富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-08-07

八月七日(火)朝は晴れた傍から大雨。午後になりカンピーな快晴。不安定な天気には変わりなし。今月12日までに台風襲来なければ1946年の気象台の観測史上初めて「一度も台風の来ない1年」になる由。香港といえば5月から9月まで台風は風物詩であったが。昨年度の確定申告に基づき所得税の請求書届く(支払いは年末)。政府財政黒字還元にて還付あり(実際には今年の納税から差し引き)。それなりの金額で税金「はらったつもり」でライカのレンズでも買ってしまおうか。昼前に銅鑼湾のLeighton RdのDanish Bakeryの前を通りがかり十年ぶりかでHot Dog頬張る、というと聞こえがいいが「丹麥餅店の熱狗」と書いてしまうと「Danish Bakeryのホットドッグ」とイマージュにどれだけの隔たりがあろうか。この店のホットドッグ、斜め向いのビルにある某日系進学塾に通う子供らご用達。マクドなど食すより地場のこの汚いパン屋の美味なるホットドッグこそ彼ら食すに値す。ジムで小一時間走る。晩にZ嬢と湾仔の北京水餃皇に食す。芸術中心で映画『安城家の舞踏会』観る。監督は吉村公三郎。1947年の戦後間もない時期に没落華族を舞台に。観るのは三、四度目。香港でも二度目。90分の映画の心地よさ、で何度観ても飽きない。映画としてとても好き。何といっても新藤兼人の脚本がいいのだろう。小津作品と違い躍動的に動く原節子が印象的(それが小津作品より原節子が美しいかどうかは別にして)。自分で思うままに演技しているようにも見える(それが上手いかどうかは別にして)。この『安城家』も一昨日の『大日本人』も香港で夏の恒例となりつつあるSummer IFF(夏の国際映画祭)での上映。『安城家』と『大日本人』に何の脈絡も感じられぬが実は、この映画祭の今回の特集は「松竹映画」なり。それでも山田洋次特集なんてやらずに極端なところが立派。萱野稔人『国家とはなにか』読み始める(一昨年評判になり購入してあったのをすっかり忘れており先日書架で発見)。気鋭の社会哲学者の国家論に関する論文集めたもので内容は平易。大学生の入門書には良い鴨。第1章「国家の概念規定」読んだ限りではウェーバースピノザなどの国家論を引用しつつ「やはり」フーコーで、わかりやすく「国家と暴力の系譜」まとめた体裁。だが30数頁語ってはいるが第2章の冒頭に「国家は暴力の実践に先だっては存在しない。暴力が組織化され、集団的に行使されることのひとつの帰結として国家は存在している」と述べてしまうと、第1章で延々語った(繰り返した)内容がこの2行で要約されてしまうと、それじゃ第1章はいったい何のための饒舌だったの?となってしまうような感じあり。
▼先週のThe Economist誌にカバー写真は、今にも泣きだしそうな(日本人らしい)赤ん坊が写り“LIMITED EDITION Made in Japan”(日本産の限定品と張り紙あり。記事は“How to deal with a shrinking population”と日本の老化と少子化を憂う。定年退職年齢の引揚げ、保険や年金の問題、労働人口の減少に伴う移民受け入れなど検討すべき事項は多いが、欧米各国がこの人口老化と少子化の中で人口減少を抑制できた最も大きな作為は「子育てをしなががら働く親たち」に対する公的支援であり、企業の支援。子育てをすることが社会的にマイナスに作用するような国で(それが東アジアの儒教圏なのだ、ふと思えば)どうして子供が育まれようか。
自民党では石破さんが参院選大敗で安倍三世に対して「国づくりが私の使命だとおっしゃるけれども、総理大臣は王様じゃない。国民の信任のもとにあるのが総理です。「私の使命」だなんて、何か勘違いをしているんじゃありませんか?」と安倍三世に首相「辞めろ」と。閣僚経験者でそう明言するのは石破さんは自分くらいで、としつつ、その物言えぬ自民党の体質こそが「そもそも異常なこと」で「意見を言えないのなら、何のために政治家になったのかわかりません」ときっぱり。大敗の自民党では比例区トップ当選の舛添教授は参院選当日にまだ開票作業中に「続投」表明した安倍三世に「バカにつける薬はない」「決定的に資質にかける」と言いたい放題。だが安倍三世がいかに総理に器ではないか、なんて今更わかった話でもあるまいに。結局は安倍三世を総裁、首相に推せる体質こそが自民党の問題であることを石破さんも舛添教授も考えるべき。ところで参院選の投票日、昼すぎには谷垣派の面々が都内のホテルに陣取り大敗後の対応話し合ったそうだが(福田康夫君擁立の意見もあり)谷垣氏が相変わらず「煮えきらず」地元の京都に引き上げてしまった由。この人らしいとしか言えず。(以上、週刊文春8月9日号読みつつの雑感)
朝日新聞によれば先日の参院選挙での当選者のうち憲法改正に賛成な議員は48%で過半数割り、非改選議員と合わせた新勢力でも改憲派は53%に対して反対26%で改憲派が三分の二に届かず。ちなみに04年の参院選の時は改憲派が71%であった由。
▼昨日、日本共産党が宮本元議長の党葬。朝日新聞立花隆氏は「民主集中制を捨てよ」と提言。名大の後房雄教授は98年の首相指名で不破氏が民主党の菅君に投票したことを挙げ野党共闘への方針転換を提言。衆院小選挙区共産党候補が勝てないのは明白。躍起になって小選挙区で独自候補擁立するが、それが自民党を勝たせる原因と有権者が見れば「共産党は邪魔」「自民党を助けている」と思われるだけ。次の衆議院選挙こそ共産党の最後のチャンス。野党連合に加わり地方区に候補者を立てないだけでも「比例区共産党に」と思う有権者はいるはずだ、と。御意。
プロレスの神様、カール=ゴッチ氏逝去でふと思い出したのだがジャーマン=スープレックス=ホールド、あのプロレスの真骨頂のような完成度の高い技が日本語では「原爆固め」と言われていたが「原爆」という言葉があのように使われることに「被爆者の方々の……」といった<配慮>は当時なかったのか(今の配慮が異常といえば異常だが)。カール=ゴッチがプロレスに取り入れた技で神様自身が独逸系(カール=クラウザーという名)でジャーマン、でスープレックス=ホールドが日本語に馴染まないため米国でアトミック=スープレックス=ホールドと言われていたので「それじゃ原爆固めだ」となった由。ところで「スープレックス」という語、suplexという字のようだが知らぬ語で辞書を引いても出ておらぬような……。

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