富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月十三日(火)深更に体温摂氏38.5度。昨晩は夕方の麦酒と南京豆だけでさすがに空腹感ありenergy gel(100kcla)とリポD、それにQP興和ゴールド数粒摂り朦朧したまま夜明け。少し熱が退き近隣のC医師の診療所で診断請ふ。服薬し午後まで寝ると平熱となり体調もどうにか回復。佐藤忠男黒澤明の世界』読了。一昨日注文の天井扇が今日届き取付けは木曜日だか週末で技術者に連絡すると「これから行くよ」と。突然だが当方もどうせ在宅だし一日で済むなら幸甚。香港らしい優柔さ。夕方、居間に天井扇がつく。唾玉集(東洋文庫)ほんの少し読む。バンコクよりY氏来港、晩に炮台山の順寿司。昨日からの高熱でふらふらで今晩の招飲の約は辞退か、と思つたが体調よく軽く、軽く。Z嬢もご一緒。六、七年ぶりの順寿司はかつて天后の「利休」で厨房を仕切られたK氏が利休が閉つてから移られたと聞き及び、の由。利休の頃にあれだけ食してをりながら厨房のK氏には今回、板前で初めてご挨拶。
▼信報で王迪詩といふ書き手の隔週土曜の蘭開夏道といふ随筆が良い。過去の随筆はこちら。「紅色中環」と題した5月10日の随筆は中環のオフィスでかなり大切な打合せの席上、北京から来てゐるマネージャーが突然「聖火リレーを見にいかう」と。中環の香港倶楽部前で突然、Louis Vuittonの鞄から大きな五星紅旗の旗が現れ……、中環は紅旗が舞ひ普通話ばかりが聞こえ筆者はこの狂歓の大陸人たちがこの土地(香港)の主人なのだ、と痛感と。また湾仔ではフリーチベットだのミャンマー軍事独裁反対のスローガン掲げた西洋人の青年に、五星紅旗掲げた女性が旗で青年を威嚇すれば、警察は(これも身柄の安全確保か……で)青年を自動車に乗せて連れ去つた由。人を殴るにも武器は多からうに自分の国の旗で威嚇とは……と筆者の嘆き。
▼今回の北京五輪に係はるチベット問題や中国のナショナリズムで余が一番驚いたのは在ハンブルグ碩学・關愚謙氏の言動。信報に毎週のやうに積極的に発言続けるが9日の文章でも(抄訳)
欧州の一連の反中報道もどうにか落ち着き中国の「平和的な聖火リレーの様子を正面から」報道するやうになつた。ハンブルグでの中国人留学生の抗議運動は報道により独逸社会震撼させたやうだが、それは暴力に拠らず道理のあるもので、中国からの学生も台湾からの学生もチベットが中国の一部である、といふ認識は一致。中国の二十年来の発展が欧州中心主義の西洋人から見れば「有褒有貶」で中国を問題視する。平和な祭典の年が欧米の意図的な偏向報道。中国の民族主義を非難するが、民族主義と民族感情は異なるもので、真つ当な民族感情は非難されるべきに非ず、寧ろこの機会に冷静に西欧中心主義の実態を見据ゑ、現実の理解の良き機会に。
……と在独の中国人留学生の若き血潮に訴へる。欧州中心主義があるのも事実だが中華思想もどつこいどつこい。自身がそのいづれからも自由でゐられることにふと安堵。

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