富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-03-11

三月十一日(火)畏友A君の招きで昼に香港ジョッキークラブのHappy Valley Club Houseの幸運閣に食す。某センターで映画放映に采配ふるふE女史と鼎談。香港ジョッキークラブのクラブハウスといふと「凄さう」だが建物は「凄くない」どころか「いつたい何処の誰が?」と猜うほど陳腐な設計なのは何故かしら。諸事に忙殺され晩に至り帰宅して「水炊き」食す。食前にドライマティーニ二杯、水炊きで菊正宗一合で、すつかり出来上がりつつ、RTHKのRadio-4で昨日の紐育フィルの平壌公演の実況を聴き(それにしても「巴里のアメリカ人」将軍様のお膝元でやる方もやる方だが許容した平壌も老獪)臥床。
朝日新聞の今日の社説。「希望社会への提言」といふシリーズで今日は「『単一民族神話』を乗り越える」と題し「外国人の子どもに、日本語などの教育支援を」とか「多民族が「隣人」として共生する社会を築く」といつた提言じたいはそれでいいのだが、ふと気になつて一節は
第二次世界大戦後、日本は「単一民族神話」のもとで戦後秩序を築き上げた。かつての渡来人や北海道のアイヌ民族などを考えれば、単なる神話にすぎなかったのだが、これからはそれどころではない「多民族社会」となっていく。
なんとなくさらつと読み過ごしさうだが「日本は「単一民族神話」のもとで戦後秩序を築き上げた」つて、具体的に何が?どうなの?……全く意味不明。書き手にこれが具体的に何のことが示してもらひたいところだが論が踊つてしまつてゐる。単一民族と信じてゐる(誤解してゐる?)国民がどれだけゐたにしても、それが戦後秩序?(これじたい漠然としすぎ)の構築にどう効力を発したのかしら。アタシがデスクなら、この原稿のこの部分に赤鉛筆で線を引いて「?」と差し返したいが、今は画面で原稿打つて、の時代でこんなフレーズも素通りで紙面、なのかしら。論壇では早稲田大学の田中孝彦さん(国際政治史)が「世界秩序」といふ題でお書きになつてゐて「21世紀の世界秩序を形成するために必要なのは、世界の多様性を深く理解し、抵抗の背景にある貧富の差や不公正そして抑圧などの原因を、直視すること」で「その原因を解消できるプログラムを組み込んだ世界秩序を作る努力をすること」と。ご指摘は正論だが「21世紀の世界秩序……」から読み始め「……世界秩序を作る努力を……」と読み続けると「世界秩序」といふ言葉で堂々巡り。その田中先生の隣には文化庁長官・青木保さんが「文化の多様性とグローバリズム」と、なんだかもう、かういふ言葉ばかりが踊つてゐてアタシには何だかさつぱりわからない。
木村伊兵衛写真賞、今年の受賞者お二人は朝日の記事で「痛々しいほどに「生と死」を見つめる目を感じさせる」と紹介されてゐたが、受賞者お二人の姿を写した写真じたいが、あまりにもさういふ雰囲気なのが(作品のインパクト以前に)やけに気になるところ。
▼スペインは総選挙で与党・中道左派社会労働党が下院で勝利。サパテロ首相の再任確定。旧態依然の左派から脱却し社民路線で労働者から中道左派、学生、エコロジスト、シングルマザーと確実に支持を広げ同性愛婚まで認め保守派・旧守派カソリック勢力に厭はれ社民政党にありがちな経済無策と批判されたが、それでも勝利。日本の社会党からの左派の不甲斐なさを思ふと羨ましいかぎり。

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富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/