富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-06-11

六月十一日(木)近ごろ頭痛が時々あり今朝も五時過ぎに起きて鎮痛剤飲んで新聞など読んでゐたが夕方にまた頭痛。きつと飲酒が最も効力発揮しさうだが一錠だけ鎮痛剤飲んで針仕事続けてゐたらネット音楽(www.real.com)でモーツァルトピアノソナタ ハ長調K.330が流れる。多少なりとも頭痛には効くところがモーツァルトの凄さかしら。帰宅してオーメドックのChâteau D'agassacを開栓して一飲。何処でどうして入手かも不明の葡萄酒で品種もシャトーの紹介もラベルにはないが、おそらく100ドル台ワインで渋めのハーフボディ(翌日確かめたらRPが87ポイントで注目ワイナリーと評価、メルロー35%とCar Sauが65%)。ここ数日、鳥インフルエンザ再来と騒がれてゐるなか鶏肉のクリーム煮のパスタ(この鶏肉は北角街市で購入のKadoorie系ので数日前に冷凍のものだから安全だらうが)。豪州のKirrihill Estateのリーシング04年を飲むが食事には甘すぎ。テレビつけるとNHKでNW9が放送開始から15分過ぎだが「なぜ、あのやうな悲劇がつ……!」と秋葉原の事件ももう三日目で、これ。ワイドショーでカバーすべき内容。事件は残虐だが江戸でも神田で同じやうな通り魔殺人はあつただらう。個人の起した犯罪で「なぜ、あのやうな悲劇がつ……!」は考へても実はなんの解決策もない。「数数多ある日々の出来事から報道すべき内容を厳選し、限られた時間で厳正に的確に真実を伝へるか」が報道番組の基本だとするとNW9はどんなものか。チャンネルを変へるとアル=ジャズィーラの英語チャンネルが「これこそ報道」と思はせる確かな報道番組なのだつた。
シンガポール内閣資政の李光耀国王曰く、中国と西洋との間の悲哀なる鴻溝は中国で日韓台や港星のやうに教育を受けた良好なる中産階級が育ち自らが西洋帝国主義の被害者といつた見方を止め、完全に同じではない双方の価値観の差異を真摯に受け止め、緊張関係を解さぬ限り、中国と西洋との対峙は解消せぬ、と。またチベット問題については、西欧ではヒマラヤ山脈を拝むチベットをまるでシャングリラか桃源郷のやうに思ひ、そこには瞑想に耽るダライラマと安静なる寺院に日々を送る僧侶らばかり想像するが、中国からしてみればチベットは地主制度の封建社会農奴制が敷かれ人口の9割が文盲といふ後進社会と映る。チベットの経済発展で多くの漢族がチベットに入り込むことはチベット人には脅威だらうが、中国がチベットを支配することでチベットは21世紀の世界に加はれるのであり、農奴制を撤廃し病院や学校、道路、鉄道などのインフラが整備されたのだ、と。ハンブルクの關愚謙先生が聞いたら「その通り!」だらう。だが高校生の頃に呉智英の封建主義の洗礼受けたアタシは(その後の智英先生の思想的経路は知らぬが)封建制にさう懐疑的にはなれず、寧ろ光耀王的な進歩主義や20世紀的な経済発展がいつたいどれほどのものなのか、チベットの地にあつて漢族が美味しいところ独占で、共産党一党独裁で経済的にも下層階級に追ひやられた生活つて三重苦ぢやないの?と思へてしまふのだが。

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