富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-10-20

十月廿日(月)快晴。新界に出向く用あり通りがかりで香港中文大学の文物館にて「澄懷古今:莫家三代珍藏」参観。香港開闢で英国洋行(貿易商)の地場「買辧」として華人商人の中で突出した莫仕揚(1820〜1879)の一族の当代家主に至る中国美術品の蒐集を展示。実に落ち着いた趣味への姿勢が貫かれてをり見事。莫家の洋館豪邸は現在のConduit Rdの聯邦花園。
▼昨晩だつたかNHKのニュースで「作家の北杜夫さんが……」と流れ「亡くなつた?」と思ッたら松本市の山と自然博物館で開催中の「どくとるマンバウ昆虫展」の会場を訪れた、と(笑)。もう八旬。若い頃にはベストセラー多し。もう四半世紀も前から、一旦売れてからは躁鬱をネタにエッセイを書く以外は遠藤周作佐藤愛子らとテレビの鼎談番組「素晴らしき仲間」だつたかで軽井沢の誰だかの別荘で楽しく可笑しく語り合ふ姿を見つゝ、当時すでに、いつたい何をしてゐるの?といふ感じあり。これほど幸せな人生も他にはあるまひ。
珠江デルタでの製造業の連鎖倒産の兆し。香港工業総会の主席曰く珠江デルタに進出する香港資本の企業7万社のうち四分の一が来年春節旧正月)前に廃業になるだらう、と。世界同時金融不況の所為、とするが、かうした広東省に進出の香港企業、製造業と言いつゝオーナー社長といへば本業はさて置き社長室には株価などモニタがづらりと並び投資ビジネスこそお盛んな方少なからず。で得意の対米輸出が冷え込み減益で投資資産も激減では資金繰りに行き詰まり倒産も必然か。香港の中資企業の象徴たる中信泰富(CITIC)が社主自ら急きょ会見でHK$155億(株価総額の1/2で同社の利益の1.5年分)の損益を発表。投資担当の重役二名を解雇(年収数億円プレーヤーの退場は当然だらうが)。中国のGDP成長率の今年第三期は9%と、11四半期ぶりだかで10%割り込む。9%は他国からすれば羨望の的だが経済成長続けることが安定の必須たる中国にとつて8%下回れば情勢不安確実。マカオマカオでラスベガス資本のカジノ Sands が賭場拡張にあたり銀行団から受ける予定であつたUS$53億の融資計画を取り消し。折からの金融恐慌で先行き不透明感もあるがマカオぢたい中国からの賭場客減で月毎のカジノ収益が(金融恐慌前の)先月、前年同期比3.4%減、前月(8月)比28%減と三年ぶりに減益の由。コタイのあの埋立地のカジノ群が廃虚とならぬやう祈るばかり。
木挽町歌舞伎座建て替へ。歌舞伎座「さよなら公演」と銘打ち16ヶ月!おい/\そこまで引つ張るのかい?で再来年4月で閉場。当初は今年8月で閉場の予定が延びて来年3月一杯と言つてゐたのが、これ。かくなる延引の理由は資金繰りゆゑと専らの噂。いづれにせよ永山帝ご崩御で今さら建て替へと新歌舞伎座建立を急ぐ必要もなし。それにしても今月は八重垣姫役は他に立女形不在でノーチョイスで大和屋なのか、で三千歳役はもう菊之助。浅草平成中村座中村屋の戸無瀬。女形にかつての三代目時蔵だの大成駒だの格を期待しちやいけないのかもしれないが。来月こそ顔見世でそれなりに豪華だが十二月の歌舞伎座百二十年と銘打つた興業がこれぢや年の瀬もパッとせず(昨年のこちらのはうがマダ、人気役者揃つて師走気分かしら)。

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