富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-07-04

七月四日(金)快晴。イヤフォンは音楽を聴くために非ず地下鉄など周囲の大音響の無駄な会話や貧しきゲーム機の電子音対策で暫くソニーの密閉型EX90SLなるもの使つてゐたが音のクリアさ(硬さ)が殊に弦楽などに合はず熟慮ならぬ軽慮のすゑボーズ研究所のものを入手。当然、驚くほど柔らかい音に戸惑ふほど。早晩にFCCでドライマティーニ二杯。快晴の新月の晩は夜空に星も美し。詩人は彼の夜の命令に従ふ……Jean Cocteauといふ気分。晩遅く吉田秀和『音楽展望』1978年刊(講談社)やうやく読了。まだ65歳と若い秀和さん。
▼大陸と台湾に直行便開航。技術的には台湾の政権が変はれば開通する程度の問題となるが。寧ろ台中から廈門へ向ふ便だつたか機内で蘋果日報(台湾版)が配られたことのはうが驚き。
▼信報社説が「原油高でいつたい誰が最後に得をするのか?」と。余もこれが大いなる疑問。単純に産油国でないところが興味深し。まづ、この原油高がどう世界経済に影響するか、で例へば工業生産増=石油需要増の中国。中国が2001年に外貨備蓄はUS$2千億であつた当時、原油は1桶(gallon)US$25で、単純計算なら80億桶の購入可。今年3月、中国の外貨備蓄は世界一でUS$1.68億にも達したが原油価格はUS$140と高騰で同じく計算すれば120億桶。つまり中国の外貨備蓄が8年で7倍になつても石油購買力は1.5倍に留まる。原油価格高騰は、中学生でもわかるのは需要増で中国や印度の経済発展が大きさうだが、単純にさうとも言へぬのは、例へば石油需要はこの3年で年平均1.5%の伸びで02〜06年で石油消費量は7.7%増に対して原油価格は実に4.2倍。これが通常の「需要と供給」に拠らないことは明らか。また昨年の原油先物取引では56%増であつたが、これが石油関連商品の増加率の26倍。この高騰でペルシア湾岸六カ国だけで昨年US$3811億の収益を上げたが、産油国のインフレも深刻で中東で1磅US??22であつた馬鈴薯が76?燹■曳?30個の鶏卵はUS$2から$4.25と価格上昇。米ドルがベースの中近東ではドル安もこれに追ひ討ちをかける。アラブ首長国連邦では公務員のベースアップが70%、オマーンも75%と拍車がかかる。過去3回の石油危機は最長で2年弱(1973〜74年)で今回はまだ1年にも満たず、これがいつまで続くのか……と社説も「答へになつてねーだらう」だが、それぢやアラビアの王様たちだけが儲けてゐるのかしら、違ふでせう。世の中そんな簡単ぢやない。アタシの仮説では原油価格の上昇は数年、十年なんてスパンに非ず、実はアラブの石油が枯渇する頃、ソ連ベネズエラなども産油量は減少、実はそのなかで唯一、埋蔵量が豊富なのが米国。アラブの産油国も都市化で石油消費伸び米国から石油を買ふ日の到来。で最後はUS$280なんて貴重で高価格の原油を売る米国が最後のオイルマネーを得て……で、それに立ち向かへる他方の原油埋蔵国家が中国、なんてのを想像するのだが。
▼世間に従はぬ(とされる)東宮東宮大夫が皇太子殿下に対する石原都知事からの2016年五輪誘致での協力要請に対して「招致運動というのは政治的要素が強く皇太子殿下がかかわることは難しい」と否定的見解示し「政府内でしっかりと詰めるのが先決」と述べる。都知事は「政府が正式に申し込んだら別な話だと思うね。宮内庁ごときが決めることじゃない。国家の問題なんだから。木っ端役人が、こんな大事な問題、宮内庁の見解で決めるもんぢやじゃない」と発言。東宮御所の憂慮は「都知事の抱くような政治的な魂胆」に対しての冷静な判断。戦後日本を体現する陛下や東宮様がこれに易々と乗るはずもなし。そもそも陛下や宮様方に仕へる宮内庁に対し「宮内庁ごとき」だの東宮大夫を木つ端役人と罵ることぢたい不敬。都知事は自らを恥ずるべき。五輪が国家の問題なら木つ端都知事がこんな大事な問題を都知事の見解で決めるもんぢやない。
▼03年のSARS疫禍後に疲憊せし香港に活気を、と政府資金10億円以上弊浪費し海外より芸人招きHarbourFestなるくだらぬ興行開催し大失敗の政府役人Mike Rowse(投資推拡署署長)に対する業務上過失を問ふ裁判で上告審の香港高裁は被告無罪と判決渡す。政府は責任の所在有耶無耶にするが、この催事、この投資推拡署としての決定といふより香港米国商工会議所の胡散臭い当時の頭取の提案にRowseが個人的に興味示し実施決定は明らか。公金を、それも疫禍復興の資金を怪しげな芸能プロダクションに流してお終ゐ、では明らかに千古罪人だらうが。