富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-03-12

三月十二日(月)早晩にジムで一時間の有酸素運動。帰宅してドライマティーニ飲まず。親子丼。焼酎を湯呑に一杯だけ飲む。一巻目の途中迄読んだままだった劇画『ディアスポリス(異邦警察)』二巻まで読む。江古田(日芸)の出身で最も学究肌、理論家であろう飯沢耕太郎(写真評論)の『写真美術館へようこそ』読む。
▼英エコノミスト誌の今週号の特集は“China's next revolution”と題して中国の地産権整備を取り上げる。The legislature has been legislating quite prolifically. But the passage of laws is not the rule of law.と手厳しいところは手厳しく、この地産権がけして公民の土地所有権や売買権を守るものではなく、あくまで「開発」なので居住地や田畑など強制的に奪われる公民にせめてもの償い程度、でも「ないよりはマシ」を説く。日本の新聞の社説もこれくらいの内容があれば読むに値するのだがプロ野球選手の大リーグでの活躍に期待、だの西武球団のアマチュア選手への贈賄など非難してもどうしようもあるまいに。ちなみに香港では、そのエコノミスト誌の巻頭論説であるLeadersの記事は月曜日の蘋果日報に中文で転載され、信報でも今日、すでに崔少明氏がこれについて詳しい論説を書いている。それくらいの響音がないと世界の論調にはついてゆけない、と思う。ところで中国の土地問題といえば印象的な報道写真がSCMP紙にあり。ちょっと拝借。むかし子どもの頃に「小さいおうち」という絵本あったが……。
▼七日の信報で唯靈氏が「罪魁禍首」という題で香港の食べ物浪費、食べ残しについて書いている。今の飽食に比べ半世紀ほど前は「雑水」「?水」と言われる、残飯のリサイクルあり。食肆をまわり残飯を拾わせてもらうかわりに毎月某かのカネを払うのが厨房の料理人らの小遣いとなり、雑水はまだ人の喰える残飯で、?水は家畜の餌。中環の九如坊、上環の水坑口あたりには雑水を買う連中の推し車のようなもの並ぶ。当時、飲食業の店主らの話で香港島は黄竹坑周辺で飼われる豚の乳猪がもっとも上質、なのは中環の名だたる料理屋の?水を餌に育った豚なので栄養がとくにいい、と。それに比べ食物の浪費は甚だしく、豚もウイルスだの何だの、で間違っても残飯など非衛生的、と処分されるばかり。廿数年前に黒竜江省の大興安嶺山脈の山村で便所には糸車と同じ構造で荒縄の「尻拭き」あり、汚れた縄は豚に舐めさせて天火で干して再利用、便所に入れば眼下に豚が歩くを見て、驚いて文字通り「尻込み」を思い出す。
▼香港最後の総督クリス=パッテン君、EUの欧州委員で対外関係担当の要職を経て牛津大学(Oxford)校監(実質上の総長)となりしが今度はBBC会長に推挙ありとの報道あり(英国デイリーメール紙)。英国どころか世界のBBC会長職は保守党、労働党が虎視眈々と狙うポストにてパッテン君が保守党の元党首なら(92年に香港総督になる迄)労働党からは現ブレア政権でのTessa Jowell文化大臣を推す声もあり。このBBCの会長職、年俸は要職わずか14万英磅(HK$221万)と要職にしては可憐だが、これは英国の伝統で公共機関要職は任に当たることが名誉で禄を貪るものでないゆゑ。民間企業のCEOなどわずか数年の業績で巨額の報酬得ることが米国など目立っているが本来、Companyつまり「ともにパンを喰らう集団」という意義では企業活動も社会奉仕の一環であり、日本の大企業も「他に比べれば」雇われ社長だの薄給であるのは澁澤栄一の昔から英国のよき営利活動の伝統か。
仏蘭西志らく大統領大方の予想通り続投せぬと発表。余生はぜひ東都にお住まい遊ばされ新宿は四谷荒木町か女子医大に近い牛込柳町あたりのしもた屋で、表札には「志らく家」とでも掲げ、好きな相撲見物に今日は芝居、と羽織姿でイキなところ見せのご隠居暮らし、は如何か。当然、横綱審議委員会の委員長にも推挙。

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