富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-03-09

三月九日(月)同雲惨澹。晩遅くまで頗る多忙。昨晩に続きブルックナーの9番をカラヤン&維納で聴く。今晩は第三楽章まで二度繰り返して。なるほど「近代」を感ずる。神ともはや対峙して語らうといふ立場。ラズベリーのリキュールをウオトカで割り二杯で眠りに陥る。
HSBCお前もか、で株価は20年来の大幅な下落は23.4%のHK$10.5で底値がHK$33ださうな。「HSBC株をもつてゐなくて良かつた」と思ふしかなし。蘋果日報(翌朝)にHSBCのロゴが蟹に化けたは多少説明要するだらうが、これは蟹の横這ひに非ず、大閘蟹(上海蟹)は売られる際は団鬼六的に縄で縛られ身動きとれず、で金融、不動産資産など所謂「塩漬け」がこれ。
文藝春秋の「諸君」が休刊の由。朝、暫く、ただ「諸君が休刊」と頭の中で繰り返すほど驚き。これだけ保守化した世相のやうで、ネット右翼蔓延るやうで、でも保守系といふか「諸君」は休刊。大学生の頃に遊びに行くと郵便受けに世界日報入つてゐた友人はちやんと「諸君」を読んでゐたもの。朝日新聞保守系総合誌に対抗して出した「論座」は多少論点ボケで「もたないだらう」と思つたが天下の文春だから、まさか「諸君」が休刊とは。かつては文藝春秋より真つ当な中央公論があり大学では岩波書店の『世界』が当たり前で、『潮』も今ほど露骨なスポンサーの色が出てをらず総合誌の華やかな時代。諸君も共産主義と左翼といふ敵を失ひたりし21世紀、まさかポスト共産主義で現れたヴァーチャルなテロリストを敵にも出来ず。次はつひに岩波書店の『世界』かしら。
朝日新聞でカイロから平田篤央記者が「アラブのハルキ・ムラカミ論」読む。アラブ圏の新聞アルハヤトに掲載されたアブド=ワジン氏(レバノンの作家)による村上春樹への論評。平田記者の要約によれば、ワジン氏は、アラブ文化人として村上春樹エルサレム賞拒絶を願つたが受賞したのは「何度もノーベル賞候補になっているこの作家(村上)は、イスラエルが世界的文学賞への通り道だということをよく知っている」と強烈に指摘しつつ、村上春樹は実はイスラエルでの人気よりアラブでよく愛読される作家であり、寧ろアラブ連盟がなぜ世界の優れた作家に賞を贈らないのか、と提言する。
かりに今回の小さな過ちを許さないとしても、我々は村上春樹を愛し、読み続けるだろう。彼だって、誰もが知っている目的のためにちょとした間違いを犯したことはわかっている。アラブがこの偉大な作家に「免罪符」に当たるような賞を与えることを望みたい。
と語る。一理あり。これに対して朝日新聞は社会面で文藝春秋4月号に連載される村上春樹氏のインタビューを記事で紹介。
▼先頃、基本法23条に拠る国家安全維持法立法化可決のマカオ。早速?香港からこでこの立法化に反対表明の民主派議員、運動家や大学教授らまで入澳拒否。香港では立法化すら見送られたまゝ、でマカオではさつそく効力発揮とは一国両制の礎すら危ふし、と憂ひの声あり。もと/\この立法化にアタシは反対だが敢へてマカオ統治者の立場で「スマートに」なら立法化こそすれど実用せず形骸化させるべき。それをかうも容易く実用とは……呆れて言葉もなし。……なんて言つてゐるとアタシまで入澳拒否かしら。いづれにせよマカオのこの「順法」に香港では「やつぱり反23条」気分高まるばかり。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/