富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-08-23

陰暦七月初三。処暑。Nokton 50/1.1なんてレンズをば東京で調達し香港に戻り今日で十二日目だがNokton 50/1.1はマカオでM6につけて試し撮りしたものゝフィルムの現像は出したまゝで今日までこのレンズをR-D1sで使つてみる、といふことに気づかず。R-D1sデジタルカメラなのだから撮つたその場で写り具合を確認出来るのに何故かそれに気づかず十二日。カメラ雜誌でオリンパスのペン型のデジカメ発売され好評で、ペン型なのにLMでもNFでも銘玉が使へる構造に「へぇ、このカメラがあればNokton 50/1.1も使つてみれるのにGRデジタルぢやさうもいかんしなぁ」なんて思つてをり、なぜR-D1sで早速写してみることに気づかなかつたのかしら。R-D1sがあまりにクラシックなレンジファインダー機で水晶モニタも隠したまゝで、これがデジタルであることすら忘れてゐたやうな気がする。チヨートク先生的には「それは良いこと」と考へるべきだらう。カメラは「外観こそ」大切だがNokton 50/1.1を装着したR-D1sが予想以上に似合ふので驚き。「さつちやん、ごめんよ、せつかくアンタに縫つてあげよう、あげよう、つて思つてるうちに処暑になつちまつたよ」と伯母さんの拵へた浴衣を見た沙知子が「あら、母さん見て、伯母さんの縫つてくれたこの浴衣、来年の大川の花火が待ち遠しいわ」なんて門前仲町あたりから聞こえてきさうな感じで、このNokton 50/1.1を装着したR-D1sは「来夏の六月四日、天安門事件追悼キャンドルサービスが撮れるな」と思はせる組み合はせ。午後まで朗宅に籠り約束を疾うに過ぎた仕立物の針仕事済ます。午後遅く整体。尖沙咀。Z嬢と梨花園韓国料理で参鶏湯。Charlie Brown Cafeで珈琲飲み三更に昨晩に續き太空館。映画『大阪物語』見る。大阪物語といふとアタシらの世代には吉村公三郎監督のそれ。近江屋の番頭・忠三郎が雷蔵、忠三郎と恋仲になる近江屋の娘役に香川京子、近江屋の主人は鴈治郎で妻が浪花千栄子、跡取り息子が林成年、アンチヒーロー役で鐙屋の伜・市之助が勝新で、その母親が三益愛子、遊女役で玉緒、それを固める脇が東野英治郎山茶花究、十朱久雄……とぞく/\するほど役者揃ひ、だが今晩見るのは市川凖監督の1999年の『大阪物語』の方。澤田研二ファンのアタシはジュリーの芝居が見られないのが香港にゐてとても残念、でこの映画も田中裕子も出てをり映画祭とかでかゝらないか、と思ひ早十年。今回、夏の映画祭で「日本巨匠J&K」特集、つてこれぢや何だかわからないが市川「凖」と「崑」の特集で「大阪物語」掛かる。澤田研二と田中裕子演じる夫婦漫才はる美&りゆう介、マネージャー(辻中達也)にりゆう介が言はれる一言「役に立たんことしかしまへんなぁ……」に身につまされる思ひ。二人のよく出来た娘・若菜(池脇千鶴)が蒸発した父探し。中学校で教師殴り街にある少年(南野公助)と大阪ぢゆうを歩き、自転車で回り父と縁のある人たち尋ねて歩くのだが二人もだん/\薄汚くなつてきて、そこがどこか「このまゝ破局か」と近松の心中物を思はせる。がハッピーエンドぢやないがぎり/\のところで救つてみせるのが(好き嫌ひは別として)市川凖の世界。ま、どんなしよーもないオトーチャンでも面倒みてやつてや。そんなオトーチャンでもゐてくれるんが仕合せなんやで。

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富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/

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