富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-05-11

五月十一日(日)朝四時起床。机に凭り諸事済ます。読書。曇天の朝に聴くドビッシーの「ピアノのために」からサラバンドが素敵。Z嬢と海洋公園に行かうかとバスで遠足。朝九時半の開門直後の海洋公園は香港鼠楽園に少し客の数分けてやりたい程の盛況。自分の名前にPANDAのADNPの何れかの文字含まれてゐれば入場料2割引きでHK$166.4也。パンダ舎に参れば昨年来港の若い雄雌一対と古参一対の四頭が丁度、朝の餌時間で旺盛な食欲見せる。石原慎太郎のパンダなど「いるところに行って見てきたらいいじゃないですか」発言も記憶に新しいところ。園内の人出に比べ意外とパンダ舎は混んでをらず、やはり大陸からの客にとつてパンダより海月館、海豚ショウや気球だの断崖絶壁のジェットコースターの方が珍しいか。パンダ舎では「撮影のフラッシュはご遠慮ください」の指示でもフラッシュの閃光燦きつぱなし。何が不自由つてデジカメで撮影者が初歩的な、フラッシュ光らぬやうにカメラを操作できぬ不幸。もともとジェットコースターだの急降下楽しむやうな遊戯施設が幼き頃から苦手な上に耳の平衡器官の衰へか旋回なんて気分悪くなるのが必至で真っ平御免の余は海洋動物専門で、海驢の餌付けだの昼過ぎまで園内に遊びバスで香港仔(Aberdeen)。舊大街の謝記に赴くが店内に涌く客の数にたじろぎ魚蛋粉食すは断念。路地裏の、フランチャイズ化し香港各地に店舗網広げてから客に飽きられすつかり低調の泰国人海南飯に食す。日曜の昼に食肆不足の香港仔でゆつくり坐つてタイ麦酒など飲んでゐられるだけでも御の字。タクシーで鴨脷洲の海怡工貿中心(Horizon Plaza)。人里離れし工業開発区の(といつても南Y島眺める絶好の景観だが)26階建ての倉庫ビルが家具や衣料品アウトレット、アウトドア用品や葡萄酒など扱ふ店が並び不便な場所ながら週末は盛況。殊に住宅事情厳しき香港で「何処に置くのよ」みたいな大型家具が主で客は高級マンションや比較的郊外に住む、殊にオリエント趣味の家具好きの毛唐多し。いぜんから陋宅の居間に天井扇(……と日本語で言ふと初めて知つた、Ceiling Fanのこと)を、とかねがね考へたのは冷房では涼しすぎ小さな扇風機では事足りず、で天井扇専門に扱ふ店で米国オーロラ社の地味な、何等装飾のないのを誂へる。週明けに配達で数日以内に取付け工事は小一時間で終はる由。他に葡萄酒、雑貨など購入。帰宅途中に太古城のApitaの日本食フェアで旭川駅の駅弁・蝦夷わつぱと鯖寿司購ひ帰宅して食す。
▼些細な事だが日本食フェアであるとかで来港の実演販売の人や農協の職員など「はい、いらっしゃーい。北海道の新鮮な生鮭だよ」等と販促はするが、いざ客が買はうとすると香港の地場の者に「はい、こちらのお客さん」と売り買ひ(現金のやりとりを)任す。なんだか横柄、と思つてはならぬ。厳密には就労査証得てをらぬから働いて収入得ては違法。であくまで「お手伝ひ」で個人所得はありません、といふ次第。
▼Z嬢が録画の昨日のフジコ=ヘミング女史のインタビューを看る。NHKの朝のバラエティで「この人にトキメキつ!」なるコーナー。確かに司会とご本人のチグハグぶり、ゲストの突飛なる個性の所為でもあるが、司会者の「他の人にはない、自分のテンポで音を自在に扱い」なんてベタなコメントに象徴される無味乾燥がいけない。大阪のシンフォニーホールでの最近の映像など流れるが往年のホロヴィッツも真つ青の素人でも「えつ?」と思ふ重大なミスタッチも連続だが、ご本人に「天才はミスする」、ミスタッチがあつても曲としていかに歌つてゐるかが大切、「国際コンクールでちよつとミスしただけで落とす。表現の素晴らしさを見てゐない」つてと言はれてしまふと、もう御神託の域。自分はマリア=カラスが唄つてゐるやうにピアノを弾くんだけど他のピアニストはみんな機械的にガチャガチャ弾くだけで、と言ひたい放題。一流の演奏家ツィメルマンのやうに寡黙でいいし、ヘミングさんはアルゲリッチよりもつと特異な存在でゐられるのだから、NHKも彼女を「発掘」したのは良いが朝のバラエティにゲストで呼ぶのがよくない。

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