富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-07-08

七月八日(火)朝から大雨。香港の雨期は三月から四月。その後は猛暑となり雨といへば南国らしき驟雨と台風。それが六月からのこの連日の大雨。ボルネオのジャングルぢやないんだから。雨空に外出も厭はれ読書。ANAの機内誌(翼の王国)に「東京読書引力散歩」なる特集あり。乱歩先生の書庫に籠りたい気分。中平穂積氏の(新宿のDIGとDUGのオーナー)が植草甚一翁を語る。銀座数寄屋橋の洋書イエナや神保町の古書店、そのかならず街頭の安売り書籍のワゴン!の前で何度かアタシもお見かけの甚一さん。考へてみればアタシも雑誌を要らない、或ひはさつと読了の頁を破りながら読むのは、いつの間にか甚一さんから学んでゐたの鴨。DIGにもアタシは背伸びして出かけた17歳の少しセンチメンタルな思ひ出。Z嬢とは20年くらい前の東京時代、新宿の待ち合はせは決まつてDUGか地下道横の但馬屋珈琲か、東口の「日本晴」なのだつたことなど思ひ出す。DUGから日本晴、で台北飯店。日本晴向ひの五十鈴はかなりの贅沢で、つな八の天麩羅すら食ふには財布が寂しかつた頃。久が原のT君とはまだチェーン展開する以前の靖国通りの喫茶シャノアール(Chat Noir)、築地のH君とは決まつて東口の交番前……昨日飲んだ葡萄酒の名前も朧げなのに何故四半世紀も前の待ち合はせがくつきりと記憶に浮かぶのかしら。日暮れに鹿児島は日置の原口酒造の「西海の薫」なる芋焼酎飲み夕食は白菜と豚肉の鍋、糠漬に味噌汁と純和風だが豪州はBarossa ValleyのTurkey Flat VineyardsはMarsanne Viggnier 04年といふ白、は鳥渡甘すぎ。
▼区志航なる広東電視台のキャスターが「做俯卧撑」と題して五輪に沸く北京から香港まで中国各地の景勝を背景に全裸で而も何故か腕立て伏せ姿勢(蘋果日報)。「做俯卧撑」は何とも日本語にしづらいが(臥薪嘗胆のやうだがちと意味は違ひ)四川地震で「家屋倒壊し瓦礫の中でも希望を失はず……」のまさに、それ。で何故にこのパフォーマンスが「做俯卧撑」なのか、と言へば、御本人曰く「国家的景観に対峙して皆に自己と国家社会の関係を相対的に理解してほしい」と(こちら)。わかりにくいやうなわかりやすいやうな。いづれにせよ「目立ちたがりすぎ」と冷たい反響少なからず。
洞爺湖サミットで昨日は七夕で笹の短冊に願ひを各国首脳が認める。「圧政からの自由な世界を望む。飢餓、病気による圧政、あらゆる圧政からの自由」(朝日新聞より引用)つて「アンタにだけはそれを言はれたない」と思ひます、のブッシュ大統領産経新聞によればこれは「圧政から自由な世界を望みます。飢餓、病気による圧政、あらゆる圧政からの自由。自由への普遍的な望みが実現される世界を願ひます。また、人間の暮らしを良くし、私たちの環境を守る新技術の進展を望みます。すべての人に神のご加護を」ととても新自由主義らしい願ひ。ジャパンタイムズ
U.S. President George W. Bush, who launched the Iraq war and is suffering historically low public support, is holding true to his political faith: His wish was for a world free from tyranny, according to a press release based on a tentative translation by the Foreign Ministry.
と冷ややか。やはりマスコミはこれくらゐ冷徹な見方であつてほしい。ところでNHKのNW9の洞爺湖現地からの報道。レベルの低さではNHKの報道番組始まつて以来、のキャスターは、いつもコメントもベタで台本棒読みなら台詞を噛むのは毎度お馴染。昨日だかも胡錦涛国家主席と言ふのを国華酒造だつたか間違つてゐたが今晩も「こつからは華盛頓支局の大越さんと……」と。アタシが報道局の番組プロデューサーだつたら舞台裏でボディブローくらゐかましてゐる鴨。
霞が関官僚の居酒屋タクシー。呆れるばかりだが、それがThe Economist誌で紹介されるとやはり日本人として恥づかしい。記事は7月5日号の“A movable feast”がそれ。このタクシーでの一酌も異様だが国土交通省だけで昨年US$20mといふ膨大なタクシー経費。勿論、世界中各国とも国の政策立案に携はる高級官僚が深夜勤務もあらうがUS$20mといふのは、このうち6割を夜間利用として1年300日で割つたら1日あたり7,667千円で、都心から離れた住居までタクシー代15,000円とすると日に282人の利用。The Economist誌にある通り官僚ばかりか下級公務員まで深夜残業のその多くが大臣らの翌日の国会答弁の回答作り。それが薬害訴訟くらひの大事なら作業の価値もあらうが大臣答弁の多くは所詮、野党が与党攻撃のネタ程度で省庁側も本来の政策とは乖離した単に弁明づくり。全くもつて無駄。国土交通省なら道路財源か。で深夜、同省から吐き出された282人がタクシーで帰途の人となる。世界から嗤はれて当然か。

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