富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-07-21

七月廿一日(土)快晴。猛暑至極。Z嬢とマカオに遊ぶ。午前十時フェリーで澳門着。タクシーで宿泊先のPousada de Mong Ha(望廈賓館)に向う。Pousada de Mong Haは珠海とのPortas do Cerco(關閘、関門)に近き澳門市街北にある小高き望廈山(標高60m)の中腹に位置す澳門旅游學院が学生の服務研修用に営む宿泊施設にて澳門では意外と人気でこれまで二度満室で予約出来ず今回初めて投宿。今回宿泊のSuiteは居間と寝室の他に部屋に入るとまず次の間ありの三室。部屋は簡素なれど充分な50平米ほどの広さ。荷物置き猛暑の中、出街。望廈山の麓の観音古廟に賽す。肌を炒る陽射し恐れ日傘に隠れ隠れ紅街市(Edif?cio do Mercado Vermelho)。澳門有数の歴史ある街市にて1936年建造のモダンな煉瓦作りの紅色に塗装された建物ゆゑ「紅街市」と云はれる。何ともいえぬ活気あり浅草紅鯨団ならぬ澳門紅街市。26系統の路線バスで一路、コロアネ島目指す。Taipa過ぎ砂塵舞ふ殺伐とせしコタイ(路?)の埋立地に建造中の数々のリゾートカジノの威容、異様。大陸の民を誘いカジノでの一獲千金の夢に巻き込み身ぐるみ剥いで銭を巻上げるラスベガス資本の賭場、賭場、賭場。かつての海鳥の遊ぶコタイの泥地を彷彿す。コロアネ島の路環にてRestaurante Espa?o Lisboaに昼を食す。ご亭主、宿酔か気分優れぬ表情。浅蜊のソテー、蛸のサラダ、葡萄牙風のビフテキ。……全てZ嬢と半分ずつ。葡萄牙はDouroの白、Planaltoの05年と名前知らずで赤葡萄酒をグラスで一杯。 路環のLord Stow's ベーカリーが営むカフェでエッグタルトとエスプレッソ。25系統のバスで微睡みつつ市街に戻り培生中學の辺りでバス降りて炎天下ホテルに戻る。午睡。午後五時過ぎ市街に漸く日陰も出来ようかという頃に再び出街。タクシーでマカオ芸術博物館。余の敬愛するRobert Doisneau写真展開催中。而も!今月八日の日剰に綴りしマカオ在住のロシア人画家Konstantin Bessmertnyの作品展 Edictus Ridiculum - As Mais Recentes Cria??es de Konstantin Bessmertnyは11日で終了のはずが展示延長の幸い。一つの美術館でRobert Doisneauマカオのワケのわからぬロシア人画家の作品が見られるなんて。巴里に遊ぶ谷譲次の如く心、踊る。マカオ芸術博物館、このところ訪澳の度に堪能。日暮れ。晩の、芸術博物館に隣接のCentro Cultural de Macauでの音楽会開演迄の間に「軽く何か食そう」と区画整然たる埋立地の一角で一瞬、路頭に迷う。がZ嬢が「餃子屋でもあればねぇ」と呟く。マカオといえばアタシらにとって北方餃子であったが、かつて贔屓の「北京水餃」はもうすっかりダメ。でとぼとぼと歩き出すと区画整備された地区に松花江水餃という看板あり晩六時過ぎとまだ早い時間に客が数組入るを見て「まんざらでもなし」とこの食肆に食す。白菜だが「虎の如く凄まじき辛さ」の老虎菜と木耳の酢合えを前菜に澳門麦酒飲む。辛いのはいいがアタシらには鹹すぎ。店員も客もR化せし口音の北方系ばかり。韮菜水餃は美味いのだろうがMSG強烈。個人的にはダメ。嗚呼、今晩も夜中に喉が渇くのか、と憂鬱。冷麺。Centro Cultural de Macauに戻り上海出身のバイオリン奏者、黄蒙拉(Huang Mengla)の演奏会。2002年のパガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝。合奏のピアノはJeremy Youngなる英国の奏者(これがなかなか)。曲はサン=サーンスのヴァイオリン・ソナタ第1番ニ短調ブラームスのピアノとヴァイオリンの為のスケルツォハ短調、中入り後にプロコフィエフの「三つのオレンジへの恋」より行進曲、パガニーニの「わが心は最早、虚ろになりて」による変奏曲、と「24の奇想曲」より(余はどれかわからぬが)一曲、サンサーンスの序奏とロンド・カプリチオーソ・イ短調作品28、で最後がサラサーテカルメン。黄蒙拉というこの若干27歳のバイオリン奏者、超技法。アンコールに「24の奇想曲」より一曲と更に客の拍手喝采に応えプロコフィエフの「三つのオレンジへの恋」より行進曲を一曲。演奏会終わり8系統のバスに乗る。ホテルの方へ真直ぐ向うのかと思えばさにあらず。旧市街を古き良き時代の映画館の佇まい残す永樂戯院から渡船街(Dua Da Barca)を抜ける。この周辺、細い通りに小さな広場いくつかあり金曜日の遅晩に老若男女、街頭に繰り出し路地に遊ぶ態、中上健次の路地の世界の賑わい。香港にも今は見るも稀な光景。ホテル近くでバス降りて望廈の小高き丘をホテルに坂道上る。汗でぐっしょりだが望廈山の頂上には砲台あり「どうせだから」とホテル通りすぎ公園の中を頂に登る。標高60mとはいえマカオでは周囲一望の高台。夜風心地良し。暗闇の砲台には十代の若者ら数組が遊ぶ。眼下に競狗場でドッグレース開催中。客あまりに閑散。半輪の月も見事。ホテルに戻りフェリーの中で読み出した孫文の『三民主義』続き読む。
▼香港で歴史的な豚肉価格高騰。中国よりの供給不足。街市にて生鮮豚肉扱う肉屋の店先に必ず「五豐行」の商標板掲げられる。「五豐行」は香港にて1951年より中国産豚肉輸入業務を独占の中共系企業。中国政府外経貿部より認可受け内地からの食品輸入一手に扱い、且つ中国糧油食品輸出入公司の香港の総代理店。豚肉は100%の独占。現在は上場会社・華潤創業に属す。今回の豚肉価格高騰に合わせたかのように、香港政府が広東省政府系の廣南行と地場会社の豚肉卸業参入認め独占崩れる。豚肉価格は下落する見込みの由。

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