富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-01-03

正月初三。午後、香港IDの申請で三度目の正直でImmigration Deptへ。再発行でHK$335納め仮ID発行まで一時間。待ち時間の間に小栗虫太郎の『聖アレキセイ寺院の惨劇』を読み始めたがやつぱりダメ。当然のやうに『黒死館殺人事件』も読む努力はしたもののダメ。日本の探偵小説中最大の奇書もセンスのないアタシには「つまらない」としか映らない。乱歩さんは、この「黒死館」の序で「ある人が小栗君の作品を評して「文学以前の感じ」と云つたことがある。(略)「文学以前」の語が素材の羅列といふことを意味してゐたとすれば、「黒死館」は如何にも夥しい素材の羅列であつて、評者はこの作品の真実を語つてゐたのであつた。普通の文学では、作者の知識は裏打ちとなつて表面に露出しないのであるが、この作では作者の驚くべき知識の山が、知識のままで目を圧して積み上げられてゐる。即ち裏打ちの方が表側に向けられてゐるのだ」と語つてゐる。確かに乱歩先生の言ふ通り。探偵小説としてプロットを追つて読めばトリックの大部分は具体化に堪へず失望するだらう、が、乱歩先生曰く、もう一つの読み方、百二百の探偵小説を組み立てる足る程の夥しい素材がこの黒死館には含まれてゐるのだら、それらの一つ一つに立ち止まり素材に基づき読者自身の探偵小説を構成してみながら、その幻影を楽しむといふ風変はりな遊戯を試みれば数ヶ月の間、読者の退屈を救つてくれるに相違ない、と。アタシにはその遊戯すら退屈すぎるかしら。「序」が乱歩なら「あとがき」は塔晶夫。つまり『虚無への供物』の中井英夫その人。英夫さんの「虚無への」も夢野久作の『ドグラ・マグラ』も、結局アタシは日本の推理小説三大奇書、その全てがダメだつたことになる。その知識の広さと深さについてゆけぬ、といへばそれまで。だが入り込めぬから退屈意外の何ものでもない。甚だ残念。書棚にはあと平井呈一さんの『真夜中の檻』もある。次に読む推理・ホラーはこれになるだらう。また読めなかつたり、と鳥渡、不安。兎に角、今日は仮の香港IDを受け取り、その足で金鐘の運輸署に参り運転免許証の再発行。これは即日、どころか申請してその場で即刻交付。バスに揺られ香港大学大学図書館で図書貸出証の再交付。何でもかんでも至極勘弁。早晩の所用の間のわづかな時間に「食の孤島」太古城のCityplazaのフードコートに食す。オリエンタルカレーも供したカレー屋が印度カレー屋に変はつてゐたので相即、食す。マトンのカレーは確かにオリエンタルカレーではないメニューだがカレーのルーじたいはオリエンタルカレーにちよつと赤唐辛子効かせただけ?と思つたのはアタシだけか。何となく想像は、勝手にオリエンタルカレーの商品名使つてしまひ香港ではCitysuper系のフードコートにオリエンタルカレーの直営店あるので、そこからクレームがついて印度カレー屋になつたのでは?とアタシは想像しながら、それなりに美味いマトンカレー食したのだが、その太古城Cityplazaでオリエンタルカレー供してゐたカレー屋も實はオリエンタルカレーのHPで海外店舗として香港にある4店舗の1つとして紹介あり。現実にはこの食肆(Curry House、といふ殺風景な名前だつたが)は今はないが(サイト更新遅れてゐるだけ)、少なくともそこに紹介がある、といふことは正真正銘のオリエンタルカレー系の店なのだつた。だが香港の4店舗の此処だけがオリエンタルカレーの名前使つてをらぬのも気になるところ。考へられるのは香港にオリエンタルカレー持つて来たのはCitysuperなのだから他の系列のフードコートで店を出すには敢へてオリエンタルカレーを店舗名には出来なかつたのか。だが結果的に、どうであれ営業始めた印度カレー屋は供すカレーもオリエンタルカレーの商品名は使つてをらず。ただ、話は最初に戻るがルーはかぎりなくオリエンタルカレーつぽい。オリエンタルカレーに美味いとはけして思はぬがこだわるのはアタシらの世代ゆゑ、かしら。

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