富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-05-03

五月三日(日)憲法記念日。快晴。朝九時にランタオ島の東涌。ランニングクラブの計六名で東涌から大澳まで約12kmをゆつくり走る。まづ東涌の新都市から旧集落に入り、途中、空港を離陸する飛行機を眺めたり、木陰は涼しく爽快なるランニング日和。昼にちやうど大澳に着く。本当は16km先の石壁まで、といふ案もあつたが「もう充分に走つたよね」と大澳の蓮香酒家に食す。麦酒ガブ飲みしつゝ飾らぬ料理に舌鼓打つ。今日も偶然だが豚の揚物がこれが美味。一時間バスに揺られ爆睡で東涌に戻り解散。夕方、按摩して帰宅。RCサクセションを聴きソロの「夢助」を聴き、Yosui Tributeで清志郎の歌ふ最高の「少年時代」を聴きYoutubeで生前のステージを観て……一個人の死を越えこんな歌ひ手はもう不世出だ、と痛感する。
▼香港で惜しまれつゝ休館した湾仔の映画館・影藝戲院が二年半ぶりに九龍湾の淘大商場に再開の由。かつて『木村家の人びと』が『搶錢家族(Yen Family)』なるタイトルでこの映画館で評判得てロングラン。湾仔の新鴻基中心はこの映画館撤退の後は未だ店子も入らずじまひ。
朝日新聞憲法記念日にあたり伊勢崎賢治氏(東外大教授)の護憲論あり。各地の紛争処理や武装解除に従事し阿富汗斯担でも日本政府特別顧問として武装解除指揮した氏は百歩譲つても国際貢献や平和維持活動とは異なるソマリア沖への自衛隊派遣を「国益のため」として違憲とし何故このソマリア沖に反対が小さかつたのか?と護憲派も含め厳しく叱責。自衛隊には寧ろ丸腰でゝも軍事監視団をさせるとか考へるべき、として憲法九条が議論の的となるがこの九条はあくまで方法論であり、それは憲法「全文」の理想を実現するためでせう、と。加藤周一氏も逝つたが「九条の会」など従来の護憲運動とはずいぶん芸風の違ふ「勇ましい」護憲論が新鮮。英国に「動物愛護のためなら殺人も辞さぬ」動物保護団体あり目からウロコだつたが「平和憲法の護憲のためには争ひも辞さない」……とまではいかないか。「秋の嵐」だつた見津毅君が生きてゐたらワーキングプアの問題であるとか、かうした積極的な護憲など面白い動きをしてゐたかしら。朝日新聞といへば数日前に劇作家の平田オリザ氏が昨今「劇場型政治」といふ言葉が悪い意味で使はれてゐるが、その主役となる首相たち(ともはや我が国の首相は十把一絡げで、さう呼ぶしかないが)についてオリザさん曰く現実に彼らの問題は良い芝居が出来ないことであり政治家たるもの本来はどんな政治を演出してみせるか、の最高の役者であるべき、と。だからさういふ理想的な政治家の出現に期待する、とおつしやるが問題はやはり「革命を経てゐない国家」では、さうした優秀な政治家でも一度び出現するとファッショ的とまではいかずともポピュリズムの情況になることの怖さ……小泉三世レベルであの「小泉さーん!」ブームだつたのだから、それが怖い。

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