富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-01-28

一月廿八日(月)天寒地凍。内地も五十年ぶりだかの寒波に覆はれ雪で各地の交通網遮断され旧正月前に早くも始まつた民族大移動で鉄路不通に広州驛前など帰省列車逸した云わば難民数十万人寒波のなか昼夜の列車待ちの由。驛周辺の弁当など高値、即席杯麺すら市価の四割増とか。人の移動ばかりか石炭など基幹物資の輸送も支障あり。香港も対岸の火事とは言つておれず北京、上海を結ぶ長距離列車の運転、豚肉や野菜など流通が滞る。午後、中環歩みふと小腹空き陳成記訪れるとシャッター降りて旧正月には早いし怪訝に思へば中環のGraham街、Peel街一帯の再開発にて陳成記の入る建物既に政府徴用。移転再開に非ず過去四十年の御愛顧に感謝と父母に代はり、とご亭主の挨拶が店先に貼られてゐるを読む。十二月十七日に廃業の由。一杯十五元程度の商売で家賃高騰の折、移転してまで、而も小麦粉など原材料高騰もあり、では政府からの保証金貰ひ商売畳んだはうが得策か。香港一の上湯伊麺がもう食せぬとは残念。永吉街の麥奀記忠記に雲呑麺食す。最近ふと髪の毛を伸ばす余は髪の収まりつかず。若者ぢやあるまいしムースだのジェルだのヘアウォーターなどで髪をつんつくてんに出来ず。昔ながらのヘアクリーム売るを見つけるのに難儀。それと櫛。櫛を売つてをらぬのには驚いた。かなり久々にジムで一時間の有酸素運動。帰宅して湯豆腐。広州の驛前広場には数十万人の列車待ちの群衆あると思へば広州より三、四度は暖かな香港で自宅で湯豆腐に酒で暖まれること、申し訳ないほど。樫村愛子ネオリベラリズム精神分析〜なぜ伝統や文化が求められるのか』読了。著者が社会思想史の研究者として優秀なことも、かなり広く文献読み漁つてゐることや、何よりも著者の政治的な立場のリベラルな明快さなど共鳴するところ多し。ただ理論書でなく書かれたのが新書であると思へば新書は「バカの壁」だの「国家の品格」だの「日本人のナントカ」だの、さういつた低レベルな、扱ふテーマは地味でも、それでゐてどこかビビッドな印象与へる、さういふのが新書の売れる基本であつて、このネオリベラリズム捕らへた視点は面白いし「なぜ伝統や文化が求められるのか」の着目はいいのだが、古今東西の社会思想史の学者の言説を多々引用し理論攻めしても、新書としては売れない、だらう。新書の読者の素人の一人として読後感は、それぢや「なぜ伝統や文化が求められるのか」が今ひとつはつきり理解できず。『下層社会』であるとか、社会に警鐘鳴らす意欲的な光文社新書であるから(じつはこの『ネオリベ』と『下層』の編集者は同じ)これはもう少し噛み砕いていただきたかつた一冊。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/

ネオリベラリズムの精神分析―なぜ伝統や文化が求められるのか (光文社新書)

ネオリベラリズムの精神分析―なぜ伝統や文化が求められるのか (光文社新書)