速報観たところでさつさと寝る。

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富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/

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