富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-03-26

三月廿六日(木)もう十年以上目覚ましと寝しなの名曲に、と愛用のBose社のWave RadioがCDのデータ読みとらぬ不調あり新蒲崗のBose社客戸服務中心にようやく持参。さすがBose社やなぁ、と感心はこの服務中心の洗練された内装と、故障修理の待ち客のソファはわずか四席で更に待ち客一人もをらず、は確かな品質の証左か。アタシが銀座くのやの大きな風呂敷を広げるのを接客の職員は些か驚いて眺める。風呂敷が解かれ自社製品が現れるのを少しは楽しんでもらへたかしら。接客の職員検査費と恐らくモータードライヴの交換が必要、でHK$1,000はかゝらぬだらう、と真摯なる職員の弁。但しtrade-inなら新品(Wave Music System)は定価HK$4,380を算盤弾き「この値段でようがす」と悪魔の囁き。苦慮の末「もう少し、この愛機を使つてみませう」と言い切つてみせたアタシは偉い。それにしてもWave Music Systemは中国内地なら5,900元で日本なら更にお高く74,970円、と思ふと香港はやはり買物天国。折角なか/\ふだん来る機会のない新蒲崗だから得龍だとかどこか美味い物も食ひたいが新蒲崗まで来るのに地下鉄に乗れば良かつたものを106系統のバスに乗つちまつたもんだから紅磡から土瓜湾抜けるのに時間要して新蒲崗の昼飯は次回にお預け。帰りは新蒲崗より地下鉄に乗ろうと鑽石山に向へば、かつて鑽石山のドヤ住宅群ももう撤収され10年近いのかしら、その地はすでに林となるほど樹木育ち鬱蒼とした光景。その中に一棟だけ昔を偲ぶ住宅あり。(以下、露伴先生風に……)金鐘のGreatでTriple O'sのハンバーガー食しAMC映畫館でヲリバー=ストーン監督の“W.”見れば、洋畫は日本上映での邦題のセンスの無さに何時も呆るゝが此の“W.”は主人公の布殊(ブッシュ)に掛けて「殊不簡單」とてみせるは見事、前半は大統領とて白宮での日々と若い頃のご亂癡氣を絡め話は展開、イラク征伐で勝利も束の間、其の後の泥沼化で白宮内部で側近の高官らと、イラクの兵器備蓄を斷定したるの、してないの、と揉め911以來の追ひ風も翳り再選されても暗澹たる時期、といふ處で話は終はる。2004年の再選からは一切觸れず、は本來であれば一期でブッシュは終はつてゐた、と言ひ鯛か、ヲリバー=ストーンゆゑ此の小ブッシュの扱ひ方は明らかなれど、チェイニー副大統領が單純なブッシュ以上に如何にワルか、を描いてみせ、豫想以上に面白きは父ブッシュの此の愚息に對せる危懼と憂慮を大きく扱かつた事か。又蕁麻疹ひどく何時もなら朝で退くのが今日は夕方になつてもひどくC醫師の診療所に寄り藥の處方受ける。ジャスコ太古店の山頭火にラーメン食す。太古城シティプラザの映畫館で舩橋淳監督の『谷中暮色』見れば舩橋監督來港で上演前に挨拶も英語流暢はさすが赤門の?養學部表象文化論分科卒で紐育の視覺藝術學院にて映畫制作修養の由、谷中を舞臺にドキュメンタリータッチで谷中の市井の生活を描きたい、と氣持ちはわかるが如何せむ、記號論的に「意味の持たせ過ぎ」が見てゐて食傷氣味、露伴先生の「五重塔」の物語をmotifに語るも、そりや露伴知らずの觀衆に「五重塔」の筋書をばわからせやうと劇中劇入れたるは良いが劇中劇の芝居下手目立ち、其れを敢へて當時の登場人物たる若者に演じせしめたる事で時代のギャップの演出と言はれゝば其れ迄なれど、更に主人公の一人たる娘が谷中フィルム協會の一員とて昭和32年に消失の五重塔の、其の炎上寫したるフィルムがないか、と谷中を熱心に探し歩くもそりや結構、なれど郷土史家の老人に「で、幸田露伴の『五重塔』っていう小説はどんな話なのですか?」と尋ねたには唖然。此の谷中天王寺五重塔といへば露伴露伴先生の「五重塔」なのだから露伴の小説は讀んでゐて當然だらうし讀まづして從事してゐれば似非も似非、或いは所謂「かまとゝ」で頑固老人の口を開かせる爲に敢へて「五重塔」の筋を語らせたとすれば、此の娘に近づく「幸せになる石」をば老人に騙して賣るペテン師よか性惡ぢやなからうか。音樂もうるさ過ぎ、と一言申し述べたく、筋を「削いで削いで」の研鑽は赤門の大先輩山田洋次に学ぶべき、そのへんの若者に映像上で魅力感じさせたければ北野武が上手、老人に語らせるドキュメンタリーなら故・土本典昭原一男あたりが大切。
▼今晩の水戸芸術館小菅優嬢が水戸室内管絃楽団のアンサンブルでモーツァルトピアノ三重奏曲ハ長調(K.548)、ブラームスのピアノ四重奏曲三番とドヴォルジャークピアノ五重奏曲イ長調作品88ださうで母が聴かれる。芸術館の館長たる秀和先生も大きな拍手をいつまでもしてをられたさうでお元気。母は先生が脇を通られた時につい会釈してしまつた、と。一月にはこの楽団の定演で小澤征爾指揮で小菅嬢がメンデルスゾーン生誕200年でを紀念してメンデルスゾーンのピアノ協奏曲一番ト短調と「夏の夜の夢」の由。水戸も捨てたもんぢやなし。

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