富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-03-31

三月卅一日(月)小雨続く。早晩に中環。カラーシックス現像店にプリント注文。先日或るパーティで知人ご夫妻のスナップ写真撮つたら(手前味噌だが)その方より近年稀ないい表情の写真と言はれ英国のご母堂に写真送りたい、と。でデータでくれといはれたが折角なので「手焼き」誂へる。ふらりと擺花街の興利カメラ商店。バルナックライカIIIのC型(1946〜51年製造)の出物あるを先日見つけて今日もまだ店頭に。恐る恐る見せて貰ふ。かなり良品のエルマー50mmのレンズ付きでHK$7.5千、一瞬食指動くが流石に自己破産怖れ衝動買ひ躊躇す。FCCのバーでハイボール二杯。黄枝記で牛腩雲呑麺食す。旺角。朗豪坊の映画館にて話題のドキュメンタリ映画『靖国』看る。自民党国会議員がこの映画製作に文化庁より公的助成金拠出に不満で議員向けに異例の試写会開催(今月12日)。上映予定の映画館で上映中止決定相次ぐ(朝日)。そんな反感買ふほど左傾な作品なのか、と思つてゐたがアタシの目には8月15日の靖国神社の境内で遺族や市民、右翼団体等が英霊の御霊に参拝する態や靖国合祀に異議唱へる仏教者や台湾タイヤル族の抗議運動などを冷静にドキュメンタリーとして映像化した作品。勿論、厳正中立か、といへば視線の奥には「靖国」への憂ひ、「靖国なるもの」に警戒感があるのは事実。だが英霊を崇める人々の感情を否定するやうな反靖国的な思想映画とまではいえず。文化庁の助成が問題視されるがアタシは寧ろ、中国人の監督のこのドキュメンタリーに資金援助したのなら、これは海外から見れば日本政府の了見深さ、矜恃と思へるもの。それを自民党議員の反対、右翼の抗議怖れ上映自粛……となると「嗚呼、やつぱり日本は靖国的なるものの自縛にあるか」と印象悪くなるばかり。今日の上映では銀幕に靖国神社での終戦60周年式典に参加して演説する石原都知事が映ると満席の観衆の間でさすがにざはざはと隣席の連れとひそひそ何か語る者少なからず。この人への反感の強さ。旺角から湾仔に向ひ芸術中心で映画『金碧輝煌』Fujian Blue 看る。福建省の不法移民のゴールデントライアングルといはれる沿岸都市が舞台。不法出国を商売にする「蛇頭」、旦那が海外に出稼ぎし生活費の仕送り受けながら若い彼氏と遊蕩する妻たち、その妻らの淫行を写真やビデオに撮り恐喝し金品強請る若者ら。なんと浮気する自分の母までが強請りの標的、息子に強請られてゐると知らず示談に応じる母。その若者たちの自堕落な日々がこの映画の前半。で後半は台湾に最も近い平潭島が舞台。その若者の一人が英国に不法移民することになり悪友ら連れ郷里の平潭島で過ごす日々。翁首鳴なる監督、なかなか見事な作風。

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