富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-01-13

一月十三日(火)朝一つ外で打合せ済ませ湾仔で鍼とエレキ治療。まだ腰は完治せず。銅鑼湾でお仕立のYシャツと開襟シャツ受領。綿の開襟シャツの出来も良く「麻はあるの?」と尋ねれば多くの生地並ぶ中で「今どきリネンはもう白はこれ一つだけ」と見せられる。時代はひどく変りたり。跑馬地のWatson'sで葡萄酒数本購入。この店のR君なる店員が酒の勧め上手。何か選んでゐると「こつちの方が」と勧める酒は多少、値が張るが「飲んでみたい」と思はせ、しかも棚にない酒を店の隅の方から取り出して「これはもう在庫稀で今後も入荷予定なしの某銘柄の何年物」とやられる。今日もつい「RPで98ポイント、これは飲んでおきたい。もうすぐ春節だし」につい/\乗つてしまふ。晩に先日の宴会料理で貰つてきた鶏を使つて菌類沢山のスープ料理。名前失念の葡萄牙の赤葡萄酒飲む。
▼陶傑氏が蘋果日報の随筆で「梅毒語文」と題して語る。香港特区成立後十年の中英文の水準低下は最近また問題になつてゐる学校での教学言語(中国語か英語か)の問題と直接関係はないはずなのだが、としつゝも、例へば教育局のこの教学言語に関する新聞発表も「教育局建議,微調中學學語言框架」といふ一文あり。この「微調中學學語言框架」といふ言葉を、市街で屑拾ひの老婆、牛池灣から西湾に走るミニバスの運転手や建築現場の工事人に聞かせて、彼らがわかるかしら、と。僅か十個の漢文に2つも英語からの「強制翻訳」の言葉あり。一つ目はfine-tuningの訳であらう「微調」。二つ目がframework意味する「框架」。前者の 「微調」といふ言葉は中文になく、これは「推翻 。鄧小平が1977年に復活し毛沢東時代の人民公社での「吃大鍋飯」の制度改め個体戸による商売を認め1949年以前の資本主義市場経済を回復した際、中国政府は「微調」とそれを呼ばす「改革」と呼ぶ。「微調」は大衆を馬鹿にした言葉で、教学言語については「彈性」だの「僵化」だのと白黒はつきりとせぬ政策の反復。「學語言框架」の框架はframeworkの直訳。中国人にとつては古代に犯罪人の枷(かせ)にした木製の刑罰具すら想像させよう、と。かうした言葉の汚染は中国にとつて五四運動以来の近代化の中での梅毒のやうなもの。国宝の女優・章子怡カリブ海の浜辺で西洋人の男友から「咬股推油的按摩」されようと致し方あるまい、と。
NHKのNW9、これしか見られないのでヤジもこの番組に限るが、キャスターの口舌の悪さも目を覆ふほど。男性キャスターが国会での補正予算案のニュースで「賛成多数」を二度も!「算数多数」と言ひ違へれば女性キャスターが呼応するかのやうに「第二次ホツセイ予算」と間違へる。もはや芸風。殺人事件の報道では「警察が事件の全容を明らかにしました」と事件を語り、裁判の冒頭陳述で検察は被告が「女性とつきあつたことが全くなく、(女性とつきあふ)そのための努力はしてこなかつたこと」「被害者を労る気持ちは全くなかつた」もので「被害者の家族はみんな(加害者の)死刑を望んでゐる」と紹介する。容疑者が殺害を認める供述をしてゐるとはいへ警察発表に則り事件を語つてしまふことも怖ければ、検察の事件に至る経緯を語るには限度を超えた「被告は女性とつきあつたことがなく、その努力もせず、さういつた欲求が……」といふ物語もあまりに言葉が踊り、怖い。

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