富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-06-03

六月三日(水)多雲惨澹。午前、風強く大雨となる。蘋果日報で李怡さんの蘋論を読んだら拙譯の朝日新聞にも李怡さんが書かれた文章にもあつた「記憶反抗遺忘的歴史」が“引用”としてあり。昆徳拉の言葉の由。昆徳拉はクンデラチェコの亡命作家のMilan Kunderaの“La lutte de l'homme contre le pouvoir est la lutte de la mémoire contre l'oubli.”(人間の権力に対する戦いは、忘却に対する記憶の戦いである)の漢譯。晩にハクスリー『すばらしい新世界』続き読む。この未来社会がフォード暦採用はこれも結果論だがさすがハクスリー。米国自動車産業の同じビッグ3の中でもGM暦ぢゃ2009年で終はッちまふしクライスラー暦ではフォード暦よかより脆つかしい。
▼信報の書き手の中で主筆の練乙錚はあまりアタシの好みに非ず。だが今日の香島論叢の「我不「反思」故我在」(我「反思」せぬ故に我在り)は興味深く読む。「平反」も日本語に譯すのが難しいが「反思」は更に。「過去を顧みる」ともチト違ふ。で練乙錚が敢へて説くは、
李鵬が死ぬのを待てば民主化運動の活動家の名誉回復がされる、といふのは楽観的過ぎる。中華人民共和国成立から最初の三十年の重大な過失は殆どが党内の路線闘争が元凶で毛澤東の死後に歴史的評価の見直しもされた、が改革開放後の三十年で中国は党・政・軍・商の複合体となり党幹部子弟が牛耳り、六四の市民虐殺に何らかの形で加担した元老らの子弟子女が党や軍、それに与する大企業の中枢にあり絶大な権力と巨額の利益を得てゐる思えば「解放後三十年」は解放前三十年の路線闘争ほどさう簡単に見直しは能はぬはず。明日ヴィクトリア公園で六四の死者追悼をする友よ「這個二十年之後,可能還有不止一個二十年」と心の準備をしなければならぬのだ。
と練乙錚。だがその追悼集会の人々のなかにぽつんと練乙錚自身がゐるのであらう。
アイルランドの名伯楽 Vincent O'Brien 氏逝去。享年92歳。1970年のニジンスキー馬の活躍どころかアタシが香港で競馬を始めた頃にはすでに引退されアタシにはO'Brienといふ姓を聴くとどうしてもディラントーマスマーラーのAidan O'Brien師になる。

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