富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月十二日(金)昨日までの秋空が今日はすつかり曇り空。広州郊外の某所で終日ご会合で末席を汚す。昏時に広州市街に戻る幹線道路は渋滞で霧なのか大気汚染なのか視界まで朦朧。広州市街に入つてもかつてのバンコクのやうな渋滞だが「今日はこれでも市街に入れたのだから金曜晩にしたらまだマシ」と同行の方。晩に天河は体育東路に面した広州酒家(天河店)と同じ大廈にある采苑酒家で夕食会。風邪はほとんど治癒し咳もだいぶ収まつたが体調が今二つでぜんぜん食欲なし。ここ数日、時々左下腹部に周期的な痛みあり。陛下ばかりか皇太子殿下も心労で十二指腸に人さし指先の大きさのポリープがあつた由。ホテルに送られ普通なら「それぢやあと一杯」と思ふのだらうが胃腸の痛みありホテル近くのPharmacyで征露丸購ふ。小雨。重い雲の絶え間にほんの瞬間、満月の月を愛でる。涼茶屋に廿四味茶飲みホテルに戻り臥床。
▼十一月五日のAndsnesの香港でのピアノ独奏会で空席が目立つた事をアタシも「ユンディ=リとランラン以外はピアニストに非ず」の香港だから今晩も客の入りは五分程度、と当日綴つてゐるが信報でこの不入りを麥華嵩氏が「もしこの演奏会が倫敦や紐育でならすぐにチケット売り切れ」と書いたことについて三日の(つてアタシも何日前の新聞を読んでゐることか)信報で紀庸なる書き手がこの「倫敦や紐育では」の常套句に言及。実際に、と紀庸氏は来年2月に紐育のカーネギーホールでAndsnesがチェロのTelzlaffとする演奏会のチケットはすでに売り出されてゐるが最も廉価の席がやうやく8割埋まつてゐる程度で、倫敦でも紐育でも、それがアンスネスばかりかシフでもツィメルマンでもポリーニでも演奏会で空席はあるのであり、また満席といつてもカーネギーなら二千八百人収容のStern Auditoriumから六百人のZankel Hallまであるしアンスネスも香港での演奏会に先立つ東京だつて王子ホールは三百人サイズ。それに対して香港が香港文化中心のコンサートホールでは空席が出ても致し方あるまい、と。香港の音楽文化の貧困さを嘆くのは易しいし西九龍の開発計画の発送の乏しさも辛いところだが、客観的な理解ないまゝに「倫敦や紐育でなら」と言ふのは安易、と。御意。

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