八月廿九日(金)快晴。酷暑。湾仔は金紫荊広場に寄す。大陸からの田舎漢観光客多し。香港返還記念の「金紫荊」モニュメント聳へる観光スポットながら当然の如く欧米人も日本人も韓国人もをらず大陸客ばかり。中国政府より香港返還祝し贈られたる(正直言つてデザイン的にはイケてない、怪しげな新興宗教の御神体の如き)記念碑こそ大陸客にとつては香港返還の象徴、此処で写真撮影することは香港観光記念の手形の如し。中国が香港の宗主であることの体感作業。観光写真屋がかつて1枚HK$10であつたものが人民元高でちやつかり人民幣10元。早晩に中環。カラーシックス現像店で写真受け取り。FCCのラウンジ。あまりに蒸してウオトカのライム曹達割一飲で気を取り直し白葡萄酒(Batasiolo Gavi Granee DOCG 06年)飲みつゝパスタ(ブカトーニ)でマッシュルームと大蒜のオリーブ油合へ。期待以上に美味い。赤葡萄酒(Gramore Sensi Sangiovese 04年)飲んで市大会堂。江蘇省揚劇団の公演「百歳掛帥」。案内の筋書き読み京劇では当り演目の「楊門女将」と知り、それの改編か、と思つて強気で字幕も見られぬ一列目中央。楊家の余太君を演じる徐秀芳なる女優に華あり。穆桂英役の李霞の歌唱の良さ。アタシは初めての揚劇(江蘇省揚州)は中国劇の中でも歌唱の立派さと音楽の洗練ぶりではまさに歌劇。たゞ容姿端端麗どころかせめて多少見た目秀でた者、皆無。舞台見上げる一、二列目はアタシの周囲は揚劇とあつて上海、蘇州方言の老人ばかり。ところで中国劇まだまだ浅学のアタシはてつきり今晩の演目「百歳掛帥」が「楊門女将」の改編か、と思つたが実は逆らしい。ところで武将の寡婦、娘が活躍と云つた戦記物、久が原のT君に尋ねれば早いが、日本にあつたかしら、歌舞伎文楽の狂言といはず物語でも。
▼今冬にミシュランの香港マカオ版上梓の由。14人の評家が対象たる1,200軒のうち800を既に探訪したさうな、が14人のうちチャイニーズは2人で何処まで真つ当に中華評価できるか、は当然、疑問。いづれにせよミシュラン東京版やTime Out HK同様に利用価値なきことは出版前に明らかなり。
▼FT紙の映画評担ふNigel Andrews氏が昨日の紙面で曰く
Drunk on Sunday, hung-over on Monday. The morning after China inebriated us with spectacle in the Olympics finale - courtesy of moviemaker-turned-Bijing-Barnum Zhang Yimou - we woke to reality with a splitting headache. Was it the end of the wonder show?
と。婉曲な表現ながら余の溜飲下がる思ひ。香港の新聞でも辛口の評論家が結局のところ張芸謀の最近の映画二作は北京五輪開幕式の予行に過ぎなかつたのか、と指摘あり。張五常教授はまだ北京五輪の興奮冷めやらず今日の信報に「金比銀銅重恨多」と中国の獲得メダル数で金の多さ(対銀銅比で1.04)がメダル獲得数(中国除く)上位9国の平均0.46に比べ云々……と、さすが恩師フリードマン教授の智利ピノチェト政権への擦り寄りに倣ふが如き態も、少なくても自らを脱税と偽骨董品販売の咎で米国司法に渡さないでくれるだけ北京様々なのかしら。ところでこの映画評で辛口のNigel Andrews氏が映画「さくらん」4ツ星と好評。アタシは香港での映画祭での上映は満席で見られず、それほどのもの?
▼香港の個性的な老舗雑誌『號外』の社主・陳冠中氏が昨日の信報で西蔵のラサの宗教区をバチカン式独立は如何?と(要旨はFrancesco Sisci氏がTimes誌アジア英語版4月15日号に掲載のもの)。実質的には中国領土内にありながらバチカン的な独立を認め、その宗区内においての自治を認めダライラマをローマ法王的な立場に、と。イタリアならイタリア国内のカソリック信者が宗教心的にはローマ法王慕ひつゝ国家政府的にはイタリアへの帰属に疑問感じぬのは不思議ぢやないが西蔵でそれが可能かしら。北京中央とてこんなの認めたら次は香港の特別行政区が行政区として前代未聞の株式市場上場あり鴨。
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