富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-11-04

十一月四日(日)快晴。朝はいつも目覚ましなくとも習慣で遅くとも6時には目覚めるが今朝は新界大尾督にてHK Distance Runners Club主催のハーフマラソン大会あり五時に目覚ましかけて昨晩寝たところ真つ暗ななか「だいぶ熟睡できたな」と今朝目覚めると既に午前6時。昨晩仕掛けた目覚まし時計の電池がズレて動いてをらず。20分後に天后発つ大会主催者手配のバスに急げば乗れるか、タクシーで一路、大尾督まで駆せるか、とも思案したが顔も洗ふか洗はぬか朝食も採れずで駆けつけハーフに参加は無謀。参加断念。自らがメンバーのHKDRC主催で1998年より8回連続、紛ひなりにも完走してきたレースだけに残念。朝食済ませ新聞数紙読みハーフマラソンのかはりに命がけの窓拭き。命が惜しいか年に二度程度。硝子越しの青空が心地よし。ハーフマラソン出れぬ腹いせにせめてもの修業に小一時間走り、その足でジム。昼にかけ有酸素運動一時間。午後に灣仔の藝術中心。「台湾月」の映画祭で晩まで映画三本。まづ李啓源監督の『巧克力重?(Chocolate Rap)』 は台湾初のヒップホップ映画と銘打つ。父親の製氷業手伝ひながらダンスに狂ふ少年。交通事故でダンス一旦諦めるが堅気な父も息子の夢が叶はぬは不敏とヒップホップに似あふナイキのスニーカーを授け息子は一念発起しヒップホップのコンテストに出るが決勝戦の相手はかつてダンスを教へて遣つた旧友……実力的には勝てるがなぜヒップホップでダンスを競ふか?と悟つた彼は……とヒップホップでも野球でもヤクザ物でも青春映画は青春映画の筋。午後の日差しがきれいで暫し漫ろ歩き写真何枚か撮る。The Delaney'sに寄りギネスビール二杯。久々に女将の尊顔に拝す。心地よき午後の風にギネスが美味い。花袋の『東京の三十年』数頁読む。挿雲の『江戸から東京へ』であるとか安藤更生の『銀座細見』ともまた異なる趣きあり。灣仔のこの界隈、午後遅く、どこか倫敦の如き風情あり。藝術中心に戻り夕方は『夢幻部落』観る。監督は一昨日の『経過』の鄭文堂。2002年の映画で確か観た記憶もあるのだが朧げ。『経過』ではもはや台湾代表する性格俳優の戴立忍も古書店主で地味な役。場面の所々覚えてゐるのだが嘗ての日記紐解いても手帖見ても、この映画をいつ何処で観たのか記録もなければ筋すらあまり記憶になし。年老いて記憶も定かでなし。あらためて、この『夢幻部落』といふ映画の面白さ。タイヤル族の記憶。中上健次的。台湾の映画といふと、どうして若者の孤独が印象的なのかしら。青年は定食もなく?もあがらずうだふだと過ごし、少女は必ずといつて言ひほど映画館の「?り」か遊園地でメリーゴーランドの係員の印象あり。毎日ただ仕事場に向ひ悲しく日を終へアパートに戻る。この映画でせめてもの濟ひは孤独に嘖まれテレクラで知らぬ相手との物語りだけ、の若い男女が台北を出て山に向ふこと。映画終はりZ嬢と待ち合はせ灣仔の巷路になぜかポツンと在るSUBWAYで美味いサンドヰッチ食す。Z嬢と藝術中心に戻り晩は『人魚??(The Shoe Fairy)』観る。邦題は「靴に恋する人魚」。監督は李芸嬋。香港の芸人ランディ劉徳華が資金提供しプロデュース。敬服。映画では語り役つとめる。主演は徐若?(ビビアン=スー)。センスの極めていい映画。アタシはよく知らぬが端役までかなり個性的な台湾の役者総出演かしら。個人的に「この童話的な世界」は嫌ひぢやない。だがアタシは「筋のために悲劇用ゐること」は厭。何か場面の展開で悲劇、事故など用ゐるのは安易すぎ。だがふと思へばこの映画でもモチーフになつてゐる童話といふのは、今にして思へば、優しさだの幸せなどが大切、といひつつ、その残酷さ、悲劇的要素こと童話の核心。夜な夜なこの残酷な話を聞いて育つのだから。

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