富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月二日(日)毎年恒例で初秋に新界横断MacLehose Trailの100kmを数回に割けせめて完歩と企画しているが本日はその第1回。常連のY氏、それに今年初参加のS氏とO氏の4人で坑口に朝早く集合し西貢経由で北潭涌。数百人参加の10kmレースがMacLehose Trailの第1区であり。K氏、B君参加しており、その応援しつつ歩き始め雨のなか落雷に脅えつつ三時すぎ25km歩き通し終了。やはり体重が軽いと山の登りも当然、かなり楽。ちょっと走りたかった気分。ところで香港最東端の西湾(って地名がどうもヘンだが)の西湾の浜辺に数件ある海の家のうちアタシがかれこれ十年近く贔屓にしていた一軒が、今日も当然のように寄ると、店の雰囲気一変して雑多、ふと見ると馴染みの亭主も女将も、昨年15歳だかになっていた息子の姿もなし。全く知らぬ者が店を切り盛りするが、見違えるほど雑多で坐るのも厭うほど。あの親しみ深い家族は何処へ、また、水筒の水を切らしへとへとになってこの店に駆け込んだ猛暑、冷たいビール、2000年6月4日に安田記念にて40倍の十番人気の香港馬・?蝦王の優勝をI君と眺めたのもこの店のテレビ中継……とさまざまな思い出あり。西貢にバスで戻りThe Dukeでステラアルトワを二杯。同行の皆さんと別れ、ふと路地の龍記桂林米粉に食す。かつて行列が出来た麺屋も今は潮が退いたか静か。だがこの店の薬材風味の汁で食すコシのある米粉は美味。今はこの路地の入口の林記という串物屋に行列あり繁盛。地元で作る本来の魚蛋が1串3ドル、炒麺が6ドルと廉価でかつ美味の由。思わず魚蛋頬張る。帰宅して晩は大根おろし沢山加えた出汁に韮を煮て豚肉しゃぶしゃぶ。よく喰うねぇ、まったく。
朝日新聞の文化欄に「武智鉄二は終わらない」と劇作家・評論家の武智鉄二の特集記事(かなり扱いデカい)。唐突なり。1988年というとまだ最近のようだが数えれば廿年も昔!に76歳で亡くなったこの劇作家のことなどお若い方は知るまいし、なぜ突然、武智か、と猜う。14日まで三軒茶屋中央劇場にて『黒い雪』だの武智が監督した映画10本の上映あり、と、それの関連記事らしき。記者(米原範彦君)が歌舞伎好きだとしても今どき武智と聞いて(余程の好事家は除いて)どれだけの人が関心もつか。武智歌舞伎を地で知る役者もだんだんと減るが武智歌舞伎で薫陶を授けられたのが扇雀(現・藤十郎だがアタシにとっては鴈治郎どころか、どうしても扇雀)で、その扇雀武智鉄二についてこの記事の中で語っているのを読むと、実は藤十郎にスポット当てた記事なのかしら?とすら思えるほど武智はもう遠い世界。
▼その朝日の読書欄に中島らも夫人の美代子さんの『らも』集英社の紹介あり。読みたいが、もうこれ以上購入する書籍増やすと本当に大変なことになる、と、大変狡いのだが「書評で感動できた本は買わないで読んだつもり」で済ますことにする。機会があれば読めるだろう、と。それくらい短い書評で読ませる筆致の評者も少ないのだが、ふと評者の名前を見れば橋爪紳也教授。なるほど、と関心しつつ書評も書いていたのね、と思ったら大阪市長選に立候補の風聞もありなのだった。

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