富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-02-24

二月廿四日(日)気温摂氏14度で小雨、と寒々しい日曜日。昼前に洋琴稽古。昼からZ嬢と香港電影資料館にて映画『黒玫瑰與黒玫瑰』看る。1965年の『黒玫瑰』(今月三日に看る)が好評で翌66年の続編。南紅と陳寶珠が演じる「黒玫瑰」姉妹、今度は悪の軍団に捕まつた謝賢を助けようと敵の本拠地に乗り込み大活躍、前作の白黒が総天然色となりアクション巨編、といひたいが「いい意味で」B級映画で今となつては笑へるシーン連続。今回はスタジオ撮影ばかりなのが残念。携帯にジャスコ太古店の旭屋書店より今月いつぱいで閉店と連絡あり。今後の雑誌定期購読は「そごふ」の店でお願ひします、と。銅鑼湾に出向くのを避けたくジャスコの店にしたのに……。といひつつ珍しくZ嬢のお買ひ物に付き合ひ珍しく日曜午後の、避けたい銅鑼湾。人出多し。「先週も銅鑼湾に来てたぢやない」とZ嬢に言はれ「えつ?」と思つたが、確かに言はれてみれば、この人混みのなかフルマラソンのゴール目ざして「そごう」横を走り抜けたのだつた。思ひ出すだけで恥づかしい。夕方帰宅して洋琴稽古。ポルトガル産の白葡萄酒 Carm Douro レゼルヴァの03年とパスタ。昨晩に続きDVDで「のだめ in ヨーロッパ」看る。バブルな80年代後半ならまだしも、よくもまぁロケしたよな、と感心。オタクな話だがヒャルト=シュトラウス交響詩「ティル=オイレンシュピーゲルの愉快ないたづら」が流れれば、のだめの「変態の森」に千秋先輩が辿りつく時はきつと「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れるか、と思へば外れ、のだめが巴里について最初に演奏しリサイタルの最後を締めくくる曲も原作のラヴェルピアノ曲「水の戯れ」期待したらドラマでは「鏡」であつた……どうでもいい話だが。ケネフ=ウオフ『国民の天皇〜戦後日本の民主主義と天皇制』(共同通信社)、長い「はしがき」と第1章読む。原題は “The People's Emperor” で the people が「国民」と訳されたのが気になつたが、これは憲法学の基本の「き」で、日本国憲法で英文(原文?)では the people が日本語(訳?)では注意深く「国民」と訳されたことに基づくものか。日本語では通常、例へばリンカーンの有名な演説も "Government of the people, by the people, for the people" も the people は「人民」と訳されるのだが、憲法で the people を「人民」としてしまふことに当時の関係者は赤化でも怖れたか。アタシは個人的には日本国憲法の普遍法としての性格からすると「人民」と訳すはうが好きだが。
▼昨日の信報をバスの中で読んでゐて陳雲氏による「華志羅憶」を読み不覚にも涙。湾仔にあつた青文書店の店主・華志羅さんが年廿八(二月四日)に経営する出版社の倉庫で図書整理中に倒れ書籍の箱に埋もれ圧死。死後十四日(二月十八日)に近隣の住人が発見の由。湾仔の青文書店を閉め早幾年か。細々と図書出版続けたが金策に追はれたことは想像に易く陳雲氏の文章読むと現実にはかなり切実。老読書人が書に埋もれて亡くなるのは本望といへば本望か、だが独り書庫で、あまりにも惨し。

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