富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-09-10

九月十日(水)晴。晩に久々に陋宅にて北角市場の嘉美鶏で親子丼を食す。
▼タイの首相、首相就任後にテレビ料理番組出演で5千バーツ(約1.6万円)受領につきタイ憲法裁は「雇用に当たる」と認定し閣僚の兼業禁止規定する憲法に違反の判決で首相失職。この憲法裁がいくらタクシン政権崩壊の元凶となつた軍クーデター後に軍指導による暫定政権で任命された裁判官多く反タクシン的な色彩ありといへど先月タクシンに「民主主義への国へ」と英国亡命させただけの徹底した司法の正義。ところで先日までタイの政治紛争、まるでバンコク市中が暴力沙汰のやうに報じた日本のマスコミは、この料理番組出演の5千バーツで首相失職といふ平和裡の動きに対して、当時の煽動過剰報道の誤謬をどう謝罪するのかしら(日本の馬鹿なマスコミにそんな良心などないだらうが)。
▼連日、張五常教授のことばかり綴つてゐるが、昨日の信報に五常教授が「最近、北京五輪のことばかり書いてゐたので」と「朝鮮必放説」と題し北朝鮮の経済成長について語る。五常教授曰く、北朝鮮にとつて開放改革は容易、と(将軍様の健康状態についてはこの論では考慮してをらず)。五常教授、大胆にも、北朝鮮は国民の生活が困窮し自由も制限されと言はれるが金正日指導力は確固たるもので(評価は別として、だらうが)都市の清潔さや秩序、金日成・正日父子への信望など見れば、中国が(一党独裁文革で疲弊した体制から)一気に経済改革を実施し経済成長を遂げたやうに「秩序のある国家は経済改革にも有利である」と指摘。さすが智利のピノチェト政権に加担したフリードマン先生の直弟子、とこの五常教授の大胆な、言ひ換へれば非常識とすらとれる発言には驚くばかり。だがこれを「馬鹿/\しひ」と言ひ捨てられぬのは、日本もさういふ意味では明治の近代国家化も戦後の経済成長も「清潔さと秩序」ではこの説に該当するだらう。最近つとに神がかりな五常教授のこの言を正確に言ひ換へれば、要するに「集団主義国家は国家主導による経済改革が容易である」こと。さう言はない、言へない?、で北朝鮮を逆説的に評価してみせるところが五常先生の奇才、ある意味、変人ぶりなのかしら。

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