富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-06-07

六月七日(木)日本のある組織の方が世界中の関連団体宛にメーリングリスト作成し一括でメール送信。単なる資料送付だが、この方、何を勘違いしたのか Reply to を本人のアドレスではなく、このメーリングリストのアドレスにしてした(フォーラムなど皆さんで情報共有とかなら有効だが)。メール受信した欧州だかの某組織が「このたびは貴重な資料を送付いただき」とお礼のメール。これがメーリングリストで世界中に発信された……でさぁ大変。これを読んだ欧州各地の組織が同じように「このたびは貴重な資料を」のお礼メール送り始め地球の自転に合わせアメリカ大陸に、そして日付変更線越えてアジアへ。と世界中から「右へ倣え」で数十通のお礼メールが飛び交う。いい迷惑。自分の意思ではなく「お礼した人がいるから」で靡く、このメダカ社会(メダカに失礼か)。主体性と判断力の欠如。これが「進め一億火の玉だ」になってしまふのかしら。晩に茶餐庁でも「脂っこいもの、刺激物」避け、さて何食べようか、と思って粟米豆腐飯は玉蜀黍って消化が悪い?と思い羅漢齊飯。行き当たりばったりの茶餐庁でも美味いねぇ、と感心。
▼北京で昨日開催された中華人民共和国香港特別行政区基本法実施十周年座談会。通常、おざなりの会となるはずが、席上、全人代委員長の呉邦國君が「香港特区の高度な自治権は中央が授権したもの。中国は一つの国家であり、香港特区の高度な自治権は香港固有のものに非ず政府が授与したもの。中央がどれだけの権利を与えるか、で香港がどれだけの権利を有するか、が決まるもので、明確でない事項についても基本法20条の規定通り、中央が決定。いわゆる「余剰権力」(つまり不明確な部分は自治権のある香港が決定する、ということ)は存在せぬ。基本法は授与された権力の範疇での法律なのだ」と指摘。香港返還十周年のこれに合わせてのこの発言に香港では蘋果日報ばかりかSCMP紙まで香港の50年不変の法制制度を脅かすもの、と懸念あり。あたしはこの十年を見て、この全人代委員長の発言は中国政府らしい(それが正しいかどうかは別にして)判断であり、驚くものでもない、と思うのだが。信報は社説で基本法第2条にあるように「全人代が香港特区に基本法に基づき高度の自治権を授与する」のだから、この認識は驚くに値せぬ、と述べつつ、敢えてこの十周年のこの時期の全人代トップの発言が何を企図したものなのか、と。言いたかったのは「余剰権力」の部分で、香港の行政長官と立法議会議員のいずれを選出する選挙の方法について(基本法の附則)、2007年以降の選挙改革をどうするか?についても、香港の民意なのではなく北京中央(正確には全人代)に決定権があるのだ、ということの強調か、と指摘。「香港の良心」「とされる」アンソン陳方安生女史はこの発言に対して香港の正常な法治や司法の独立といった三権分立を犯すもの、と憂慮を表明。確かに。だが残念ながら民法だの商法なら法治も健全だが実質的に政治がらみは司法判断もすでに北京中央の御意のなすまま、なのは事実。
▼台湾前総統李登輝靖国神社参拝。戦士した兄君が靖国に祀られており、その慰霊と。個人的な兄への感情であり、この参拝を歴史的、政治的に考えないでほしい、とご本人のコメント。考えないでほしい、と八旬の老大人の言うことには從おう。
自衛隊イラク派遣に反対する市民運動団体や報道機関などの情報収集……は今さら驚きもせぬが自衛隊の射撃訓練の騒音への苦情電話も「反自衛隊活動」の由。アホである。自衛隊はこの情報収集の目的を「イラク派遣への反対運動から自衛隊員と家族を守るため」としている(朝日社説)。これもアホである。自衛隊イラク派遣に反対でも、べつにイラク派遣された自衛隊員やその家族が批判の対象にされることはなく、あくまで自衛隊イラクに派兵した政府与党に対する批判なのに。自衛隊がこういく感覚なのか、と思うと「やはり怖い」と思う……というとこれも反自衛隊活動家の発言、となり、実質的には中国やシンガポールみたいに
物言えば唇寒し秋の風、国家転覆罪に問はれる
となるのかしら。
▼中環はエジンバラ広場のQueen's Pierは歴代総督や英国王族が船より上陸する香港の記念すべき場所だが埋立で撤収決定し政治的話題に。この流れに続いて、とクラシック評論家の周凡天氏が憂うのが市大会堂(今日の信報の文化面に「救救大會堂音樂廳」掲載)。1956に英国の建築家、Ronald PhillipsとAlan Fitchの二人が倫敦のローヤルアルバートホールを念頭にコンサートホールと劇場を設け音響も当時としてはかなり凝ったもの。建物ぢたいも戦後のモダニズム象徴するが如き様式で価値あり。だがこの建物、老朽化も著しく、ことに04年暮れの火事でコンサートホール被害受け、修繕後は放送中継ブースが閉鎖されたままで、香港電台(RTHK)のチャンネル4でずっと放送続け愛聴者多かったコンサートの生中継が不可能に(現在は録音を翌日などに中継)。コンサートホールのことにステージ上の背後の客席など老朽化しても改修される気配もなく、このままでは建物解体で再開発もあるのではないか、と。これがせめて1930年代の建物なら重厚な造りで歴史的価値も考えられようが、戦後のモダニズム建築の混凝土建築がどこまでその判断に堪えられるか。

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